RBA OFFICIAL
 
2022/03/08(火) 13:34

文にするのもためらわれる「急所●」新報の見出し/東急不「豊洲」の記事の感想

投稿者:  牧田司

 今朝(3月8日)、3月8日付住宅新報のWEB版記事見出しを読んで仰天した。だしぬけに「転機(下)不動産業界の急所金」が目に飛び込んできた。諸悪の根源である、数限りない過ちの源泉である「金=ふぐり」はもう使い物にならなくなった小生だが、「急所金」なる言葉など聞いたことがない。不動産業界とどんな関係があるのかとしばし考えた。辞書にもあたってみた。そんな言葉は見当たらなかった。新報の造語だろうと結論づけ、記事を読んでみたが、どこにもそんな文言はないばかりか、真新しい新説、珍説もなかった。

 そこで、もう一度記事見出しに戻った。謎は一瞬に解けた。見出しには「金」のあとに1字分の空白(スペース)があり「 利上昇に備えよ 景気腰折れ懸念が急浮上」とある。何のことはない。スペースをとれば「金利」だ。つまり、急所と金を切り離し、金と利を結び付けて読めばよかったのだ。文章の一字一字をきちんと読み、その文意を理解し、誤字脱字を見つけ出すのは長年の記者生活で身に着いた職業病ともいうべき習性だ。これが短兵急な判断を惹起させたということだ。

 新報さんよ、記事はしっかり校正したほうがいいですよ(人のことは言えないが)。ロシアのウクライナ侵攻に意気消沈しているのに、朝っぱらから口に出すのはもちろん文にするのもはばかられるようなまがまがしい記事など載せないでほしい。それはともかく、金利上昇懸念などあるのか。ウクライナ情勢次第で、世の中がひっくり返ることはあるかもしれない。

◇        ◆     ◇

 新報のとんでもない〝ミス〟を見つけたついでだ。業界各紙が伝えた東急不動産「ブランズタワー豊洲」の記事について小生の所感を述べる。

 まず住宅新報。同紙は次のように書いている。

 「東急不動産は、『ブランズタワー豊洲』(東京都江東区豊洲5丁目、総戸数1,152戸)を当初計画から約1年前倒しで完売した。来場者数は7,300組で、契約数が約1,100件と高い契約率だった。交通利便性が高く、東京湾岸が一望できる眺望が評価されており、湾岸マンションの人気が続いていることなどが要因。平均販売価格は、約8,000万円台後半(専有面積70㎡台)、平均坪単価410万円台で、周辺相場並みの水準。契約者は30歳代のファミリー層がメイン。会社員などの実需が多く、パワーカップルもいる。世帯年収は1,400~1,500万円ほどだった」

 3月7日付週刊住宅は次のようにある。少し長いが、そのまま引用する。

 「東急不動産とNIPPO、大成有楽不動産、JR西日本プロパティーズの4社が東京都江東区豊洲5丁目で開発・分譲した地上48階建て、総戸数1,152の超高層タワーマンション『ブランズタワー豊洲』が竣工した。
 分譲開始は2019年。販売に加速がかかるはずだった20年前半はコロナ禍に見舞われる一方、東急不動産を含む10社共同事業で東京五輪選手村として使用された『晴海フラッグ』(中央区、分譲街区4,145戸)の販売時期とも重なった。…全体の平均坪単価は416万円だった。当初から『晴海フラッグ』より1段高い設定だったが、その価格差を十分吹き飛ばすだけの魅力が備わった物件でもあった。他社物件との比較検討者の中には『中央区か江東区かのアドレスで悩む人がいた』一方で、『同じ豊洲エリア内でよりいい物件への買い替えを進める人も目立った』と東急不動産の担当者は話す」

 3月2日付のR.E.pootは次のように報じている。

 「東急不動産(株)は2日、2021年10月に竣工したブランド最大級の規模となる『ブランズタワー豊洲』(東京都江東区、総戸数1,152戸)を報道陣に公開した…。住戸は5~48階で、間取りは1LDK~3LDK、専有面積は約43~約227平方メートル。ボリュームゾーンは70~75平方メートルの3LDKで約600戸、100平方メートル以上の住戸も92戸用意した。46・47階はプレミアムフロア、48階はロイヤルプレミアムフロアとした。販売価格は、4,400万~5億7,800万円、平均坪単価410万円」

