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2023/04/27(木) 14:46

尾根幹線沿線23か所66haの再生・活性化へプラットフォーム創設 多摩市

投稿者:  牧田司

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「多摩ニュータウン尾根幹線沿道まちづくりプラットフォーム2023」

 多摩市は4月25日、「多摩ニュータウン尾根幹線沿道まちづくりプラットフォーム2023」を開催した。八王子・日野市のイノベーションの取り組み、橋本駅のリニア新幹線の開業、宅地開発が進む稲城市に囲まれているポテンシャルの高さを生かし、団地再生・活性化、雇用の創出を生みだそうというのが狙いだ。土地利用変換を予定している対象エリアは約66haにも及ぶ。

 冒頭、多摩市都市整備部長・佐藤稔氏は「平成25年に多摩ニュータウン再生の取り組みに着手し、今年1月には『南多摩尾根幹線沿道土地利用方針』を策定した。方針は、現在整備中の尾根幹線の4車線化と公的賃貸住宅の団地再生の動きを契機に、尾根幹線沿道の新たな賑わい、雇用の場を創出するべく、住宅用地から他の用途変更を含めた土地利用変換を図るのが目的。今後の人口減少や歳入確保の面からも市として重要な政策の一つとして考えている。プラットフォームで頂いたご意見・ご提案は現在進めている都市計画マスタープランの改定に参考にさせていただく」と挨拶した。

 プラットフォーム創設は、令和5年1月に策定した「南多摩尾根幹線沿道土地利用方針」に基づき、多摩NTを東西に横断し、町田街道に接続する延長約16.5㎞の暫定2車線の南多摩尾根幹線道路が令和11年度に全線4車線となるのを契機に、土地利用変換を行い、多摩NTの再生・活性化を図ろうというのが目的。

 土地利用転換を検討する対象エリアは都営諏訪団地(2.8ha)、UR永山団地(3.9ha)、都営貝取団地(1.3ha)、UR豊ヶ丘団地(4.1ha)、都営落合団地)2.12ha)、公社落合団地(3.4ha)の賃貸住宅のほか都立永山高校(4.6ha)、諏訪小学校(2.4ha)、旧南永山小学校(2.6ha)、旧南豊ヶ丘小学校(2.8ha)、鶴牧中学校(3.4ha)の教育機関と多摩東公園(7.1ha)、諏訪南公園(2.7ha)、一本杉公園(10.1ha)の公園など23か所約66.53ha。これらを「諏訪・永山沿道エリア」「貝取・豊ヶ丘・南野沿道エリア」「落合沿道エリア」「唐木田・鶴牧沿道エリア」の4つのエリアに分けている。

 事務局は市に置き、沿道の土地・建物所有者である東京都、UR都市機構、JKK東京からの支援を受け、コーディネートの役割を果たす多摩市ニュータウン再生推進会議と大学、事業者(登録が必要)、地域団体などが参加し、プラットフォームに寄せられた意見・提案を論議する。意見は令和6年度に予定している「多摩市都市計画マスタープラン」改定の参考にする。

 今年度は先行モデルとして「諏訪・永山沿道エリア」を選定し、先行モデルのうち「旧南永山小学校」(2.6ha)「UR永山団地」(3.9ha)「都営諏訪団地」(2.8ha)を対象とした令和4年度の1000社民間事業者アンケート結果を報告。回答は56票あり、商業施設(27票)、物流産業施設・運輸施設(15票)、スポーツ施設(14票)、キャンプ場・グランピング施設(9票)、情報通信産業施設(9票)、大学・教育施設(7票)、製造・工場(6票)、研究施設(5票)、病院・医療施設(4票)などが施設立地ポテンシャルとして高い評価を受けたと説明した。

 土地活用に当たり興味のある街づくりテーマとしては、「新たな雇用の創出」「職住近接」「安心安全の防災拠点」などの地域貢献への関心が高く、不動産業・小売業、スポーツ・レジャーを中心とした多様なテーマへの関心があるとしている。

◇        ◆     ◇

 遅きに失した感は免れないが、「雇用の創出」「ニュータウンの再生」が実現するのであれば、市民の記者もそうだが、だれも反対する人はいないはずだ。事業者アンケート結果は、多様な用途利用が可能で、ニュータウンのポテンシャルの高さを証明している。

 実現には課題がないわけではない。前段で紹介した土地利用変換を予定しているエリアの尾根幹線道路北側(駅側)の用途地域はほとんどが建ぺい率60%、容積率200%の第1・2種住居地域、準住居地域などだ。〝なんでも可〟の商業系地域はひとつもなく、唐木田駅に近い一部の地域が準工業地域になっているのみだ。

 他の用途の利用を可能にするには用途地域・地区計画を変更し、建ぺい率、容積率の緩和も必要になる。その際、課題となるのは近隣住民などの同意を得られるかどうかだ。

 とくに都市公園の廃止・変更については、都市公園法の高いハードルがある。同法16条では「公園管理者は…みだりに都市公園の区域の全部又は一部について都市公園を廃止してはならない」とし、例外的に認めているのは①都市公園の区域内において都市計画法の規定により公園及び緑地以外の施設に係る都市計画事業が施行される場合その他公益上特別の必要がある場合②廃止される都市公園に代わるべき都市公園が設置される場合などとしている。

