4列のイチョウ並木(今年5月写す)
神宮外苑地区まちづくり計画の代表施行者・三井不動産は7月20日、計画地の近隣住民を対象にした事業説明会を7月17~19日の3日間にわたって行い、381名が参加、41名が質問(意見陳述)、86件の質疑応答が行われたと発表した。
説明会は、計画地の敷地境界から計画の最高建物高さ(約190m)を2倍した距離の範囲内の近隣(約13,000世帯/法人含む)を対象に開催したもので、改めて計画の意義や必要性を説明した。
プロジェクトサイトで説明動画と質問受付ページを公開し、回答は約3週間後を目安にプロジェクトサイトに回答を掲載する予定。
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「神宮外苑地区まちづくり計画概要とまちづくりに関するご説明動画」は全体で約30分。「5つのポイント」として①明治神宮外苑とまちづくりの意義②段階建て替えによる大規模スポーツ施設の更新③オープンスペースの拡充④4列のいちょう並木の保全⑤みどりの考え方-について説明された。
全部を視聴した。①~④は、説明も具体的で分かりやすかった。
一番聞きたかったのは⑤「みどりの考え方」だった。「最後に街づくりについてご説明いたします」と切り出し、「神宮外苑地区街づくりにおいては一本一本の樹木を大切に扱い、施設計画の工夫も行い、可能な限り多くの樹木を保存します。
保存できない樹木は、樹木の活力度などに応じてできる限り移植いたします。移植のための根回し作業ができないほど建物に近い樹木や、移植に耐えられないほど活力度が低い樹木など、やむを得ず伐採する樹木については利活用いたします。
新たに新植する樹木については、献木や苗木の育成も行います。緑の面積と本数を増やしながら、皆さんと一緒に神宮外苑の次の100年に向け誰もが緑を楽しめる空間づくりに努めてまいります」と締めくくった。約5分間だった。
これにはがっかりした。これまでの説明と変わらない。「一本一本の樹木を大切に扱う」のであれば、やむを得ず伐採する734本の樹木の位置と樹種、樹齢を公表すべきだし、そのあとに新植する樹種も公表すべきだと思う。樹木本数は現状の1,904本から1,998本に、みどりの面積は整備前の25%から整備後は30%に増加するのに、多くの疑義・質問が寄せられているのはなぜなのかを事業者は真摯に受け止めるべきだ。
記者は、住民の人たちは神宮球場やラグビー場、ビル・ホテルなどの建て替え・建設そのものに反対ではなく、樹齢100年を超す神宮外苑の森の歴史・文化が破壊されようとしていることに疑義を唱えているのだと思う。記者自身も30年近く〝草野球の聖地〟である軟式野球場に通った。数千試合を取材しているはずだ。敷地内に植えられている巨木には畏怖すら感じる。
もう20年以上前だ。当時のプロパストは大磯の徳川邸跡地にマンション「レゾンデパン大磯」を建設・分譲したが、敷地中央に植わっていた松の大木を避けるように配棟した。積水ハウス「グランドメゾン狛江」も、敷地内に植わっていた20m超のヒマラヤスギ、ケヤキ、イチョウなどの既存樹約100本を残し、約18,000本を植樹した。
「残しながら、蘇らせながら、創っていく」-三井不動産の街づくりのスローガンだ。
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