三井不動産は7月11日、ロジスティクス事業記者説明会を開催。2024年4月に公表した新グループ長期経営方針「& INNOVATION 2030」に基づく戦略について、同社執行役員ロジスティクス本部長・篠塚寛之氏は国内新規8物件の開発を決定し、国内外開発施設は75物件、延床面積約600万㎡、累計総投資額約1兆2,000億円に事業拡大すると発表した。が次の事業を強化すると説明した。主な重点事業は以下の通り。
①広場などの整備や、地域の防災拠点・交流の場の設置、ドローンの実証実験フィールドを併設するなど「街づくり型物流施設」の開発を推進
②DXを活用した物流の自動化や、物流ソリューションの提案・提供により荷主企業のサプライチェーン改革を支援
③冷凍・冷蔵倉庫の開発推進、データセンター事業の拡大、工場・インフラの設備など事業領域を拡大
④テナント向け「グリーン電力提供サービス」など物流業界における先駆的な環境配慮の取り組みを推進
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記者は、物流は素人だが、同社が行う事業説明会や施設見学会などは欠かさず見学している。強烈な印象として残っているのは2018年5月に行った事業記者説明会で、当時、同社常務執行役員ロジスティクス本部長・三木孝行氏(58)=現顧問=が「もはや、後発ではない。嫌悪施設ではない」などと約1時間40分にわたって熱弁をふるったことだ。
三木氏は「2012年4月に事業参入して7年目を迎えたが、当初10人足らずだったスタッフは60人体制になり、稼働施設は18棟、開発中は14棟、総施設数は32棟、総延べ床面積約270万㎡、累計総投資額は約4,800億円に達した」と語った。
あれから約6年。施設数、延べ床面積、投資額とも2倍以上に達した。篠塚氏も当時からロジスティクス事業に携わっていたはずなので、質問したいことが2つあった。
一つは、現在の物流業界で同社はどのような位置を占めるのか、アナログ業界と言われる業界にどのようなソリューションをもたらすかだ。この点について、篠塚氏はかなり詳細に説明し、「地域の誇りとなれるよう」「地域に愛される」などと語ったが、いま一つわからなかった。
もう一つは、物流施設が「嫌悪施設」でないのなら、業界全体として、われわれメディアもどう呼べばいいのかだ。「嫌悪施設」は法律用語ではなく、公益財団法人不動産流通促進センターが「物流施設」をそう呼んでいるに過ぎない。その一方で、建築基準法では「物流施設」は名称のいかんに問わず「倉庫」として定義されており、様々な建築規制が設けられている。住居系用途地域では小規模な施設を除き、倉庫の建築は不可だ。
しかし、同社の施設もそうだし、最近の物流施設には保育施設や事務所、レストラン、公共施設などが入居し、公園など広場も整備されている。(倉庫が多い準工エリアはほとんどなんでも可の地域)
そのような施設がどうして「嫌悪施設」としてひと括りにされるのか。記者が物流業界に身を置いていたら、不動産流通促進センターに削除を申し入れる。建基法の改正も必要だと思う。「物流施設」=「倉庫」ではない。マンションで人気の「駅近」だって、子育て環境としては最悪の「嫌悪施設」が林立しているではないか。
この点について篠塚氏は「我々がそう呼んでいるわけではないので…」と言葉を濁した。