◇        ◆     ◇

 3紙を読み比べてみると、東急不動産は3月2日にメディア向け竣工見学会を行ったことが分かる。新報も週刊住宅もなぜかそれを伝えていない。事実関係は読者にきちんと伝えるべきだ。

 小生はこの見学会を取材していない。同社から声はかからなかったからだ。コロナの発生前後か、このところ同社から取材のお誘いがかからなくなった。プレス・リリースも送られてこない。

 理由は分からないが、同社の分譲事業について小生は「在庫が多い」「利益率が低い」「〝街づくりの東急〟として情けない」などの批判的な記事を書いているので、同社の覚えがよくないのか、あるいは冒頭のような〝下品〟なことを平気で書くのでメディアとして扱ってもらえないのかもしれない。お呼びがかかるような記事を書かないといけないと改めて考えた。

 これは東急さんに限らず、すべてのデベロッパー広報担当の皆さんにお願いだ。今回の「ブランズタワー豊洲」の事業説明会、モデルルーム見学会は取材しており記事にもしている。双方合わせてアクセス数は約5,000件に達している。これは少なくないはずだ。ときには辛辣なことも書くが、すべては〝記事はラブレター〟。愛するがゆえのメッセージだと受け止めてほしい。「豊洲」だって「愛」がテーマだったではないか。

◇        ◆     ◇

 3紙の記事で小生がもっとも注目したのは坪単価だ。モデルルームオープン時の記事でも書いたが、当時、業界では坪単価は400万円を切るのか上回るのかで論議されていた。小生は400万円台に乗るのは間違いないという印象を受けた。その通りとなった。新報とR.E.pootは坪410万円と書いているが、小生は週刊住宅が報じた坪416万円が正確な単価ではないかと思う。高層階の住戸が単価を引き上げているはずだ。

 不可解なのは新報の記事だ。「当初計画から約1年前倒しで完売」「契約数が約1,100件と高い契約率」とあるが、同社は完売まで竣工後1年かける予定だったのだろうか。竣工完売は想定外だったのだろうか。

 この点について小生は、湾岸ならどこでもいいと考える人は選択に迷うだろうが、立地が全然異なる「HARUMI FLAG」との競合はそれほどないと思った。江東区と中央区、陸続きでなく運河を挟むこと、入居時が異なること、熟成した街とそうでないことなどから、「豊洲」が坪400万円を突破しても「HARUMI FLAG」やその他「月島」「勝どき」などに負けることはないと考えた。関係者もそう判断したからこそ坪400万円に挑戦したはずだ。

 その直後、コロナで販売を中断させられたのは想定外で、販売の長期化も覚悟しただろうが、この物件に限らずコロナは販売促進にプラスに働いた。「HARUMI FLAG」の入居開始が1年延びたのも、豊洲購入を決断させる要因になったのではないか。

 「契約数が約1,100件と高い契約率」は意味不明。この文章だと残りは50戸くらいあると読めるが、完売したのだから契約数は1,152戸だ。どうしてそう書かない。新報はまた「坪単価は周辺相場並み」と書いているが、周辺には競合物件は一つもないどころか、豊洲の物件としてはこれまでにない最高値だ。記者の方が「相場並み」と判断するのは勝手だが、販売担当者は値付けに神経をすりつぶしているはずだ。少しは販売担当の苦労について気を配るべきだ。

 残念なのは、物件がいいのか悪いのか、記者の視点が記事には欠落していることだ。唯一、週刊住宅のみが「当初から『晴海フラッグ』より(価格が)1段高い設定だったが、その価格差を十分吹き飛ばすだけの魅力が備わった物件でもあった」と書いているが、その魅力を記者の視点で書いてほしかった。魅力は山ほどあるはずだ。

 いずれにしろ、今回の竣工完売は東急不動産の今後のマンション商品企画に大きな影響を与えると思う。「ブランズ」ブランドが向上することを期待したい。

「愛」をテーマに坪400万円に挑戦 7月下旬にモデルオープン 東急不ほか「豊洲」(2019/6/14)

東急不ほか 全1,152戸の「豊洲」事業説明会に40名超の報道陣 〝愛〟に反応(2019/2/18)

 


 

 

rbay_ayumi.gif

 

ログイン

アカウントでログイン

ユーザ名 *
パスワード *
自動ログイン