積水ハウスが9月14日開催した「男性育休フォーラム2021」の「見逃し配信」を視聴した。受信・音声環境がとてもよく、ほとんどすべての話の内容を理解することができた。同社代表取締役社長執行役員兼 CEO・仲井嘉浩氏は「フォーラムを多様な取り組みを行うトリガーの第一歩にしていただきたい」とあいさつした。
フォーラムでは、「男性育休白書2021」が発表されたほか、ジャーナリストで東工大准教授・治部れんげ氏がモデレーターとなり、日本ユニシス 代表取締役社長CEO・CHO 平岡昭良氏、サカタ製作所代表取締役社長・坂田匠氏、NPO法人フローレンス代表室長・前田晃平氏、積水ハウス代表取締役社長執行役員兼 CEO・仲井嘉浩氏によるパネルディスカッションが行われた。
また、厚生労働省 雇用環境・均等局 職業生活両立課 課長補佐の加藤明子氏が改正育休法の概要を説明した。
積水ハウスは2018年から「男性社員1か月以上の育児休業(育休)完全取得」を推進し、2021年8月末時点で、取得期限(子が3歳の誕生日の前日まで)を迎えた男性社員1,052名全員が1か月以上の育休を取得。2019年2月以降、取得率100%を継続している。
今回発表された「男性育休白書2021」特別編は、男性の育休取得の「壁」を浮き彫りにする調査結果を報告している。今年6月に育児・介護休業法の改正が行われたが、男性の育休取得率は12.7%(2020年)にとどまっているが、その背景として、マネジメント層の75.0%が「取得して家族を大切にしてほしい」と思いつつ、ほぼ同数の73.8%が「人手不足で会社の業務に支障が出る」と心配していると指摘している。
以下、パネルディスカッションで記者が印象に残った部分を紹介する。
積水ハウス トップダウン⇔ボトムアップ 機能する社風・文化
積水ハウスが育休制度を実施したのは、仲井社長がスウェーデンの郊外スマートシティを見学したとき、ベビーカーを引いていたのは男性ばかりの光景に感銘を受けたのがきっかけとされているが、仲井氏はその経緯について「帰国してすぐダイバーシティ推進部長と人事担当部長に相談し、うちも3カ月の育休制度を実施できないかと話したところ、1週間後にレポートが出来上がりまして、社員約2万人の約10%が対象となり『社長、3カ月にすると決算に影響します』と言われまして、『じゃどうしたらできる』と聞いたら『1か月ならできます』と言ってくれたので進めた」と語った。
記者は、社長の指示とはいえ、育休制度を導入したらどうなるかをわずか1週間の間にレポートに仕上げるそのスピードに驚いたのだが、もともとそのような制度をすんなりと受け入れる風土・文化が同社にあるからだとも思う。
この種の取り組みは経営者のトップダウンでないとうまくいかないとはよく聞くが、世の中がCS(顧客満足)一色だったころでも、同社の営業マンは「CSも大事だが、ES(従業員満足度)を満たしていることが前提」などと話したのを思い出す。ボトムアップも機能していたということだ。何の衒いもなく「『わが家』を世界一幸せな場所にする」をグローバルビジョンに掲げられるのもそうした風土・文化があるからだろう。
日本ユニシス 長期育休は仕事の多様性にも効果
育休取得率26.7%、平均取得日数99日という日本ユニシス吉岡社長も興味深い話をした。
「当社の生業として常にリノベーションを求めており、リノベーションには多様性が大切なのですが、性別とか国籍を超えて価値観、役割の違いを受け入れてインクルージョンしていくことがとても大事です。ところが、自分自身に多様性がないと(他人との)違いを認めたりリスペクトしたりできないんではないかと。そこで、イントラパーソナル・ダイバーシティと呼ぶんですが、自分自身に多様性をつけてもらおうと、社員には複数の役割を持ってほしいといっているんです。育休を経験すると全く違った役割を持つことになることが分かりました。しめしめと思いましたね。
長い期間(育休を)取り、家事・育児や地域とのつながりを経験することで多様性を高め、違う価値観をリスペクトできる本当の多様性を見つけることができる。当社の育休が平均99日と長いのはそのためです」
