三菱地所は5月25日、有楽町再構築を体現する既存ストックの活用プロジェクト第1弾として「有楽町『SLIT PARK(スリット パーク)』」を6月1日にオープンすると発表した。同日、オープンに先駆け行ったイベントをメディアに公開した。
「スリットパーク」は、従前は薄暗く自転車置き場などになっていた、同社が保有する丸の内3丁目の新国際ビルと新日石ビルの幅6mのL字型路地裏スペース約501㎡(151坪)を多目的空間にコンバージョンしたもの。8月中旬までに新国際ビルの丸の内仲通り側エントランスとオフィスロビーの改修を行い、「スリットパーク」の突き当りの区画を貫通させ、大名通りと丸ノ内仲通りをつなぐ動線としての機能も持たせる。
空間には「森」をイメージした植栽を施し、休憩スポットやキッチンカー、屋台、カートショップなどの飲食・物販サービスを提供し、アート展示やイベントを実施することで出会いや交流を促進し、街の魅力向上を目指す。Wifiと電源を各所に完備し、執務空間としても常時利用可能としている。設計・監理はオープン・エー、三菱地所設計。運営は東邦レオ。
同社は、大手町・丸の内・有楽町エリアの街づくりを「丸の内NEXT ステージ」と位置づけ、それを加速させるため①多様な場の提供②多様なテーマ・コミュニティ③面でのつながり・発信④クリエイティブな活動を引き起こす⑤デジタルビジョン・スマートシティの実現-の5つの戦略を掲げている。今回はその一環。
また、同社の「長期経営計画2030年」では、有楽町エリアを重点更新エリアの1つと定め、これまでもエリアでは「Micro STARs Dev.」「CADAN有楽町」「有楽町アートサイトプロジェクト」「ソノ アイダ#有楽町・ソノ アイダ#新有楽町」「有楽町アートアーバニズムプログラム YAU」など様々な企画・イベントなどを行っている。
有楽町ビル・新有楽町ビルの建て替えに着手したほか、稼働中ビルも順次リニューアルを行い、有楽町エリア全体の再構築を目指している。
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同社は前日24日、築64年の延べ床面積約111,272㎡の「大手町ビル」の大規模リニューアル工事が完了したのにともなうメディア向け内覧会を行った。今回はわずか501㎡の路地裏空間のリノベーションだ。
些細な取り組みとして軽視してはいけない。設計・監理を担当したオープン・エー代表取締役・馬場正尊氏が「小さいけれど、大きな変化の予兆になって欲しい」と、運営する東邦レオ代表取締役社長・吉川稔氏が「緑とアート、音(DJ)やアペリティフを触媒に、シェアスペース、コワーキングでは生み出せない、偶発的な出逢い(セレンディピティ)から想定外のイノベーションが起こる場をソーシャルに創造していく」とそれぞれコメントしているように、記者も100年先を見据えた「大丸有」の壮大な街づくりの一環だと思う。
いま、山手線内では「大丸有」のほか日本橋、八重洲、新橋、浜松町、泉岳寺・高輪ゲートウェイ、品川、渋谷、新宿、赤坂、虎ノ門・赤坂などで大規模再開発が進行中だ。都市間・エリア間競争は益々激化する。「滞在の快適性等の向上」(都市再生特別措置法)を図らないと、気が付いたときは手遅れになる。
路地裏空間のリノベは他にもありそうだが、記者は「バスあいのり3丁目テラス」をすぐ思い出した。三菱地所が所有する土地に東邦レオが植栽などを担当した施設で、今回の「スリットパーク」と同様、施設内の樹木、その他の全てが移動可能で建築物でないことがみそだ。
今後、区市町村道を活用した取り組みは加速度的に進むはずだ。今回の施設はその参考になる。
一つ、課題をあげる。25日のトークセッション&DJイベントで梅澤高明氏(A.T.カーニー日本法人会長/ナイトタイムエコノミー推進協議会理事)は、「このような路地裏空間には空調の音がある」と語った。〝うるさい〟とは言わなかったが、そのような意味が込められていると記者は受け取った。
音楽と異なり、これが意外と気になる。気になりだすといたたまれなくなる。車や建築工事の音もそうだ。音を消す技術は開発されないのか。どことは言わないが、工事現場の空きスペースに飲食施設を設置したデベロッパーがあるが、閑古鳥が鳴いている。それともう一つ。喫煙スペースは必須だと思うがいかがか。
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