「トラバース高谷川球場」竣工式(屋内練習場で、手前は農園のカボチャ)
当欄既報の測量調査、地盤改良会社のトラバース(本社:千葉県市川市、佐藤克彦社長)は7月3日、社会貢献の一環として自社設計・施工した少年野球グラウンド「トラバース高谷川球場」の竣工式を行った。当日は佐藤社長をはじめ、グラウンド建設とともに設立した「野球アカデミー」のコーチを務める同社副社長・G.G.佐藤氏、同球場の土地所有者、県議会議員、市議会議員など多数の関係者が完成を祝った。当日行われる予定だった野球アカデミーの開校式・野球教室は天候不順のため延期された。
竣工式のあと、佐藤社長は建設に至った経緯について次のように語った。
「当社は会社設立(昭和51年4月)から45年が経過するが、会社の利益は社員と分かち合い、関係者や地域などにも還元しないといけないという三位一体経営を父から教わった。球場を造ろうと思ったのは2年半前だった。江戸川に掛かっている妙典橋(千葉県道179号船橋行徳線)の西岸はきれいに整備され散歩する人たちも多いのに、反対側は青々としたまるで草原のような光景が広がっていた。この土地に球場を造って、青少年野球に貢献できないかと考えた。プロを引退した息子を含め元プロのセカンドキャリア支援に取り組み、社員として採用してきた結果、多くの野球経験者が集まるようになってきた。この人材を活かせば地元からプロを誕生させることができるのではないかと」
「グランド整備に当たっては、6種の石や砂などを埋めたが、水はけが悪かったり球が思ったように弾まなかったりしたので何度も入れ替えた」と悪戦苦闘したことも明かし、「ナイターも可能にしたので、アカデミーにたくさん参加していただきたい」と話した。
昭和14年生まれの地元の大地主という土地所有者(82歳)は、「以前は毎年5月、7月、9月に敷地内の雑草刈りをやっていたが、俺も歳をとった。(土地を貸してくれと)話が持ち込まれたときはいつ相続が発生するかわからないので躊躇したが、俺も高校のとき、ちょこっとだが野球をやったこともあり、トラバースさんのやっていることにも共感したので受けることにした。立派な球場ができてとても嬉しい。従前? ここら一帯はみんな蓮の田んぼだった。賃料? それは勘弁して。たくさんいただいている」と笑顔を見せた。
完成した球場は、東西線妙典駅と原木中山駅の中間くらいの市川市高谷に位置し、千葉県道179号船橋行徳線妙典橋のたもと。敷地面積は約1400坪。グラウンドは左翼・中堅は60m、右翼は50m。芝は天然芝(内野除く)。屋根・夜間照明付きの練習場には佐藤氏が25年前に考案した特許取得日本第一号のキャタピラーで簡単に運べるピッチングマシンが3台装備。
敷地内には約100坪の農園も設置。パクチー、カボチャ、カキ、チンゲンサイ、コマツナ、ユズ、サツマイモ、ネギ、キュウリ、ナス、タカノツメ、ピーマン、モロヘイヤなどを栽培。収穫して関係者などにプレゼントするのだそうだ。水遣り用の井戸を2基掘削している。
アカデミーは、小学生を対象に無料で定期的に開催予定。コーチにはG.G.佐藤氏をはじめ同社のNPB、独立リーグ、社会人野球出身者が務める。外部コーチとして元ヤクルト・西武ライオンズの米野智人氏を招へいする。
天然芝のグラウンド(外野から写す)
佐藤社長
関係者で記念撮影
佐藤鯱用が考案した日本で初の特許を取得したバッティングマシン
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「牧田さん、これ見てよ。私が息子のために25年前に日本で初めて特許を取得したピッチングマシンだ。最初、ボールは奥さんが入れる役割を果たしていたが、嫌がったので自動的に補給できるように改良した。デッドボール? 全然ない。コントロールはいい。130キロは出る」
佐藤社長は自慢げにこう話した。記者は事前にピッチングマシンがあるのを確認していたが、〝大きな仕事をしているのに中古を買うなんて何と中途半端な〟と思った。そんな歴史ものだとは全然知らなかった。
G.G.佐藤氏は「そう。わたしはこれでプロになった。これを使って市川からプロを育てたい」と語った。
ついでに聞いた。「佐藤さん、もうすぐオリンピック。北京の悪夢を再現する外野手はいませんか」「大丈夫。わたしみたいなへぼな選手は一人もいない。みんな素晴らしい選手ばかり」(日本代表の外野手は柳田・吉田・栗原・近藤・鈴木誠也の各氏)
土地所有者との交渉役を務めた創価高校-創価大野球部出身の越口誠氏は、「最初に土地を貸してくださいとお願いに行ったときは、ほとんど相手にされなかった。その後、市会、県会議員さんなどの協力も得て、当社のことも分かっていただき建設が実現した。元プロや独立リーグ、社会人野球経験者の入社も増えている。今回の球場建設も含めて野球を通じて業界を明るくしたい」と語った。越口氏は高校時代、通算49本の本塁打記録を残している。
カボチャ
農園
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トラバースは、RBA野球大会第30回、31回大会に参加(昨年の32回、今年の33回大会はコロナの影響で中止)。通算成績は8勝3敗、勝率.727の高率を残しているが、「元プロの出場は1人」という大会規定の壁と寄る年波には勝てないのかベスト8どまり。
記事はRBA野球大会ホームページhttps://www.rbayakyu.jp/の検索欄で「トラバース」を入力していただければ100本近くヒットするはずだ。
トラバース 自社設計施工の少年野球グラウンド整備 地域貢献の一環として無償提供(2020/12/23)
G.G.佐藤さんの実父 トラバース社長・佐藤克彦氏がポラス分譲地で絵画展(2019/2/6)