野村不動産と埼玉大学の共同研究・開発の成果でもある「推しの木図鑑」に関連することだが、記者は積水ハウスの「5本の樹」計画を以前から注目している。2001年に始まったもので、〝3本は鳥のため、2本は蝶のために、地域の在来樹種を〟という思いを込め、地域の気候風土・鳥や蝶などと相性の良い在来樹種を中心とした植栽にこだわった庭づくり・まちづくりの提案だ。
この「5本の樹」計画は、同社と琉球大学理学部久保田研究室・シンクネイチャーが2021年に発表した「ネイチャー・ポジティブ方法論」に結実した。同社が20年間に植栽した樹木本数・樹種・位置情報の蓄積データを分析し、定量的な実効性評価を可能にしたもので、生物多様性の劣化が著しい三大都市圏の在来種は約10倍に、鳥の種類は約2倍に、蝶の種類は約5倍に増加したことが確認できたというものだ。そして、1977年の三大都市圏の樹木・鳥・蝶の種数、多様度指数、個体数を100%とし、今後日本で新築される物件の30%に「5本の樹」計画が採用された場合、その回復効果は84.6%まで上昇すると予測している。
同社に問い合わせたら「5本の樹」計画による植樹本数は2022年度(2023年1月31日現在)、累計1,900.3万本、植栽プレートは672,700枚(約67万枚)とのことだ。
植樹本数の多さは、わが国の街路樹本数が約670万本(高木)ということと比較してもいかに多いかが分かる。植栽プレートの植樹樹木に対する設置比率3.5%をどう評価するかだが、国内で唯一「植物名称の基準書」に準拠したラベルメーカー・アボック社のホームページには「植物名ラベル納品実績 全国500万枚」とあるように、積水ハウスの実績は少なくないといえるのではないか。
野村不動産・埼玉大学の「推しの木図鑑」も積水ハウスの「5本の樹」計画も〝全国区〟になることを期待したい。その要諦・肝は涌井史郎氏が言った「木の名前と虫の名前と鳥の名前を覚えると、一歩、歩くごとに人生3倍楽しくなる」-つまり名前を覚えることにあるような気がしてならない。
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