高齢の一人暮らしの親と子どもの同居を想定した、コスモスイニシアのリノベーションマンション「ヴィラヴェール武蔵新城」を見学した。2月中旬に販売開始し、すでに成約済み。契約者は企画意図と異なる夫婦二人だが、専有面積81㎡の圧倒的広さが評価されたようだ。
物件は、JR南武線武蔵新城駅から徒歩7分、川崎市高津区千年新町に位置する5階建て全60戸。専有面積は81.76㎡。売り出し価格は5,980万円(坪単価242万円)。竣工は1992年2月。分譲時の事業主は荏原製作所。
プランは、高齢の独り暮らしの親と成人した単身の子の二世帯が同居することを想定。12.8帖大のリビング・ダイニングは、親の部屋の間の間仕切りをなくし(スライドドア付き)、親の部屋と子どもの部屋は収納スペースを挟んで直接接しないように配置。洗面はL型とし、二人が同時に使用できるようにし、浴室は16×16サイスで引き戸を採用。子ども部屋にはシンク付きバーカウンターを設置。親と生活スタイルが異なっても、気兼ねなく過ごせるようにしている。6帖大のゲストルームも設けている。
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同社の2023年3月期のリノベーション事業は、売上高160億円(前期比5.3%増)、売上総利益率13.4%(同0.3ポイント増)、引き渡し戸数313戸(同42戸減)だ。単純計算すると、戸数は新築の427戸より114戸少なく、利益率は新築の22.5%より低いが、1戸当たり価格は5,135万円で、新築の4,699万円より高い。利益率が新築より低いのは、リノベ費用が掛かり、手間・暇を掛けるからだろう。
他社のリノベ物件は見ていないので比較は難しいが、同社の物件は結構見ている。ターゲットを絞り込む戦略が奏功しているとみた。近い将来、新築を逆転するかもしれない。
今回の物件もよく考慮されたプランだ。玄関・ホールの演出がいい。従前は尺モジュールだったのを、下足入れを犠牲にして幅約1.4mに広げている。住宅の顔である玄関の演出に力を入れているのは、同社のマンション、戸建ての十八番だ。リノベーションでも生かされている。
シンク付きの子ども部屋も納得だ。夫婦間でも別室を希望する人は一定数いるし、生活スタイルが異なる親と子には受けるはずだ。多目的に利用できるゲストルームの提案もいい。
購入者は企画意図とは異なる夫婦二人と言うことだが(これはよくあるケース)、圧倒的な広さと、武蔵小杉の新築のほぼ半値という価格が評価されたのではないか。従前は荏原製作所の社員寮と聞いたが、全体的にレベルは高い。天井高は2400ミリだが二重床。周辺は戸建て住宅街。駅からのアプローチも「江川せせらぎ遊歩道」を利用できる。取材の帰り、シラサギをみた。
同社が10年前に分譲した「イニシア武蔵新城」の記事も添付する。