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2021/10/06(水) 18:42

「ローカル」の大事さ浮き彫り SUUMO「住み続けたい街ランキング」

投稿者:  牧田司

 リクルートの住まい領域の調査研究機関のSUUMO リサーチセンターは10月5日、「2021 住み続けたい街(自治体/駅)ランキング」のオンライン記者発表会を行い、60ページにわたるレポートを公表した。

 「住み続けたい街(自治体/駅)ランキング」は、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、茨城県の夜間人口上位800駅、もしくは乗降客数上位800駅のいずれかに該当する駅と2019年以降に新しく開業した駅の合計1,169駅を対象とし、回答のあった306,948人のデータをレポートにまとめている。

 「今のお住まいの街に住み続けたいですか? 」という設問に「全くそう思わない」を0点、「とてもそう思う」を100点として5段階で評価、自治体や駅ごとに平均評価点と偏差値を算出。回答者のうち42,947人に街の魅力を35項目で聴取しレポートに反映させているのも特徴だ。

 「住み続けたい自治体ランキング」は、武蔵野市が1位で、2位は中央区、3位が文京区。以下4位・目黒区、5位・逗子市、6位・港区、7位・横浜市西区、8位・渋谷区、9位・葉山町、10位・浦安市。

 このほか、鎌倉市、藤沢市、茅ヶ崎市、大磯町などの湘南エリアや、横浜市都筑区、印西市、稲城市、多摩市などのニュータウンや東海村、横瀬町(埼玉県)などの町・村も50位以内にランクインしている。

 住み続けたい駅ランキングでは、1位・東銀座、9位・馬喰町をはじめ東日本橋、人形町、三越前、水天宮前など中央区の駅が上位にランクインし、鵠沼・江ノ島エリアからは2位・石上、3位・鵠沼、6位・片瀬江ノ島、7位・鵠沼海岸、8位・湘南海岸公園の5駅がトップ10入りした。

 調査の結果、①都心ローカル型=都心利便×ローカルな関係性②郊外中核型 =ワンストップ利便+街への関与③郊外ニュータウン型=緑・公園・安心の評価④郊外自然型=自然豊か×ローカルな関係性⑤遠郊外特異型=ここにしかない何か×可能性など、住み続けたい街の型が見えてきたとしている。

◇       ◆     ◇

 オンライン記者発表会の取材を申し込んだ段階では、これまでのランキング調査と五十歩百歩だろうと思い、答えは返ってこないのを承知のうえで、皮肉を込めて次のような質問をした。

 「この種のランキングは、御社の『住みたい街ランキング』をはじめ、メジャーセブン『住んでみたい街』、アルヒ『本当に住みやすい街大賞』、東洋経済『住みよさランキング』、大東建託『街の住みここち&住みたい街ランキング』、長谷工アーベスト『住みたい街(駅)ランキング』などたくさんあり、正直に言って食傷気味です。(略)
 あの商・住混在の複合日影だらけの雑多な『川口』が『本当に住みやすい』街の1位となり、埼玉県でもっとも高齢化率の高い鳩山町が『幸福度』ナンバーワンです。(略)
 どこがどのような調査を行おうと勝手でしょうが、根拠が希薄で、商売に結び付けたいという魂胆も見え隠れします。『住み続けたい街』も同じような気がしますが、いかがでしょうか。どのような人がモニターになっているのかも気になります」

 これに対し、同社SUUMO リサーチセンター所長・池本洋一氏はモニターについて「30万人の回答をスクリーニングなどしていないし、恣意的にデータに手など加えていない」と語った。

 レポートは、中央区や湘南の各駅が上位を占めるなど、これまでの調査のバイアスがかなりかかっているような気もしたが、中身は興味深いものだった。4万人を超える回答者から35項目について追加質問しているのがいいし、何よりも得心したのは、上位にランクされた自治体や街(駅)は「ローカル」がキーワードになっていることを導き出したことだ。街や駅特有の景観、自然条件、文化、祭りなどを通じて居住者の永住意欲を向上させることが大事であることをレポートは報告している。

 永住志向については、各自治体は2~3年おきに住民意識調査などで公表しているが、なぜ永住を希望しているか、どうして永住を希望しないのかを聞いていないものもあるし、数値的に処理されるので、どのような人が永住を希望しているか分からないのも難点だ。

