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2021/09/15(水) 15:25

分譲戸建て御三家とは戦わない 都市部に人的資源移す 大和ハウス

投稿者:  牧田司

 大和ハウス工業は9月15日、2021年基準地価に関する記者レクチャー会を開催。マンション事業については同社マンション事業本部事業統括部部長・角田卓也氏、分譲戸建てについては住宅事業本部事業統括部分譲住宅グループ部長・本間生志氏、物流施設事業については建築事業本部営業統括部Dプロジェクト推進室室長・井上一樹氏がそれぞれレクチャーした。

 角田氏は、首都圏市場について都心部も郊外部も引き続き需要は旺盛で、価格水準は高値で推移しており、用地仕入れ価格も上昇しており、入札案件では相場の1.2倍の価格で落札されるケースも出始めていると語った。

 近畿圏もほぼ同様の傾向を示しており、用地取得状況は近畿圏でも賃貸事業者などとの競争が激化し価格が上昇。地方圏でも首都圏や近畿圏のデベロッパーの参入が相次ぎ、用地取得競争は激化していると話した。

 本間氏は、首都圏の1億円超の3階建てを中心に販売は順調としながら、いわゆるパワービルダーの市場占有率が高い北関東などでは苦戦が続いていると語った。

 井上氏は、同社の売上高4兆1,267億円(2021年3月期)のうちセグメント別売上高では賃貸住宅と肩を並べる23%に達していることから、今後も海外を含め積極的に展開していくと語った。

◇       ◆     ◇

 同社のレクチャー会(勉強会)については記事にしてきたが、本間氏は北関東が地盤のケイアイスター不動産や、都心の3階建てを積極展開しているオープンハウス・ディベロップメントなどの具体的な社名を挙げ市場動向について語り、質疑応答の時間も約30分取るなど、他のハウスメーカーやデベロッパーのそれらとは全く異なる。本音で語ってくれるから参加のし甲斐がある。お三方をやり込める記者が現れないかと期待したのが、残念ながらそのような質問は飛ばなかった。記者のような行儀の悪い記者が少ないのは残念だ。

 記者は、角田氏に「昨今のマンション価格上昇から、専有圧縮、天井高の低下などの基本性能の低下、設備仕様レベルダウンを差し引くと、実質的な単価上昇は年率にして10%以上ではないか」「『王子神谷』は坪単価260万なら飛ぶように売れると思いますが、そこまで安くならない、アッパー280~290万円でいかがでしょうか」「大激戦の『調布』の坪350万円はコンパクトですので納得します」などと質問した。

 これに対し、角田氏は用地費や建築費の上昇が単価を引き上げている主な要因とし、基本性能・設備仕様レベルダウンとの因果関係については明言を避けた。また、「王子神谷」の価格は未定としながら「坪250~300万円」を匂わせた。「調布」については、「単価は安くはないが、女性を中心に反響は多い」と語った。(さっき届いた物件販売のプレス・リリースには、ダイニングテーブル、カフェカウンター、リモート用デスクにもなる多目的キッチンカウンター「Nimonal(ニモナル)」を採用しているとある。これは面白い)

 本間氏には、記者は「そもそも建築単価が倍くらい違う分譲戸建て御三家とは争わないで、大手デベロッパーのように都市型に絞り、経営資源もそこに集中したほうがいいと思いますが、いかがでしょうか」とストレートを投げ込んだら、「仰る通り。当社も含め大手ハウスメーカーは互角に戦えない。人的資源を都市部に移すよう着手している」と直球で返してくれた。

 記者は前回のレクチャー会の記事で「栃木県は飯田グループ・森和彦会長(4月1日付で名誉会長に就任予定)の出身県で、群馬県はケイアイスター不動産の本拠地だし、中古住宅買取再販最大手のカチタスも本社は群馬県桐生市だ。まるで価格帯が異なる。勝てるわけがない。戦っても現場が疲弊するだけだし、ブランド力の低下を招きかねない。あえて火中の栗を拾いに行くような愚を同社が犯すはずはない」と書いた。

 都市型戸建てでは、オープンハウスも伸びてはいるが、一方で三井不動産レジデンシャルと野村不動産の二社は年間数百戸をコンスタントに供給しており、〝二強時代〟が続いている。ここに割り込むのは容易ではないだろうが、外野から眺めるわれわれ記者の立場からすれば、二強に挑戦状を叩きつけられない他のデベロッパー、ハウスメーカーは情けないと思う。

大和ハウス 分譲住宅・物流市況に関する「記者レクチャー会」 質疑応答に1時間15分(2021/3/18)

またまた10年前の感動蘇る 大和ハウス 分譲・物流に関する勉強会 戸建てV字回復(2020/9/25)

 

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