最大の収穫は、ウェーブを多用した低層部のファサードデザインだ。ロンドンオリンピックの聖火台を手掛けたトーマス・ヘザウィック氏(英国)によるもので、商業エリアのデザイナーとして参画している藤本壮介氏らによる内観もアール形状を多用していた。ウェーブ、アール形状は建築物の世界的潮流ではないかと強く感じた。
施設は、東京メトロ神谷町駅(直結)と六本木駅(2~3分)とをつなぐ開発区域面積約8.1ha、敷地面積約63,900㎡、延床面積約861,700㎡、オフィス面積約214,500㎡、緑化面積約2.4ha、住宅戸数約1,400戸。用途は事務所、住宅、店舗、ホテル、文化施設、インターナショナルスクールなど。就業者数約20,000人、居住者数約3,500人、想定年間来街者数2,500~3,000万人。施工は清水建設、三井住友建設、大林組他。2023年11月24日(金)に開業した。
スケールは約6.9haの東京ミッドタウン六本木を上回り、約12haの六本木ヒルズに匹敵する。64階建て「森JPタワー」の高さ約330mは、現在建設中の62階建て三菱地所「トーチタワー」の385mに次ぐわが国2番目の高さとなる。
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もっとも驚いたのは、トーマス・ヘザウィック氏のわが国初の〝作品〟という低層部ファサードデザインだった。アシンメトリックな曲線美を強調しているようで、部分的には伝統的なシンメトリックな技法を用いている。全体として大河のような、あるいは交響曲のような印象を受けた。外観だけでなく、壁や柱、内観デザインもアール加工が施されている。
神谷町から六本木一丁目までの緩やかな傾斜地のヒルトップに位置する64階建ての「森JPタワー」、54階建ての「レジデンスA」、64階建ての「レジデンスB」も圧迫感をそれほど感じさせないのは、低層部のデザインや足元のせせらぎを配した植栽計画にあるのではないか。稜線美が屹立している山の印象を和らげている富士山がそうだ。
このウェーブ、アール形状は建築物の世界的潮流ではないかと上段で書いたが、ここ数年、記者は曲線美を強調したマンションやオフィス・商業ビルをたくさん見学しているからだ。主だった記事を添付する。
もう一つ、気になるのはレジデンスだ。取材を申し込んだが断られた。森ビルはクローズドで販売するのだろう。記者はこれまでマンションの坪単価の最高峰は東京駅の坪3,000~5,000万円(建設されればだが)だと予想してきた。今回、麻布台ヒルズを見学して同クラスに格上げする。「うめきた2期」が上回る可能性があるが、街並みの美しさは現段階ではここが一番ではないか。
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