マンション管理業協会(理事長:高松茂・三井不動産レジデンシャルサービス会長)は5月16日、恒例の記者懇親会を開催。マンション管理適正管理評価制度の登録件数は4,370件(3月末で4,180件)に伸びており、今年度末までの目標1万件にあと10か月で約5,600件に迫ったこと、同制度で★5つのマンションは、市場価格より11%のプレミアムが生じていると分析した横浜市立大学の公開シンポジウム傍聴レポートなどを報告した。
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記者は2点質問した。一つは同制度について。昨年6月の総会後の懇親会で、同協会副理事長・小佐野台氏(日本ハウズイング社長)が「一言だけ皆さんにお願いしたい。2年後のマンション適正管理評価件数を1万戸にするには、会員354社の管理件数の1割で達成できます。ちょうど1割、たった1割(爆笑、拍手喝采)で達成できます」と呼び掛けた。今年はどのような挨拶を予定しているか聞きたかったのだが、小佐野氏は欠席されていたので、「(壇上の)皆さんの中で目標の1割を達成された会員はいるのか」と。
事務局は「1割達成はいますが、登録しているのは348社のうち62社」と回答。高松梨状は「一般会員への浸透が課題。今年の総会では1堀を達成した一般会員を表彰して披露したい」と話した(これに★5つ制度を採用し、未達の★1つか2つの大手会員会社の社名を公表するのはどうだろう)。
もう一つは、第三者管理者方式について(理事の方もメディアの方も「第三者管理」と認識しているようだが、国土交通省の方針に従って「第三者管理者方式」に改めたほうがいい)。おおよそ次のように質問した。
「国土交通省は近くガイドラインを公表するが、同省のアンケート調査結果によると、この方式を採用している会社48社のうち60%が報酬の設定を行っていないと報告している。これは問題。テレビショップで〝今すぐ申し込めば配達料無料〟と呼び掛けているのと一緒。担当者の業務を管理会社自らが評価していないことで、(時間とお金がかかる)理事会を軽視するものではないか。それと、居住者はこの第三者管理者方式をどのように受け取ればいいか」
高松理事長は「当社(三井不動産レジデンシャル)は新築マンションに採用しているが、きちんとフィーを明記している。既存マンションへ採用する場合は1,000円以下/戸にしている。無料はありえない。居住者のメリットは〝時間をお金で買えること〟」と語った。
また、同協会副理事長・谷信弘氏(長谷工ホールディングス・長谷工コミュニティ代表取締役会長兼社長)は「当社グループも積極的に第三者管理者方式を採用しているが、居住者が気軽に意見や提案ができるアプリが好評。管理受託とは別会計で、戸当たり1,000~2,000円」と話した。
高松氏や谷氏の話から、大手はどんぶり勘定にしていないのは安心したが、第三者管理者方式には問題が山積している。
監査や利益相反規定があいまいだとか、議決を経ないで行うことができる発注額を定めていない、マンションに欠かせないコミュニティ形成にどう対応するかなどだ。
第三者管理者方式の1戸当たり月額報酬が1,000~2,000円、10年間で120万円というのは悩ましい額だ。マンションの規模や管理組合の規約にもよるが、だれも無報酬の理事会役員になりたくない。理事としての職責を全うできない、お金を払ってでもいいから他の人にやっていただきたいという人が現れるかもしれない。しかし、理事は権利であり義務だ。これをお金に換算して売買することができるのかという問題もある。
高松氏は居住者のメリットとして「時間を金で買える」と話した。けだし名言だ。三井不動産レジデンシャルの2023年3月期の分譲マンションの戸当たり単価は8,554万円だ。これくらいの額のマンションを買える人にとって月1,000円を払えば、理事会役員にならなくてもいい安心感がずっと担保されるのなら、お安いものだ。
しかし、時間をお金で買えない年金生活者が多数派を占める高経年マンションはどうなるのかの疑問もわいたが、それ以上の質問は控えた。管理組合に取材すべきことだから。
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協会事務局の配慮だろう。懇親会のレイアウトがこれまでと変わっていた。従来は縦長の短辺に理事の皆さんが並び、長辺に記者が並ぶというものだったが、それが逆転していた。おまけにマイクまで席に用意されていた。各理事と記者団の距離はぐっと縮まった。視力が眼鏡をかけても0.2で、耳が遠くなった記者はとてもいいと思った。
しかし、質問者は記者をはじめみんな高齢者。何を聞いているのかさっぱりわからない人もいた。マンションは二つの老い、つまり建物と居住者の課題を抱えるが、これにメディアの老いも加わった。足腰が弱っているのはわかるが、テレビや新聞報道を元ネタにした質問はいかがなものか。知らないから聞くのはいいが、どのような回答が返ってくるかわからないことを聞いてはならないのは記者の基本だ。事前にしっかり勉強して、問題提起できるようにすべきだ。
記者が第三者管理者方式について質問したのは、懇親会に参加された方はお分かりだろうが、大和ハウス工業が第三者管理者方式をテーマにした業界向け勉強会を開くので、メディアとしてどのようなことに注目すべきかを尋ねるためだった。報酬が1,000~2,000円/月というのは大きなヒントになるはずだ。長文だが、国土交通省のガイドラインを記者の方々も読んで勉強会に臨んでいただきたい。