旭化成ホームズは9月6日、メディア向け「サステナビリティ説明会」を開催し、代表取締役社長・川畑文俊氏、常務執行役員兼人事部長・岡前浩二氏、執行役員兼サステナビリティ企画推進部長・武藤一巳氏が質疑応答も含め1時間30分にわたって、加速する同社のサステナビリティ活動について説明した。
冒頭、川畑氏は「52年前の創業の原点『上質で長持ちする工業化住宅をつくる』は時代が変わった今もベースは変わっていない」とし、2019年に参加した「RE100」は、当初掲げた2038年目標を2023年5月に達成したこと、国際的な「2024 RE100 Leadership Awards」の最終選考に選出されたこと、「エコ・ファースト企業」に認定されたこと、ガバナンス強化のため外部有識者を2名招へいしたことなどを話し、「LONGLIFE」実現に向けて策定した「With Customer」「With Environment」「With Employee」「Our Integrity」を通じた「Our Integrity」の風土を醸成し、掲げた18のマテリアリティに対応すると述べた。
環境への取り組みについて武藤氏は、2023年度のZEH率はEcoレジグリッドの推進により88%、ZEH-M率は75%まで伸び、既存住宅への初期費用ゼロの太陽光発電システムの導入、再生可能エネルギーの活用例として電動建機の導入、代替燃料のトライアルとして次世代バイオ燃料「リニューアブルディーゼル」の実証を10月からスタートさせると話した。生物多様性保全の取り組みとして先日、同社と積水ハウス、大和ハウス工業3社のネイチャー・ポジテイブの実現に向けた連携について、シナジー効果が発揮でき、住宅の質的向上につながると語った。
ダイバーシティの推進について岡前氏は、社員一人ひとりが能力を発揮・成長し、グループで働くことに誇りと喜びを感じられる、従業員満足度を高める「Our Integrity」を推進するための具体的取り組みとして「火・水定休」から「水・日定休」への選択制の運用開始、女性採用比率40%以上、キャリア人材の採用の強化、タレントマネジメントシステム 「CaMP(Career Management Place)」の導入とキャリア開発プログラムなどについて説明した。
◇ ◆ ◇
環境への取り組みでは武藤氏は、同社と積水ハウス、大和ハウス工業3社が連携した生物多様性保全活動を紹介し、「ほかにも共創できることがある」と話した。具体的な取り組みとして資材の共同購入やサプライチェーンの可能性を示唆した。
これらの取り組みに期待したい。3社連携では、同社の「あさひ・いのちの森」の知見を活かした高木・中木・低木・地被植物の植栽手法を採用した「まちもり」物件では、「非まちもり」物件と比較して呼び込める鳥は約5.6倍、蝶の種類は約1.8倍に増加したデータがあるという。
ただ、これは凄い数字ではあるが、当然の数字でもあると思う。「非まちもり」にどのような植栽が施されているかにもよるが、樹木や草花が植えられていない住宅に鳥や蝶は飛来しないし、記者の住む多摩市も飛来する鳥や蝶は激減している印象を受ける。緑被率が高い多摩市でもそうだから、他の都市もそのはずだ。
同社を含むすべての住宅・不動産会社が生物多様性保全に向けた取り組みを強化すべきだ。同社の「まちもり」の採用率は2023年度実績で30.5%、2025年度目標は50.0%だ。同社の事業展開エリアは大都市圏が中心で、小さい敷地に緑を配するのは難しいとは思うが、何とか工夫して緑被率を高めてほしい。
ついでに%の話について。別の記者の方が同社の2025年度のお客様満足度目標85.0%は低いのではないかと質問した。武藤氏は「貴重なご質問」と答え、満足度の数値には「満足」の母数を除いた数値だと説明した。
小生はこの85.0%は極めて高い数値だし、これまた当然の数値だと思う。持家は、レディーメイドの分譲住宅と異なり、限られた予算内で営業担当者と何度も打ち合わせをしてプランを完成させるのだから、満足度が高まるのは当然だ。
一方で、欲望には限りがない。ああすればよかったと後で考えるのもまた当然だ。それが残りの15%という数値だ。しかし、十全の住宅などは存在しない。すべての希望を満たす住宅があるとすれば数億円でも足りないはずだ。
◇ ◆ ◇
取材が終わり、帰ろうとしたら、エレベータホールで同社野球部のかつての主力投手だったF氏にばったりあった。「CaMP」制度は軌道に乗っていると話した。
ここで同社の野球部について少し説明しよう。記者は、住宅・不動産業界だけでなく建設業なども巻き込んだRBA野球大会を30数年取材している。同社チームは、参加32年間で189戦165勝24敗、勝率.873。参加50~60チームの中で断トツだ。水曜・日曜ブロック総合優勝を14回、準優勝2回の最強チームだ。
同社チームは参加した最初のころは強豪チームに全然歯が立たなかった。強くなりだしたのは、旭化成ホームズ社長、旭化成副社長を歴任した平居正仁氏が旭化成ホームズの人事担当のころだから30年くらい前だ。当時の慶大野球部監督に直談判して野球部選手を獲得(入社)する道筋をつけてからだ。その後、同社野球チームには東京六大学や関西六大学の選手が毎年のように入社している。
何を言いたいかといえば、「野球選手は仕事もできる」ということだ。他のスポーツも同じだろうが、社員に求められるのは健康であり、体力であり、そして何事にも臨機応変に対応できる柔軟なものの考え方だ。同社野球部選手として活躍してきた人材は数十人どころか100人規模だろう。年齢は40代、50代になっているはずだ。
「CaMP」制度によって、野球部出身の社員の活躍の場は間違いなく広がる。前岡氏も否定しなかった。社内ベンチャーを加速させることで化学反応を誘引し、社内外のイノベーションにつながるのは間違いない。
F氏の顔には「俺は仕事もできる」と書いてあった。F氏のような人材は綺羅星のごとくいるのだろう。参考までに、平居氏へと、元プロ野球首位打者の長崎慶一氏へのインタビュー記事を添付する。
旭化成ホームズ・積水ハウス・大和ハウス 3社連携して生物多様性保全活動推進(2024/9/7)
「Essential Company」を目指して旭化成ホームズサステナビリティ説明会(2023/7/11)
RBA野球常勝軍団・旭化成ホームズ 育ての親の平居社長「野球」を語る(2013/11/20)
元プロ野球首位打者・長崎慶一氏(元大京コーチ)RBA25周年記念懇親会に出席(2013/11/16)