大和ハウス工業は3月18日、3月下旬発表予定の地価公示を前に、記事化の参考になるメディア向け「記者レクチャー会」をオンラインで開催した。
同社の最近の市況について、分譲マンションはマンション事業本部事業統括部部長・角田卓也氏、分譲住宅は住宅事業本部事業統括部 分譲住宅グループ部長・本間生志氏、物流施設の稼働状況は建築事業本部営業統括部Dプロジェクト推進室室長・井上一樹氏がそれぞれ説明した。
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数えてはいなかったが、メディア参加者は40名近くにのぼったのではないか。質問が多かったためか、質疑応答は予定の1時間を15分延長した。3氏は嫌な顔など見せず、一つひとつ丁寧に質問に答えた。この姿勢は他社も参考になるはずだ。
首都圏の販売状況について角田氏は、コロナ禍で価値観や生活スタイルの変化による実需層の郊外への動きが見られ、他方では、都市部での将来資産性が期待できる物件に対し、DINKSで高収入な実需層の購入や、富裕層による株運用利益を現物資産へ転化する動向が見受けられると説明した。
一方で、地価は引き続き高値圏にあり、東京23区、横浜、川崎の用地取得価格は更に上昇傾向にあると語った。また、投資用の需要は、金融緩和の影響もあり、コロナ禍でも賃貸レジデンスの売買を中心に好調としながらも、賃貸レジデンスの大量供給により、賃料の下落が仙台、東京都城東エリア、京都など一部で始まっているとした。
小生は、同社のマンションをこの1年間で「築地」「塚田」「高輪」「平和台」、分譲戸建てセキュレアは「文京目白台」「武蔵府中なごみ」を見学した(記事参照)。
その後の各物件の進捗について質問した。角田氏は、「『塚田』はあと半年で完売する。『築地』も売れ行きが加速している。坪単価650万円の『高輪』は竣工が2023年だが順調に推移しており、ZEHの『平和台』は完売。坪単価400万円の『文京千石』(58戸)が分譲初月で完売した」と語った。
本間氏は分譲戸建てなどについてレクチャーし、首都圏を中心にV字回復している一方で、群馬、栃木などの北関東はパワービルダーのローコスト住宅に押され気味で伸び悩んでいることを明らかにした。
メディアからは、苦戦する北関東の状況や今後の展開などに質問が集中した。本間氏は、「当社は建物価格で2,500万円くらいだが、飯田グループなどのビルダーとの価格差は500~1,000万円の差があり、同じ土俵で戦えない。木造の比率を上げるとか200~300万円くらいコストを下げる企画を考えてはいるが、〝掃き溜め〟戦略は取らない。全体として収益力をアップさせるため、建築条件付比率を現行の5割から7割くらいに引き上げたい」などと踏み込んだ発言を行った。
小生も、本間氏の考えに賛成だ。栃木県は飯田グループ・森和彦会長(4月1日付で名誉会長に就任予定)の出身県で、群馬県はケイアイスター不動産の本拠地だし、中古住宅買取再販最大手のカチタスも本社は群馬県桐生市だ。まるで価格帯が異なる。勝てるわけがない。戦っても現場が疲弊するだけだし、ブランド力の低下を招きかねない。あえて火中の栗を拾いに行くような愚を同社が犯すはずはない。
同社の分譲戸建てで注目しているのは6月末に分譲する「セキュレア武蔵府中ひかりテラス」27区画だ。「家事シェアタウン」がテーマで、全戸建売り方式となる。現地来場が2,791組、オンライン見学(ライブ配信)視聴が1,580組というから驚きだ。バス便だが、府中駅、国分寺駅へのアクセスがいい。外構などの造り込みに力を入れているはずだ。
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