同社は来年4月1日付で社名を「BIPROGY(ビプロジー)」に変更する。変更の由来は「多様な人々とともに未来への新たな道すじを照らし出すという想いを込め、光が屈折・反射した時に見える7色(Blue、Indigo、Purple、Red、Orange、Green、Yellow)の頭文字」を取ったそうだ。「多様性」を意識した社名なのだろう。何と面白い会社ではないか。
サカタ製作所 育休100%にしたら出生率6倍
オンラインで参加したサカタ製作所・坂田社長もとても面白い話をした。
同社は2015年、働き方改革の一環として、残業ゼロを目指すため属人化解消、業務の棚卸などを行ったが、男性の育休のハードルは全くなかったという。「育休を希望する社員の話を聞いた2017年の段階で、わたしは男性の育休を知らなかった」と坂田氏は話し、「育休を取った後の男性社員は雰囲気が変わる。びっくりします。怪しげな新興宗教に染まったのではないかと疑いたくなるほど凄く変化する。あとで理由が分かりました。1週間程度の育休取得者は〝おれはやれる〟という達成感があるんですね。育児、家事を手伝っただけで周りにも褒められる。
ちょっと待てくれよ、女性はどうかと考えると、達成感などないですよ。うまくやらなければ批判されることはあっても褒められることはない。ところが、男性も長い間育休を取ると、褒めてなどもらえないですし、達成感もない。その代わり、女性に対する理解が深まる。そしてものすごくいいパパ、いい亭主の顔になる。仕事に向き合う姿勢も変わってくるんですね。そして〝また子ども作ります〟になるんです。実は、当社の出生率は残業ゼロを実現してから3倍に、育休取得100%にしてからは6倍に増加し、いまちょっとしたベビーブームが起きています。当社だけでこれほどのことができる。少子高齢化などの問題解決のヒントはここにあると思います」と報告した。
坂田氏は極めて本質的なことを話した。育休はもちろん子育て・家事労働は男性・女性の区別なくともに負担し、関わることが当たり前となり、この種の「男性育休フォーラム」などが話題にも取材対象にもならない時代にしないといけない。
三重県 職員 育休取得率日本一から「男性の家事・育児力」最下位へ
「男性育休2021白書」には「男性の家事・育児力」都道府県別ランキングが紹介されている。トップは沖縄県で、2位は鳥取県、3位は奈良県だ。
わがふるさと三重県はあろうことか最下位の47位だ。総合スコアは31点で、46位の山口県の43点より10点以上も差を付けられ、最高点の沖縄県の216点を100点満点とすれば三重県は15点、完全に落第点だ。
1年前の前回、三重県の男性職員の育休取得率は日本一として発表されたばかりだ。「男・性育」と読めばわからないでもないが、1年にして日本一から日本最悪に突き落とされるとは…。あれは恥部を覆い隠すイチジクの葉っぱだったのか。鈴木英敬知事は衆院選に出馬するため辞職した。
それにしても「イクメン白書2020」では三重県は18位だったのに、この暴落、凋落の理由が知りたい。
他にも最下位があるのではないかと心配になりネットを調べた。凄いデータがあるものだ。都道府県ランキングで三重県が最下位は焼鳥消費量、男性・女性BMIなどで、そのほか低いものでは姉さん女房比率(44位)、横断歩道での一時停止率(44位)、炭酸飲料消費量(45位)、飲酒費用(46位)などたくさんある。
確かに言われてみると、焼鳥屋なるものは小さいころ見たこともない。BMIが低いのは痩せ型が多いということのようで、これは肥満よりいいことでベスト1ではないか。名前は忘れたが、著名な作家は三重県の女性がナンバーワン(良妻賢母という意味だったような気がする)と絶賛していた。記者もそう思う(良妻賢母という意味ではなく、みんなよく働き、総じて美しいという意味)。炭酸飲料や酒類を飲まないのは本当だろうか。
1位はJUSCO店舗数、イオン店舗数、2016年参議院比例代表:民進党得票率くらいしかない。JUSCO、イオンが1位なのは、ともに発祥は三重県四日市市の旧岡田屋だから当然で、民進党の1位は、かつて同党に所属していた政治家の岡田克也氏が岡田家出身だからだ。