青木茂建築工房は4月18日、 「(仮称)ドミトリー朝日台」リファイニング工事解体見学会を開催した。築39年の新耐震基準による共同住宅で、耐震診断により躯体に問題がないことからそのまま生かし、不適合箇所の是正、メンテナンス性の向上を図ることで、第三者機関による耐用年数評価で100年超の〝お墨付き〟を取得しているのが特徴。見学会には定員75人を超える78人が参加した。
物件は、都営大江戸線豊島園駅から徒歩5分、練馬区練馬2丁目に位置する敷地面積約901㎡、4階建て共同住宅27戸。建築年は昭和60年(1985年)。リファイニング工事の設計は青木茂建築工房(建築)・DN-Archi (構造)・シード設計社(設備)、施工は内藤建設。竣工予定は2024年9月。
既存建物は、新耐震基準の建物であるが検査済証の交付はされておらず、そのため、ガイドライン調査によって法適合調査を行い、不適合箇所の是正を行うとともに無届け増築となっていた屋根付き駐輪場を更新して増築することで検査済証の取得を目指す。
また、給排水管を一新し、PSスペースや床スラブ配管などのメンテナンスを共用部に移す計画にしたことなどにより、第三者機関による建物の耐用年数評価では100年超の評価を取得した。
見学会に臨んだ同社・青木茂会長は、「既存建物の耐震性に問題がないのは、施工を担当する(海がない)岐阜県の内藤建設のビルも同様、海砂を使っていないことも要因の一つと考えられる。この種の調査をする会社が少ないのが課題」などと語った。
同社・川村航大氏は、「耐震診断の結果、問題がないことが分かったので、躯体はそのまま生かしてプランニングした。第三者機関による耐用年数評価では、あと100年もつとのお墨付きももらっている」と話した。
物件オーナーは、「親父から相続したもので、建て替えも考えたが、ニュースで青木先生を知り、きれいで長持ちするものにしていただいた。賃料は10.5万円(28.05㎡)を予定している。入居者のほとんどは音楽関係の学生さん。防音性を担保する特別な工事は行っていないが、〝お互い様〟を周知徹底している」と話した。
見学会の案内が届いたのは4月8日の午前9時38分。見学時間は午前11時~、午後1時~、午後2時20分~の三部構成で定員は各25人。記者が参加申し込みをしたのは8日の10時過ぎ。すると12時41分に「満員御礼につき、『(仮称)ドミトリー朝日台』リファイニング工事解体見学会の参加申し込み受付を終了いたしました」のメールが届いた。
つまり、わずか30分の間に定員75人枠を突破したということだ。困った記者は、「見学会では青木新会長と秋山新社長の話が聞きたい。何とかならないか」と返事したところ、青木会長から直々に「午後の部にはわたしが参加するから」と許可を頂き、取材が実現した。
建築・設計業界のことはよくわからないが、ハウスメーカーやデベロッパーの現場見学会ではまずありえない。商業施設など関係者・一般の方も参加される見学会はともかく、メディア向けの見学会では多くて40~50人、少ないのは数人だ。
過去にもこのようなことはしばしばあった。どれほど同社の現場見学会が人気か、端的な例を紹介する。
コロナ禍の2020年9月15日に同社は「ヴァロータ氷川台」の見学会を三井不動産レジデンシャルと共同で行った。5部構成で満席の200人超が集まった。一方、同じ日には安藤忠雄氏が設計・デザインした日本財団「THE TOKYO TOILET」の一つ「神宮通公園トイレ」(あまやどり)のお披露目見学会が行われた。メディアは50人だった。記者の記事に対するアクセス数は前者が約2,500件、後者が約1,200件だった。
対象が関係者を含むのとメディア限定の差はあるにせよ、〝青木茂〟(秋山徹氏は継承するはず)の動員力のすごさがわかる。記者は〝予約が取れないリファイニング(refining)見学会〟と名付けることにした。
オーナーの〝お互い様〟もまたいいではないか。分譲も賃貸も居住者のクレームはつきものだ。〝風鈴がうるさい〟〝ハイヒールの音がする〟〝新聞配達のバイクの音が気になる〟〝排気口からニンニクのにおいがする〟…などだ。これは居住者どうしの人間関係が希薄で、供給サイドもまたそれを解消する取り組みを行わないからだ。多様性を認め合うようにすればこれらの問題は解決するはずだ。
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