旭化成不動産レジデンスと丸紅都市開発が分譲中の「アトラスシティ千歳烏山グランスイート」を見学した。築52年の第一種低層住居専用地域に位置する旧耐震の「給田北住宅」の建て替え事業で、新耐震基準に適合させ、空地を確保したことから容積の緩和を受けている。東京都「マンション環境性能表示」制度で5項目満点の★15個を獲得している希少性の高いマンションでもある。
物件は、京王線千歳烏山駅から徒歩9分・仙川駅から徒歩14分、世田谷区給田三丁目の第一種低層住居専用地域・第一種住居地域(建ぺい率49.59%、容積率138.61%)に位置する敷地面積約12,032㎡、4階建て全248戸(非分譲104戸含む)。専有面積は43.88~86.35㎡。現在先着順で販売中の「杜ノ棟」の住戸(4戸)の専有面積は69.02~72.20㎡、価格は8,998万~9,498万円。坪単価は450万円。竣工予定は2025年7月下旬。設計・監理はNEXT ARCHITECT & ASSOCIATES。施工は大末建設。
現地は、1971年竣工の7階建て東京都住宅供給公社「給田北住宅」(171戸)の跡地。2012年に耐震診断を実施した結果、耐震性不足が明らかとなり、建て替えの検討が始まり、2018年4月、旭化成不動産レジデンスと丸紅(現丸紅都市開発)が事業協力者として選定され、2021年5月、一括建替え決議が成立、2023年7月、本体工事が着手された。
建て替えに当たり、新耐震基準に適合させ、空地を確保したことから容積率が100%から137%へ緩和された。この結果、階数は7階建てから4階建てになったが、戸数は増加し、延床面積もほぼ倍増した(マンション円滑法第105条による容積率の緩和=※)。
建て替え後の建物は、京王線線路側の南向き中心の「風ノ棟」121戸(非分譲48戸含む)と、その北側の中庭付きの「杜ノ棟」127戸(同56戸含む)の2棟構成。「風ノ棟」の70㎡中心の1階住戸(17戸(非分譲除く)は専用庭付き&ミストサウナ付き。「杜ノ棟」は中央に配した955㎡の中庭を囲むように配棟。道路、敷地形状に合わせて雁行設計となっているのも特徴の一つ。
主な基本性能・設備仕様は、二重床・二重天井、リビング天井高2450ミリ、食洗機、二重サッシ(風ノ棟の南側窓)、フィオレストーンキッチン・洗面天板、浴室タオル掛け、ソフトクローズ機能付き引き戸など。
旭化成不動産レジデンス開発営業本部販売部首都圏営業課課長・富永高弘氏は「世田谷区・調布市などの近隣にお住いの方が約7割、その他は沿線居住や京王線に縁のある方も多いが、外観デザインに惹かれて全く地縁の無い方にも多数来場いただいている。第1期として2月に『杜ノ棟』51戸を供給し47戸が成約済み。6月から『風ノ棟』の販売を開始します」と語った。
※マンション建替え円滑化法第105条では、耐震性不足による要除却マンションの認定を受けたマンションの建替えにあたり、一定の敷地面積を有し、市街地の環境の整備改善に資するものについて、特定行政庁の許可により容積率制限を緩和できることになっている。
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坪単価は450万円くらいではないかと予想していたが、どんぴしゃりだった。京王線は、小田急線などと比較して割負けしており、新宿から15分の調布ですら坪500万円に届かない(今秋分譲の小田急不動産の調布の物件は坪500万円を突破するはず)。
現地も確認した。電車の音は二重サッシで遮断できるはずだ。周辺はほとんど戸建て住宅。いいと思ったのはランドスケープデザインだ。設計が『アトラス調布』と同じと聞いて納得した。
もう一つ、東京都「マンション環境性能表示」制度で公表されている980件のうち「建物の断熱性」「設備の省エネ性」「太陽光発電・太陽熱」「建物の長寿命化」「みどり」の5項目すべて★3つの満点★15個を獲得しているのに注目している。
これまで満点の★15個を獲得しているマンションは、この物件のほか「三田ガーデンヒルズ」「Brillia 聖蹟桜ヶ丘」「HARUMI FLAG」「ヴェレーナグラン二子玉川」「ベイズ タワー&ガーデン」など14物件しかない。
また、「みどり」で満点を獲得する物件は、「太陽光発電・太陽熱」の66件に次ぐ160件だ。他はどうかといえば「断熱性」は450件、「省エネ性」は779件、「長寿命化」は539件だ。「ZEH」も大事だが、自然エネルギーを積極的に取り込むパッシブデザインの視点が欠かせないと思う。
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京王沿線居住歴約50年の記者と、生まれも育ちも京王線という富永氏(年齢は30代か)とこれまでの京王線沿線の優れたマンションについてしばし話し合った。京王井の頭線の「浜田山パークシティ」は別格として、記者が最右翼だと評価しているのは「桜上水ガーデンズ」で、このほかでは同社の「アトラス調布」「アトラス国領」や「グローリア芦花公園」などを上位に挙げる。
今回の「千歳烏山」は完成していないので何とも言えないが、京王沿線の第一種低層住居専用地域での大規模マンションは、URのタウンハウスは別として記憶にない。今回が初めてではないか。全体として「桜上水」に次ぐかどうかは完成を待って評価したい。同社のランドスケープが優れていたのは、屋上に森を作った同潤会の建て替え「アトラス江戸川アパートメント」(旧同潤会江戸川アパートメント)だ。
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