RBA野球大会 4年ぶり開催 54チーム参加
東急リバブル、三菱地所が優勝
記者にとって最大のトピックスは、コロナ禍で中止となっていたRBA野球大会が4年ぶりに開催されたことだ。水曜ブロックは33チーム、日曜ブロックは21チームが参加した。コロナ前より参加チームは若干減少したが、かつてない盛り上がりをみせた。水曜ブロックは東急リバブルが18年ぶり、日曜ブロックは三菱地所が28年ぶりにそれぞれ優勝した。発信した記事は約150本。総アクセス数は8万件くらいに達しているはずだ。
皆さんは〝たかが野球〟と思われるかもしれないが、売上高が1兆円以上の住宅・不動産業界の企業のうち参加していないのは住友林業(4年前までは参加)と飯田グループくらいで、参加54チームの所属する会社の売上高をトータルすると約50兆円(うちトヨタ自動車は37兆円)に達する。社会人・都市対抗には勝てないが、住宅・不動産業界だけでなく鹿島建設、清水建設、長谷工コーポレーションなどゼネコンも参加するこのような幅広い業種を束ねた野球大会を弱小企業が35年も継続して行っている。延べ参加選手は3万人くらいになるのではないか。親子で同じ会社・チームに参加する事例も出始めた。そんな大会を30年間にわたって取材できたことに感謝!感謝!感謝!
価格上昇続くマンション、変調きたす分譲戸建て市場
野球大会より長く40年以上にわたり取材してきた分譲住宅の記事を今年1年間でマンション約120本、一戸建て約20本を書いた。しかし、現地見学・取材はコロナ以降激減しており、市場を把握するには程遠く、内心忸怩たるものがある。
調査機関による今年の首都圏マンション供給量は約3万戸だが、着工戸数の6割くらいしか捕捉できていないことを忘れてはならない。残りの4割は高額物件のクローズド販売、建て替えマンションの地権者住戸、30㎡未満の住戸などだ。
いわゆる億ションも4,000戸くらい供給され、平均価格も1億円に上昇したことが報じられているが、郊外部の坪単価が250万円くらいのとその4倍もある1,000万円超の物件などすべてを合算し、平均値を出せばそのような数値になるのは当然だ。マクロデータだけでなく、基本性能・設備仕様レベルがどうなっているかも調べないと、市場を把握したことにはならない。
今年見学取材した物件でもっとも印象に残ったのは「HARUMI FLAG」(板状棟)だった。ランドスケープデザインが抜群で、これほど素晴らしいものは過去にないはずで、将来も供給されないだろう。街づくりでは「麻布台ヒルズ」も最高に素晴らしいと思った。
「三田ガーデンヒルズ」の坪単価1,300万円を的中させたのは我ながらあっぱれ。記者冥利に尽きる。郊外物件では大和ハウス「プレミスト昭島」(481戸)が圧巻だった。残りは100戸しかない。販売スピードにびっくりした。「うめきた2期」の積水ハウス他「グラングリーン大阪(GRAND GREEN OSAKA)」は〝負けたらあかんぞ東京に〟の意地を見た。
分譲戸建ては、圧倒的シェアを占めている飯田グループなどの物件を10年以上見ていないので語る資格もないが、コロナ後の勢いは完全に止まり、資材高騰などの影響を受けそうで、今後の展開には注視する必要がある。
見学した物件では、建ぺい率30%、容積率50%のポラス「NOEN KASHIWA SAKASAI-ノエン柏 逆井-」(8棟)が最高に素晴らしかった。
価格上昇〝もうはまだ〟なのか〝まだはもう〟
新築市場と連動するから当然といえば当然だが、中古マンションの単価、価格上昇が続いている。買取り・再販事業も伸びるはずで、立地、環境に恵まれたいわゆるビンテージマンションの争奪戦が始まるのではないか(もう始まっているか)。課題は中古物件の断熱性能を高めることだ。管理規約を改正し、単板ガラスサッシを二重サッシや樹脂サッシに容易に変更できるようにすべきだ。改正区分所有法ではそうなるはずだ。
もう一つの問題は、新築も中古もいつまで価格上昇が続くかだ。〝もうはまだ〟なのか〝まだはもう〟なのか。これは分からないのだが、少なくともアッパーミドル・富裕層向けは現在の好調市場が続くのではないかと記者は見ている。
2023年の港区の課税標準額が1億円を超える層は2016年の957人から45.5%増の1,392人(全納税者の0.9%)、課税標準額1,000万円超の納税者も7年前より40.2%増の27,680人(全納税者の18.6%)になっているのもその根拠の一つだ。格差社会は加速度的に進んでいる。
落ち込む持家 木造は増えるのか 住宅着工
住宅着工では、持家の落ち込みが気になる。今年10月まで23か月連続して前年同月比で減少しており、今年1~10月では前年同期比10.6%減の189,532戸だ。前年に引き続いて分譲住宅を下回る可能性が高い。
記者は持家の着工戸数は元に戻らないと悲観的な見方をしている。建て替えはともかく、適地は減少しているはずで、価格は高いがアクセスに恵まれた分譲マンションや、圧倒的に価格が安い分譲戸建てに相当数が流れていると思う。
構造別では、平成21年度に木造率が50%を超えてから50%台の半ばで推移しているが、記者は近いうちに6割に達するのではないかとみている。大和ハウスが11月に行った「戸建住宅事業 計画説明会」で2022年度実績の5,762棟(請負:4,191棟、分譲1,571棟)から2027年度には10,000棟(請負:3,000棟、分譲7,000棟)に拡大し、分譲戸建ての鉄骨:木造比率が7%しかない「木造」を「分譲は全て木造にしたいくらい」と同社取締役常務執行役員住宅事業本部長・永瀬俊哉氏が語ったのに衝撃を受けた。
