既報の建築家・安藤忠雄氏(79)が設計デザインを担当した日本財団「THE TOKYO TOILET」の一つ、「神宮通公園トイレ」(あまやどり)が供用開始されたのに伴い、9月15日、安藤氏が約30分にわたり熱弁をふるった。約30社50人のメディア関係者が駆け付けた。
この種の独立型の公衆トイレを手掛けるのは初めてという安藤氏は、「2年前、話を聞いたときは費用もかかるし本当かな、大丈夫かなと思ったが、日本の〝売り〟の一つは清潔で美しいことにある。これをテーマに世界に発信したいと考えてデザインした。コロナを意識したわけではないが、風通しもよく、美しい公衆トイレとして世界に発信できたのではないか。宝石と同じように、小さいなりに大きな発進力があることを示せた。公園を見直すきっかけにもなる」などと語った。
他の作品については、「他の先生の作品は見ていないが、それぞれ緊張を持たれ全力投球されているのにびっくりした。話題にもなっているガラス張りは透けて見えたらどないすんねんと思ったが、その〝危険感〟がいいのではないか」と感想を述べた。
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記者は次のように質問した。
「先生、わたしはこれまで7か所のうち4か所を見学しました。先生のこのトイレが一番好き。日本だけでなく、世界の公園トイレのモデルに間違いなくなるはず。世界から同じものを作ってくれとオファーがあったらどうされますか。設計デザイン、著作権の帰属など権利関係はどうなっているのですか。外観ですが、縦格子はアルミ合金を採用されていますが(隈研吾さんが得意とする…これはぐっと堪えて)、木造では具合が悪いのですか。それと、こんなに美しいと、入った人が出て来なくなるんじゃないか、行列ができるトイレになるんじゃないかと心配ですが、いかがですか」
安藤氏は次のように答えた。
「世界からオファーがあったらどうするか、これは日本財団さんがどうされるかにもよる、ちょっと答えられない。アルミを使ったのは耐久性と衛生面を重視したから。木造は考えていなかった。入った人が出て来なくなったら、そりゃ困る」
世界からのオファーの質問を引き継いだ日本財団の常務理事・笹川順平氏は、「実はインド、ベトナム、中国、ヨーロッパなど世界中からオファーがあるが、決まっていない。今回のプロジェクトはメーカーのTOTOさん、施工の大和ハウス工業さんの力が合わさって実現したもの。メンテナンスも含めてよく検討しないと、そのまま輸出してうまくいくか不安もある」などと慎重な構えを示したが、まんざらでもなさそうだった。
「先生、コロナ気を付けてくださいよ」「コロナ? ついそこまで来よったが、逃げていきよった」
「大和ハウスさんもようやった。親分(社長)というもんは売上ばかり言うたらあかん。今回のように社員がやりたい仕事を取らなあかん」
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