住友不動産は6月12日、「シティタワーズ板橋大山」と「グランドシティタワー池袋」のメディア向け内覧会を開催し、「板橋大山」は6月17日付プレス・リリースで同日から第1期販売を開始すると発表した。坪単価は平均で550万円、上層階は650万円になることも明かした。東池袋駅直結の「池袋」はすでに販売を開始しており、供給戸数は120戸、上層階の坪単価は700万円台の後半。「池袋」はともかく、記者はうわさでは聞いていたが、大山駅圏で坪550万円とは腰が抜けるほど驚いている。都心部だけでなく、準都心部も価格は〝青天井〟の様相を呈してきた。
「板橋大山」は、「大山町クロスポイント周辺地区第一種市街地再開発事業」として開発が進められているもので、同社は26階建て「シティタワーズ板橋大山ノースタワー」88戸(販売時期など未定)と、今回分譲する「シティタワーズ板橋大山サウスタワー」239戸を分譲する。街区全体で4,000㎡超の商業区域を整備する。
「サウスタワー」は、東武鉄道東上線大山駅から徒歩3分、板橋区大山町の商業地域/近隣商業地域/第二種住居地域(建ぺい率80%/80%/60%、容積率500%/300%/300%)に位置する26階建て全239戸(非分譲住戸54戸含む)。専有面積は53.27~72.01㎡、第1期は18階以上の27戸が対象で、坪単価は650万円。下層階を含む平均坪単価は550万円。竣工予定は2024年10月下旬。売主は同社のほかフージャースコーポレーション。設計は久米設計、施工は長谷工コーポレーション。管理は第三者管理者方式を採用する。
これまでのエントリー数は3,000件超、オンライン見学会への参加数は約500件、モデルルーム来場者は約300件。
主な基本性能・設備仕様は、二重床・二重天井、リビング天井高2600ミリ、サッシ高2100ミリ、御影石キッチン天板、ディスポーザー、食洗機、ワイドスパン(69㎡のモデルは約10m)など。共用施設はパーティルーム、屋上テラス、テレワークスペースなど。
「グランドシティタワー池袋」は、東京メトロ有楽町線東池袋駅から徒歩1分、豊島区南池袋二丁目の商業地域/第1種住居地域(建ぺい率80%/60%、容積率600%/300%)に位置する52階建て全878戸(非分譲住戸105戸含む)。7月下旬販売予定の第3期(戸数未定)の専有面積は45.44~104.03㎡。坪単価は平均700万円台の後半。竣工予定は2026年11月中旬。売主は同社のほか三井住友信託銀行。設計はINA・清水・前田設計共同企業体、施工は清水・前田建設共同企業体。管理は第三者管理者方式。
これまでエントリー数は約5000件、モデルルーム来場者は約600件。
主な基本性能・設備仕様は、長期優良住宅、ZEH-M Oriented取得、二重床・二重天井、リビング天井高2600ミリ超、サッシ高2100ミリ、御影石キッチン天板、ディスポーザー、食洗機など。共用施設は2層吹抜のグランドエントランスホール、ラウンジ、フィットネスルーム、スタディルーム、キッズ&ペアレンツスペース、スカイラウンジ、ゲストルームなど。
昨年10月から販売を開始しており、これまで120戸を供給済み。
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記者は、マンションの坪単価を読み違えることはあまりない。四十余年間、ずっと訓練してきたからだ。市場を読めなくなったらマンション取材記者として失格だ。
例外はないわけではない。その筆頭は東京建物「目黒」だ。記者はマックス坪550万円と読んだ(同業の記者は420~430万円くらいと言ったが、それが当時の相場だった)。ところが、実際は坪600万円超となった。都心部のその後の市場を劇的に変えたのは皆さんご存じだ。
しかし、今回の「板橋大山」は大幅に予想を外した。東武東上線大山駅圏のマンションはこれまで十数件は見学している。三菱地所レジデンスの「ザ・パークハウス 板橋大山 楠ノ杜」(坪355万円)を2021年末に見学したとき、住友不動産の物件は坪400万円をはるかに突破すると読んだが、まさか坪550万円になるとは夢にも思わなかった。まあ、北千住も坪500万円をはるかに突破しているのだから、ありえない単価ではないと思うが…。
「板橋大山」の平均坪単価が550万円、上層階が650万円になる意味は大きい。城西・城南エリアもそうだが、城東・城北エリアの準都心部も青天井相場を形成するのではないか。城北エリアの相場観を見直す必要を感じる。
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実に楽しい取材だった。物件説明を行った「板橋大山」担当の同社住宅分譲事業本部現場リーター・渡邊健太郎氏、「池袋」担当の同部新規営業所長・中村貴彦氏、マンション市場などを説明した広報担当のS氏が完璧の受け答えをしたからだ。
記者は、いま話題になっている「富士山」について渡邊氏に「御社の物件の西側には某社のタワーマンションが計画されていますが、その影響で富士山は見えなくなる可能性はないのですか」と質問した。渡邊氏は「そのマンションは西側で、富士山が見えるのは南西側ですので、サウス棟は影響を受けません。ただし、富士山が見える方向に高層建築物が建設される可能性は否定できず、将来にわたって富士山の眺望を保証するものではありません。そもそも、富士山の眺望を売りにはしていません。ノースタワーは当社のサウスタワーの日影の影響を受けます」と答えた。
完璧だ。「池袋」担当の中村氏とは値付けなどについていろいろ話した。中村氏は明言を避けたが、プライスリーダーの座を売り渡す気はないことをほのめかした。わが多摩センターは「とてもいい街」と褒めてくれたし、「多摩川」の豊かな緑についても意見の一致を見た。
モデルルームは、「板橋大山」は専有圧縮しているが、ワイドスパンがとてもいい。どこと比較するかだが、1坪違えばグロスは数百万円にもなる。「池袋」はデザインがいい。
S氏もまた非の打ちどころのない説明を行った。問題があれば足を引っ張ってやろうと待ち構えていたのだが、市場の見方は小生と一致した。
同社はまた、地元の「大山問題を考える会」の〝アーケード解体に反対! 強制立ち退きに反対!タワマン再開発に反対! 26号都道延伸に反対!〟についても説明。手続きなどに瑕疵はなく、「都道延伸は都の計画であり、当社のマンションとは直接関係はない」と話した。(記者は再開発に反対する人たちの考えは理解できないわけではないが、取材していないので何とも言えない)
マンション購入検討者にも一言。皆さんは「タワー」で物件検索をするそうだが、「住環境」「みどり」を加えていただきたい。資産性を重視するのはわかるが、タワー同士のお見合い、複合日影などを考えると、住環境が担保されている1低層のマンションは最高にいいと思う。
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