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2022/10/12(水) 12:43

住民側は「官製談合」の証拠示すべき/都側弁護士「都の政治判断に瑕疵はない」のか

投稿者:  牧田司

 この日(10月11日)、オリンピック選手村控訴審の第1回意見陳述後に司法記者クラブで行われた控訴人側(以下、住民側)の記者会見後、「最初に書いたのは私です」と声をかけられた。「しんぶん赤旗」の記者の方だった。6年前の悔しい思いがぶり返した。

 東京都が「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」の選手村の整備と大会後のまちづくり「晴海五丁目西地区第一種市街地再開発事業」の特定建築者に三井不動産レジデンシャルを代表とする11社を選定、敷地を約130億円で売却すると発表したのは2016年7月28日だった。

 記者はこの超割安の売却額に驚き、「東京2020オリ・パラ選手村 敷地売却価格は地価公示の10分の1以下の〝怪〟」の見出しの記事を書いたのは、2016年8月6日だった。8日間の間隔が空いたのは、当時、RBAタイムズWeb版「こだわり記事」に小生が書いた記事は、日経新聞が一般の住宅購入検討者を対象に情報を発信していたWeb「住宅サーチ」にそのまま転載されていた。その影響力の大きさを考えれば誤報は許されず、記事を補強するため図書館に通い、不動産鑑定に関する専門書を読み勉強する時間が必要だったからだ。

 記者というものは、他紙・他者を〝出し抜く〟ことに生きがいを感じ、そのために血道をあげるのが習性だ。小生もその一人だ。記事を発信したときは、小生がどこよりも早く発信したと思っていた。快哉を叫んだものだ。記事の中身には絶対的な自信があった。

 ところが、知人の不動産鑑定士から「牧田さん、同じような記事は『しんぶん赤旗』が報じています」と知らされた。第一発信者は小生ではないということだった。地団太を踏んだのが後の祭り。脱帽するほかなかった。料理で一番出汁が重宝されるように、記事の二番煎じは価値が半減する。

 ところが、記者は二番煎じではなかった。何と「日刊ゲンダイ」も小生より1日か2日早く報じていたことが分かった。つまり、ほとんど出がらしになり下がったということだ。

 ただ、一つだけ両紙に勝っていたものもあった。容積率100%当たりの1種坪単価はただ同然の8万円ということを暴いたことだ。マンション記者として溜飲を下げた。この記事へのアクセスは現在、約14,000件に達している。

◇        ◆     ◇

 前置きが長くなった。争点はほぼ出尽くした観がする。今後の裁判の行方は不明だが、開発法による売却価格が適法であるとするならば、住民側の劣勢は免れない。住民側は地方自治法、地方財政法違反を前面に出し争う姿勢を示しているが、果たしてどうか。もう一つ、住民側は「官製談合」だと批判するが、やはりその裏付けとなる具体的証拠を提出しないと説得力に欠ける。

 また、住民側は桐蔭横浜大学法学部客員教授の不動産鑑定士・田原拓治氏の意見書を提出することを明らかにしたが、飛び道具になるかどうか。不動産鑑定なるものは百人百様。絶対解はない。国土交通省も問題視していない。

 一方、被控訴人(以下、東京都)のこの日の弁護団長である弁護士・外立憲治氏の意見陳述は第1審で勝訴したためか、弁舌爽やかで、理路整然とまくし立てた。ジョン・グリシャムの法廷小説に登場する弁護士のようだった。

 しかし、ご本人は気が付かなかったのだろうか、問題発言もあった。「何故、控訴人らはその無意義な主張に固執するのか。その理由は、控訴人らの政治的信条にあります」とし、「東京都は…政治的な決断をしたものですが、この政治的決断が控訴人らの政治的な信条と相いれないものであるので、自らのその信条を公の場で訴えるために、住民訴訟を提起したものだと私は考えております」と話した場面だ。

 都(都知事)が政治的判断をもってなした行為に賛成しようが反対しようが、小生のようにニュートラルの非政治主義の立場を取ろうと、あらゆる態度は政治性を帯びる。都が下した政治的判断に瑕疵がないと決めつけ、反対する住民側を邪悪な政治集団であるかのように断罪するのはいかがか。外立氏の主張は自己撞着だし、そもそも政治的信条は基本的人権だ。人権を否定するような発言はブーメランのように自らを襲いかねない。

 「住民訴訟は、一部の住民の政治的な主張を披歴する場ではない」という発言も問題だ。法律は、訴訟人の政治的信条など資格を定めていない。一人でも提訴できるように、全て国民は法の下で平等だからだ。法廷で何をしゃべろうが本人の勝手だし、何をしゃべってもその言動は政治性を帯びることは先に書いた通りだ。その是非を判断するのは裁判官だ。

 「行政制度に司法から介入し、民主政を脅かすものではないでしょうか」という指摘も当たらない。行政が司法に、司法が行政に介入することなど、民主国家ではまずありえない。そんなことができるのは独裁国家だけだ。住民側に訴訟の制約を求めるのは極めて危険な全体主義思想だ。

 次回の審理は12月15日13:40~101号法廷で行われることが決まった。丁々発止の罵声が飛び交い、裁判官から法廷侮辱罪で叩き出されるような場面は多分ないはずだが、傍聴しレポートしたい。

オリンピック選手村 売却額の是非を問う 住民訴訟控訴審 第1回口頭意見陳述(2022/10/11)

東京2020オリ・パラ選手村 敷地売却価格は地価公示の10分の1以下の〝怪〟(2016/8/4)

釈然としない国交省の「かんぽの宿」不動産鑑定士に対する処分(2011/8/29)

 

 

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