 今回のレポートはそれを明らかにしている。個人情報の管理、公平性が担保されれば、すべての自治体は同社に調査を委託してもいいのではないか。そうなれば、住民は各自治体を比較検討することが容易になる。大幅な行政コストの削減も図れるし、自治体間の競争を促し、街の魅力度を向上させる取り組みを劇的に変えるかもしれない。

◇       ◆     ◇

 いい機会だ。これまで何度も書いてきたことだが、アルヒの「本当に住みやすい街大賞」についてまた書く。

 同社は、「住環境、交通の利便性、教育・文化環境、コストパフォーマンス、発展性の5つの基準を設定し、アルヒの膨大なデータをもとに住宅や不動産の専門家が参画する選定委員会による公平な審査のもと『本当に住みやすい街』を選定している」としている。

 記者はアヒルと審査委員の方が「当社と選考委員が選んだ住みやすい街」とでもしたら異存は全くない。誰がどこを推奨しようと勝手だからだ。

 問題なのは、膨大なデータとは何かを示さず、住民が必ずしも「住みやすい街」と考えているわけではなく、わずか2人の審査委員の判断で選出していることだ。客観的なデータも大事だが、決めるのは住民だ。住民の意向を無視して、お笑い芸人を起用し、面白おかしく発表するのはいかがなものか。ランキング上位に街が突如現れ、また忽然として消え、デベロッパーが分譲中や予定しているところが目立つのも気になる。恣意的なデータの匂いが芬々とするではないか。

 2020年、2021年の2年連続でトップとなった川口市が典型的な例だ。市の令和3年市民意識調査結果からは「住みやすい街」であることは全く読み取れない。

 例えば「定住志向」。他の自治体の設問は「ずっと住み続けたい」「できれば住み続けたい」「できれば市外へ転居したい」など選択肢の幅を広げているが、川口市は「住み続けたい」と「住み続けたくない」の設問があるのみだ。その結果、「住み続けたい」は85.0%と高い数値を示している。多摩市は選択肢を5つくらい用意している結果、定住志向は78%となっている。設問によって数値が異なってくることを示すいい例だ。

 また、他の自治体は住み続けたい、あるいは転出したい理由をそれぞれ聞いているところが多いのに対し、川口市は「市の良いところ・好きなところ」「良くないところ・嫌いなところ」と並列的に並べているのみだ。核心をはぐらかす質問だ。

 結果は、「市の良いところ・好きなところ」は都心へのアクセスのよさ、買い物の利便性が圧倒的多数で、「良くないところ・嫌いなところ」では「治安が悪い」(25.7%)「街並みがきたない」(12.0%)「公園などの憩いの場が乏しい」(13.0%)「医療サービスが不十分である」(13.1%)「自然環境が悪い」(6.0%)「子育ての環境が整っていない」(4.6%)など住環境に対する不満が多く寄せられている。

 住環境がよくないのは数字で裏付けられている。市の緑被率は埼玉県でワースト3の0.15だし、一人当たり公園面積も県平均の7.2㎡を大幅に下回る3.22㎡だ(多摩市は11.3㎡)。

 また、住環境を決定づける用途地域では、住居専用地域は16%しかなく、建ぺい率、容積率、日影規制が緩い商業系や工業系は全用途の3割に達している。特異なのは、駅周辺の商業系エリアを外れるとすく〝なんでも可〟の準工エリアになることだ。これはかつてキューポラの街だったことの名残だが、この特異性こそが高層マンションの林立を招き、マンション同士の〝お見合い〟や複合日影を招く結果になっている。都市計画など何もない。

 川口市の特異性はほかにもある。「ローカル」の視点から見ると、市内には全国で3か所しかないオートレース場があり、隣の戸田市には競艇場、浦和には競馬場、大宮には競輪場がある。ギャンブル場が全て揃っている。こんな街は全国どこにもない。ギャンブル好きにはたまらない街ではある。

 記者は、リクルートの「住み続けたい街(自治体/駅)ランキング」で川口と記者の好きな街「仙川」はそれぞれ何位か問い合わせてみた。公表しないということだが、上位ではないようだ。アヒルと審査委員の方は仰天するはずだ。とくに審査委員の方には自ら品性・品格を貶めるこの種のイベントには関わらない方がいいと老婆心ながら申し上げる。

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