 この条文に照らし合わせれば、一本杉公園などを他の用途に転換するのは容易ではない。ただ、市は多摩中央公園内に公設・公営の図書館を建設し、近くオープンするように、公園機能を残しながら民設・民営の施設を設けるのは可能のはずで、市内の他の公園にもこれは適用できるのではないか。

 また、物流施設に対しては「嫌悪施設」のイメージが強く、近隣住民の反発も予想される。これについては、三井不動産常務執行役員ロジスティクス本部長・三木孝行氏(当時、現在専務)が「物流施設はもはや嫌悪施設ではない」と語ったように、丁寧に説明すれば市民の理解は得られるはずだ。

 これは課題ではないが、市の担当者が現状認識について「多摩ニュータウンは現在も発展している」と語ったのには、異議を唱えざるを得ない。

 何をもって「発展」と捉えるかだが、多摩市エリアに限ると多摩NTの人口は減少に転じているではないか。高齢化率も3割を超え、今後加速度的に進行する。

 かつて「金妻」の撮影舞台になった多摩NTは、バブル崩壊で暗転した。多摩そごうが2010年に撤退し、その後、三越が規模を縮小し入居したが、その三越も撤退した。温泉・宿泊も可能だった「ウェルサンピア多摩」も2010年に閉鎖された。京王プラザホテル多摩も今年1月、33年の歴史に幕を閉じ、恵泉女学園大学も2024年度以降の新規学生募集を終了すると発表した。多摩NTの地盤沈下は否めない。多摩NT居住者の誰一人として「街は発展している」などと思っていないはずだ。

 市場の評価も同様だ。都心へのアクセスはほとんど同じの、〝健幸都市〟をスローガンに掲げる多摩市と〝母になるなら・父になるなら流山〟の流山市の地価公示を見てみよう。

 民間のデータによると、「多摩センター駅」圏の平均地価公示は平成元年の236万円/坪をピークに下落・横ばいを続けており、令和5年度はピーク時の3分の1の82万円/坪まで下落している(小生のマンションも同様)。一方の「流山おおたかの森駅」圏はどうか。この10年間上昇を続けており、令和5年度は110万円/坪となり、これまでピークだった平成3年の106万円/坪を上回った。多摩センターより4割以上高い。(つくはEXの開業は平成17年だが)

 信じられない現象だ。井崎市長と流山市民の方には失礼だが、緑の絶対量、歩車分離の街、生活利便施設の充実度などを総合的に評価すると、多摩センターのポテンシャルは流山おおたかの森よりはるかに高いと思う。見比べていただきたい。

 なぜ、逆転現象が起きたか。その一つの理由として、多摩市は市の魅力を伝える情報発信力が弱いからだと考えている。令和3年度の多摩市政世論調査では、住まい環境について「緑の豊かさ」(70.9%)「空気がきれい」(47.1%)「日当たり・風通し」(57.5%)などが極めて高い数値を示している。これを徹底してアピールすべきだ。

 〝健幸都市〟も結構だと思う。市民の評価も高く、前述の世論調査では67.6%の人が「よい取り組み」と答えている。また、不幸1~幸福10の10段階で1つを選ばせる設問では、1と2を選んだ人は2.9%、9と10を選んだ人は26.2%だ。一方で、議会(議員)に「期待していない」人は24.0%にも達している(記者は選挙に行っていない)。

 これらの結果から判断すると、わが多摩市民は〝幸福〟で〝而立〟している人が多く、楽観的に物事を考える人が多いことが分かるのだが、小生などは〝健幸都市〟のスローガンを目にするたびに「健康でない、幸せでない」自分と社会のことを自覚させられる。他国を侵略し、人と人が殺しあい、軍事力の強さでもって国力を競い合い、小生のように選挙に行かない人が増え、議員に期待しない人が4人に1人の割合もあるというのに、どこが幸せなのか。そもそも何が幸か不幸かの前提条件を示さない設問は意味がないではないか。個人的なことだが、〝あなたを受動喫煙から守ります〟とし、駅周辺での喫煙をほとんど禁止したのにも小生は我慢がならない。われわれ喫煙者を駆逐するのか(市のアンケートによると喫煙者は7.7%とか。結構なことだ)。港区は公園や舗道に喫煙所をたくさん設け、分煙を推進している。

 流山市はどうか。子育て世代向けに極めて明確なメッセージを発信している。一定規模以上のマンションには保育施設の併設を義務付けるなどの施策も行っている。多摩市と流山市の差は、前向きか後ろ向きかにあるような気がする。多摩市も若年層を呼び込みたいなら、分かりやすい施策を打ち出すべきだ。

 明星大学・西浦定継教授は10年も昔に、「何もしなければ多摩ニュータウンの人口は50年後(2060年)の人口は半減する。座して死を待つしかない」と警告を発した。市は危機感を持って多摩NTの再生・活性化に取り組んでいたら、もっと違った結果になったのではないか。

 まあしかし、佐藤氏は「多摩市は変わったといわれるようにしたい」と語った。あと何年かかるのか、小生はそれまで生きていられるのか…。

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「リニア、圏央道は広域連携を進める絶好の機会」明星大・西浦教授(2013/10/23)

「何もしなければ多摩NTの人口は50年後に半減」西浦・明星大教授(2014/1/29)

 

 

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