一方で、25年の歴史を持ち累計販売棟数16万棟を突破している工務店ネットワーク「JAHBnet(ジャーブネット)」(主宰:AQ Group宮沢俊哉社長)は2023年12月末日をもって解散すると発表した。プレカットを含めた分譲戸建て業界の再編があるかもしれない。
第三者管理者方式増加へ 区分所有法改正へ マンション管理
マンション管理では、第三者管理者方式のガイドラインの整備に関するワーキンググループの会合が始まった。来年3月までに答申される模様で、予算に余裕のある管理組合や富裕層向け、投資向けマンションに採用するケースが激増するのではないか。
また、法務省は、区分所有建物の管理・再生の円滑化、被災建物の再生の円滑化に向けた区分所有法制の見直しは喫緊の課題とし、所在等不明区分所有者を決議の母数から除外する仕組み、管理不全状態にある専有部分や共用部分の管理に特化した新たな財産管理制度、共用部分の変更決議の要件の緩和、建替え決議の多数決要件の緩和などの見直し作業を進めている。来年度には法改正が行われる見込みだ。
「空家等対策の推進に関する特別措置法」(空家等対策特別措置法)が改正され、今年5月に施行されたが、テーマが大きすぎで、記者は取材をしたことがほとんどない。どうなるのかもさっぱりわからない。
危機に瀕するみどり環境 SDGsはどうした
記者は最近、胸にSDGsバッジをつけ、目標17項目に少しでも貢献できるように心がけている。折に触れ千代田区・神田警察通りのイチョウの街路樹伐採、神宮外苑まちづくり、都市公園、フェイクグリーンなど「みどり」について記事にしてきた。緑環境は危機に瀕している。
どれだけ軽視されているか。東京都の「マンション環境性能表示」制度で公表されている961物件の「断熱性」「省エネ性」「再エネ」「維持管理・劣化対策「みどり」の5段階表示の分布を以下に紹介する。
評価項目 | ★3つ | ★2つ | ★1つ |
断熱性 | 488 | 336 | 137 |
省エネ性 | 786 | 157 | 36 |
再エネ | 73 | 90 | 472 |
維持管理・劣化対策 | 420 | 386 | 155 |
みどり | 131 | 309 | 461 |
いかがか。「再エネ」もそうだが、マンションの「みどり」の取り組みが遅れていることが一目瞭然だ。なぜそうなのかは全物件を調べる必要があるが、マンションの立地(用途地域)と関係があるはずで、★1つは商業系用途、★3つは大規模再開発や第一種低層住居専用地域など住居系が大半を占めていると思われる。
★3つの物件をデベロッパー別にみてみた。共同事業や再開発物件をどう案分していいか分からないので正確ではないが、★3つを取得しているデベロッパーは20社くらいしかない。もっとも多いのは三菱地所レジデンスの27件で、住友不動産の24件だった。他では野村不動産と三井不動産レジデンシャルが続き、東京建物や積水ハウスも目立つ。この6社で過半を占める。供給がそれほど多くない〝5本の樹計画〟を推進している積水ハウスの〝健闘〟が光る。
カーボンニュートラル実現への道のり
カーボンニュートラル実現、建築物の木質化の具体的取り組みでは、長谷工コーポレーション「ブランシエスタ浦安」、三井ホーム「IZM(イズム)」モデルハウス、ナイス「Rita School」、ポラス「体感すまいパーク柏」、三井ホーム「MOCXION四谷三丁目」、三井不動産レジデンシャル「北千束MOCXION」、三菱地所ホーム「江北小路」、AQ Group「8階建て純木造ビル」、三菱地所ホーム「KIGOCOCHI(キゴコチ)」ショールーム(モデルルーム)、三菱地所レジデンス「上野毛テラス」、野村不動産&清水建設「溜池山王ビル」などを取材した。
道のりは容易ではないが、この種のつくる段階からCO2削減・固定化する取り組みが加速することに期待したい。ウッドデザイン協会と農水省・経産省・国交省・環境省が「建築物木材利用促進協定」を締結したのもとてもいいことだと思った。
各省庁へお願いだ。アメリカなどで普及している景観価値を含めた樹木・緑の定量的評価制度「i-Tree Eco」の日本版を開発していただきたい。都市計画に関する審議会の議事録を読むと、建ぺい率、容積率、建物の絶対高さなどの論議が中心で、この「i-Tree Eco」の視点が欠落していると強く感じる。環境経済学の出番だ。
2050年のカーボンニュートラルの実現を図る事業として、子育て世帯・若者夫婦世帯による高い省エネ性能(ZEHレベル)を有する新築住宅の取得や、リフォームを対象とした「こどもエコすまい支援事業」が創設された。予算額は1,709億円で、注文・分譲住宅は1戸当たり100万円、リフォームは60万円。3月から受付が開始され、9月末で予算額(注文・分譲住宅134,573戸、リフォーム294,031戸)に達したため完了した。結構な事業だが、期間限定ではなく、継続して行うべきだし、ZEHレベルに応じて補助額に差をつけてもいいのではないかと思う。
感動した5物件 はらわたが煮えくり返った千代田区の対応
野球大会を除き、年間取材を通じもっとも感動を覚えた建築物は「HARUMI FLAG」「麻布台ヒルズ」「グラングリーン大阪」「溜池山王ビル」「ノエン柏 逆井」の5物件で、逆にはらわたが煮えくり返るような怒りを感じたのは、千代田区・神田警察通りの道路整備に関する区の蛮行だった。「メディアは信頼できるか」の記事と併せて読んでいただきたい。
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〝ぶっ飛んだみどり〟だけでない 「グラングリーン大阪」タワマンに絶句(2023/10/12)
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