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2020/09/16(水) 13:08

安藤忠雄氏を超えた? 青木茂氏×三井不 「氷川台」リファイニング見学会に200人超

投稿者:  牧田司

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「ヴァロータ氷川台」

 リファイニング賃貸マンション「ヴァロータ氷川台」の完成見学会が9月15日行われた。青木茂建築工房が設計監理、三井不動産レッツ資産活用部が総合企画、三井不動産レジデンシャルリースが商品企画・サブリースをそれぞれ担当するもので、見学会はメディアを除き5部(5回転)構成で、コロナ対策として1部当たり来場者を40人に制限したにもかかわらず、全て満席の人気となった。

 同事業は、昭和51年に建設された築44年の老朽化した共同住宅を建て替えることなく、新築の7割程度の建築費で新築並みにリファイニングしたもの。青木工房と三井不動産が共同で行うリファイニング事業としては5物件目となる。

 現行法に適合させるため、既存不適格となっていた塔屋を解体することで増築を可能にし、バルコニーの一部専有化、屋外廊下の屋内化、エントランスの増築、エレベーターの設置などを行ったのが特徴。

 内外装仕上げでは、南側外壁にカーテンウォールを採用し、従前外壁を500ミリ突出させて約2.5㎡の専用部を増築。さらに、袖壁と庇の内側は木調の金属板とし、専有部内の壁と天井を外壁と同じ色調のシナ合板とすることで外と内の連続的な演出するとともに、空間的な広がりを感じられるようにしている。

 三井不動産関係者によると、従前の賃貸は老朽化、間取りの陳腐化などで賃料は近隣相場より低く、入居率も芳しくなかったという。リファイニング後の賃料は新築相場の約95%を確保している。全19戸のうち9戸に申し込みが入っている。

 物件は、東京メトロ有楽町線・副都心線氷川台駅から徒歩3分、練馬区氷川台3丁目に位置する敷地面積約795㎡、建ぺい率33%(許容60%)、容積率109%(同200%)、4階建て延べ床面積869㎡の賃貸マンション。昭和51年完成。日影規制が既存不適格となっていた。

 リファイニング後の建ぺい率は47%、容積率は114%、延べ床面積は1,143㎡。令和2年9月完成予定。

◇       ◆     ◇

 リファイニング事例はかなり取材しているので、ちょっとやそっとではもう驚かなくなったが、ここにも目から鱗の〝建築の魔術師〟青木茂先生の技術がふんだんに盛り込まれている。

 最たるものは、塔屋を解体すること(これがどのような意味を持つかよく分からないが)で既存不適格要件を回避し、増築を可能にしたことだ。写真の南側の増築部分の面積は約2.5㎡だ。業界関係者ならよくご存じのはずだ。立地条件からすれば、分譲マンションなら坪単価は300万円をはるかに超える。仮に坪320万円としよう。つまり、2.5÷3.3×320=242万円相当の価値を増大させた。利回り5%として12万円だ。

 貸付面積を確保するため、南側にあった既存エントランスを北側に移動させ、しかも東京都建築安全条例17条規定(アプローチ部分は幅員3m必要なのに2.5mしかなかった)に適合させるためにエントランスアプローチの庇を南側まで延長させ遵法性を確保しているのもうなってしまった。

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before afte(袖壁・庇の処理と、外壁と内部空間の連続性を演出しているのが特徴)

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エントランスアプローチ(庇をつけているのがよく分かる)

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従前の建物

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 青木先生にお会いできるのを楽しみにしていた。今回の見学会は、メディア向けを除き5回転。コロナ対策として定員はそれぞれ40名に限定したが、全て満席となり、200名を突破した。制限しなかったら何名集まったのか。参加者は不動産や銀行関係者が中心のようだった。リファイニング人気は衰えを知らない。

 比較するのもどうかと思うが、この日(15日)は、添付した安藤忠雄氏が設計・デザインした日本財団「THE TOKYO TOILET」の一つ「神宮通公園トイレ」(あまやどり)のお披露目見学会が行われた。安藤氏が元気な姿をみせ、約30分にわたりコンセプト、建築美、都市計画などについて語った。メディアは30社で50人だった。

 安藤氏と青木氏とは知己の関係にある。青木氏は平成30年2月10日、首都大学東京特任教授の退任記念講演会を行った。青木氏は設計事務所を開設して間もない1970年代の後半、安藤氏が企画したヨーロッパ旅行に参加したのだが、エピソードとして次のように語っている。

 「車を買うために貯めていた100万円を、妻の了解を得て、安藤氏が企画したヨーロッパ旅行に注ぎ込んだ。旅行中、安藤氏からは『お前、なにも知らんなぁ、阿保やなあ』と言われ続けた。この前、お会いしたとき初めて褒められた。この間35年間を要した」

 それからまた時を経て現在、来場制限しても200人超集められる見学会などわが業界にまずない。安藤氏がこのことを知ったら〝俺を超えるような阿呆なことするな〟と驚愕するのではないか。リファイニングは世界の建築手法になるはずだ。

 青木氏は「コロナ? 月4週のうち3回はあちこち飛び回っている。かみさんとの濃厚接触? むしろ増えた」と語った。

 肝心なことを書き忘れた。青木氏は、リファイニングの普及・拡大を図るため一般社団を立ち上げ、認定書などを交付することで銀行などへの申請書類の統一化、業務の迅速化を行うと話した。今年11月に正式オープンするという。

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青木氏(平成30年撮影)

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