「ライオンズミレス蔵前」
大京が一昨日の10月21日(木)第1期40戸の分譲を開始し、広い住戸は抽選になるほどの好調なスタートを切ったコンパクトマンション「ライオンズミレス蔵前」を見学した。坪単価450万円は高いか安いか、これは顧客が判断することだが、約356㎡(108.04坪)のマンションギャラリーには本物の立派な観葉植物を配し、「蔵前」の魅力を余すことなく伝え、商品企画では細部にこだわった外観デザインが印象的だ。
物件は、都営大江戸線蔵前駅から徒歩2分、都営浅草線蔵前駅から徒歩4分。東京メトロ銀座線浅草駅下車から徒歩8分、台東区駒形1丁目の商業地域に位置する15階建て97戸(非分譲住戸10戸含む)。ひ竣工予定は2023年3月10日。設計は現代綜合設計。施工は大京穴吹建設。10月21日(木)から第1期40戸の分譲を開始した。
現地は、表通りから1歩入った商業地域で四方道路に接道。敷地南側と東側は建物と同レベルの建物が建っている。建物デザイン監修はIKAWAYA建築設計代表取締役・井川充司氏。コンセプトは「TAYLOR Made TOKTO」。角を丸め、なめらかな曲面で包み込むような外観デザインとし、階によって窓の形や位置を変え、さらに基壇部や共用部分には松灰という釉薬を用いて焼き上げたオリジナルの陶板を採用。主な基本性能・設備仕様は、直床、リビング天井高2400ミリ、食洗機など。
同社本店事業推進部事業推進一課課長・金井貴幸氏は、「ギャラリーにはエレベータを降りたらすぐ本物の観葉植物が目に入り、コリドーには〝ここに住めばこんな生活ができる〟ことをビジュアルに訴えられるよう地元の街並みやショップ、アート作品などを展示しました。商品企画では、〝売り〟の一つでもある隅田川花火大会を〝砂かぶり〟席で楽しめるように屋上にはテラスを設置しました。資料請求は1,000件近くに達しています」と語っている。
ギャラリーに据えられている本物の観葉植物
北側の外観(左)と南側の外観模型(窓がアトランダムに配されているのが分かる)
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同社は先月9月30日、メディア向け見学会を行っている。記者は各紙が報じた記事でこの物件の存在を知った。各紙は価格について次のように報じた。
「価格は未定だが、おおむね3300万円台から1億2000万円台までを想定しており、平均坪単価は400万円前後と見られる」(住宅新報)
「価格は未定だが、3,3000万円台から1億2,000万円台が目安。坪単価で400万円台の設定になりそうだ」(週刊住宅)
「価格は未定。そのために、予想値になるのだが、1DKを3,000万円以下で販売するのは、むずかしいのではないか、と思われる」(住宅ジャーナリスト・桜井幸雄の現場レポート/先端を読む-687-)
「住戸は、専有面積約25~69平方メートル。1DK・1LDKが59戸、2DK・2LDK・3LDKが35戸、全15タイプを用意」「販売予定価格は、3,300万円台~1億2,000万円台」(不動産流通研究所・R.E.poot)
つまり、みんな隔靴掻痒。記者は同じころ、坪単価が505万円の積水ハウス「グランドメゾン浅草花川戸」の記事を書いた。この価格には驚いたのだが、大京はいくらで分譲するのかとても興味があったので取材を申し込んだ。
同社のコンパクトを取材するのは2017年の「千代田岩本町」以来だったが、外観デザイン、マンションギャラリーの設営にはかなり力が入っている。メディア向け見学会を行った理由がよくわかった。訴求力は間違いなくある。
坪単価450万円が高いか安いか。23区内のコンパクトは2、3年前から軒並み坪400万円を突破してきているので、これもありかと思う。
当面は住友不動産の田原町駅から徒歩4分の「ザ・浅草レジデンス」113戸(記者は坪単価500万円とみたが)と競合しそうだが、大京の担当者は「積水ハウス」と競合していると話している。
現地(北側から写す)
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以下は、前述の記事とはほとんど関係ないおまけ。記者のつぶやきだ。
マンションの取材を始めてから40年が経過する。大京からはマンションのイロハを教わった。昔は鷹揚なもので、広報を通じて取材したことはなく、ほとんど役員クラスから直接情報を得た。原価はどのようにして積みあがっていくか、利益率をどれくらいに設定するかから、近隣対策費にはどれくらいのお金をつぎ込むかまで聞いた。
大京ばかりではない。子会社の扶桑興業(のちに扶桑レクセル)、かろりーな(その後グローベルス、現プロスペクト)、日神不動産、ダイア建設、明和地所、エフ・ジェー・ネクスト、菱和ライフクリエイト(現クレアスライフ)、明和地所、日本エスリード、日本綜合地所(現大和地所レジデンス)、ランド、プレザンスコーポレーション、シーズクリエイト、アンビシャス…OB会社の情報も収集できた。これまでグループ会社も含めて年間平均20~30物件として1,000物件くらいは取材している。
これくらい取材するとマンション市場が把握できる。記事はスピードが命だ。市場は刻々と変わる。旬の情報を読者の方に伝えられたと今でも思う。
ただ、記事にできない情報のほうが多かった。〝書くな〟と言われたことは一切書かなかった。もう時効だから書くが、こんなことだ。
明和地所の創業者、故原田利勝氏は社員の奥さんの月経の周期まで把握しており(なぜだか書くのは野暮)、奥さんの誕生日には必ずお花をプレゼントしたそうだ。生まれた子どもに「利勝」と付けた社員もいた。
大京のCMに出演していた故星野仙一氏とは何度も千駄ヶ谷駅近くの舗道でお会いした。故横山修二氏と面会した後などは満面に笑みを浮かべていた。心なしか胸の内ポケットが膨らんで見えた。
原田氏も横山氏も星野氏もみんな亡くなった。
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取材したこの日(10月22日)はわが西武ライオンズの49年ぶりの最下位を覚悟した日だ。前日は、これまで〝お客さん〟だったオリックス相手に惜敗し、残り1試合で最下位の日ハムに3厘差に迫られた。負け方もひどかった。今から13年前、2008年のあのG.G.佐藤さんの北京オリンピックの悪夢と同じ山野辺外野手の落球が致命傷になった。
取材中は野球のことなどさっぱり忘れていたが、同社の広報担当者は記者の傷口に塩をすり込む意図はなかったはずだが、オリックスファンだと話した。まあ、オリックスが優勝すれば、1995年(平成7年)の阪神淡路大震災以来だ。宮内さん、おめでとうございます。クソッ、山本め、宮城め、2人で11勝も献上した。来年は倍返しだ!
取材の帰り。たばこを吸いたくて蔵前駅周辺を探したが吸えるところは一つもなく、冷たい雨が降るなか悪態をつきながら浅草駅前の「神谷バー」まで歩いた。
生ビールとデンキブランを勧めるメニューには「相思相愛。交互に飲めば、非常に美味しい。どちらかだけでは、もの足りない」とあった。その通りに飲んだ。刺激的で甘い香りが口の中一杯に広がった。
記者を捨てた彼女とここでデンキブランを飲んだのはもう50年も昔だ。〝花を愛せる人になって〟が捨てセリフだった。立ち直るのに3年かかった。
その後10年以上かけてたどり着いたのは〝記事はラブレター〟だ。前段の業界紙の記事に欠けているのはこの「愛」だ。その欠片もないと言ったら失礼か。