神奈川県防犯セキュリティ協会とリストグループの分譲戸建てを担当するリストホームズは11月28日、防犯に強い住宅をテーマにしたセミナーと、同協会「神奈川県防犯セキュリティ・ホーム認定」制度に分譲戸建てとして初めて認定された同社の「リストガーデン武蔵新城セキュリティ・タウン」現地見学会を行った。イベントには県警関係者やメディア4社など 30~40人が参加した。
セミナーで同協会理事長・齊藤賞一氏は「闇バイト強盗が激増しているが、住宅侵入を未然に防ぐのが大切で、侵入経路のほとんどを占める窓や玄関ドアからの侵入をどう防ぐかがポイント。防犯3原則である①領域性(入りやすい・入りにくい)②監視性(見えにくい・見えやすい)③抵抗性(やりやすい・やりにくい)を皆さんと共有したい」とあいさつした。同協会は、県行政が推進する「安全・安心まちづくり」に関わる分野で自治体や関連団体と連携して地域防犯活動を支援している団体。
リストホームズの住宅事業部、販売推進部、建設事業部の部長を兼任する伊藤駿氏は、「当社はデザイン性にこだわり付加価値の高い建売住宅を供給している。企画検討を開始したのは今年2月。今回は立地条件からして武蔵小杉などのマンションとの競合は避けられないと判断し、高額住宅の購入を検討される方はセキュリティに関する意識が高いことから、YKKAPさんとACCEL LABさんと連携し、ハード・ソフト両面で防犯対策を施し、かつ窓面をたくさんとり明るくし、デザイン性にもこだわった。協会認定と県警公認というのも大きなポイント。価格は相場より1,000~2,000万円超と突出しているが、販売を開始した今年5月からこれまで全10棟のうち9戸が契約・申し込み済み。9件のうち2件は認定を受けてからの申し込み。とくに『セキュリティ・ホーム認定』を受けたあたりから来場者が激増しており、10月までは4~6件/月だった来場者は11月以降30件と6.5倍に増加した。ありえない反響。皆さんがセキュリティに危機感を抱いていらっしゃるのに驚いている」と興奮ぎみに語った。
伊藤氏は来場者の声をいくつか紹介した。再現する。
・戸建ては絶対嫌。マンションは安全。でも、ここまで防犯対策を施しているのなら購入する(予算は5,000万円だったのをリセールバリューも考慮して7,000万円に引き上げたとか)
・セキュリティの高い戸建てを都内で探していたが、なかった。横浜の不動産会社から、川崎にはセキュリティの高い戸建てがある(この物件)と紹介されて、地縁は全くないが購入を決めた
「リストガーデン武蔵新城セキュリティ・タウン」は、JR南武線武蔵新城駅から徒歩14分、川崎市高津区千年字北浦に位置する全10棟。土地面積は70.05~70.73㎡、建物面積は108.46~129.99㎡、価格は6,490万~7,490万円。構造は木造3階建て。竣工は2024年10月。
防犯対策として、全戸の1・2階の開口部にYKK AP製の安全合わせ複層ガラス(CPガラス)を採用しているほか、外部からの侵入の可能性がある3階部分の窓にはCPガラスと防犯フィルムで対応している。
バルコニーの手すりは透明ガラスを採用し、侵入者が近づきがたく、かつベランダからの侵入がしづらい構造になっている。また、一部の雨樋には忍び返しも付けている。
IoT技術を導入し、自宅前に設置したインターホンの映像は24時間常時録画されるだけでなく、スマートフォンなどを通じてリアルタイム映像や録画を確認することができ、来客時はスマートフォンのみで対応することで、子どもによる誤操作を防ぐ。
入居者同士で協力し合い、安心安全で快適な生活を目指すため、自主協定「セキュリティ・タウン協定」を結ぶことも購入の条件としている。
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リストから取材の案内が届いたとき、セミナーだけなら辞退しようと思った。「闇バイト強盗」が激増しているとはいえ、戸建ての防犯対策は一にも二にも窓・玄関・勝手口からの侵入を防ぐことで、すっかり定着していると考えたからだ。
ただ、分譲戸建ての見学会も同時に行うというので、現場取材に「NO」を出さないのが記者の基本なので参加した。
書かなければならないことは、上段ですべて書いた。驚いたのは、当たり前のはずの防犯対策は分譲戸建てでは進んでいないことだった。CPガラスは30年も昔から販売されているはずなのに、YKKAP神奈川支社開発営業部長・内田文也氏は「注文住宅ではCPガラスを採用されるケースは多いのですが、当社が担当する神奈川県の分譲戸建てへの浸透はいま一つです」と語った。また、リストホームズもCPガラスを採用したのは今回が初めてという。
これは、デベロッパーもメーカーも、そしてわれわれメディアも反省しなければならない。防犯対策も同様だが、とくに窓は断熱・遮熱・防音面で大きな役割を果たす。それが疎かにされてきたとは…。この前の積水ハウスの「駆けつけ防犯サービス」に関する発表会はリアル会場に40人くらいのメディアが参加していた。今回はその10分の1。テーマの重要性ではなく、主催者の規模を重視する姿勢(大企業偏重)は如何なものか。
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驚いたのは他にもある。プロの泥棒は電柱や雨樋から易々と侵入するということだった。そのため、今回の物件は〝万が一〟のケースも想定してその対応策を施していた。
プロといえば、皆さんは吉村昭「破獄」(新潮文庫)をご存じか。独房の角の壁に背を向け両手両足を壁に押しつけ、天井まで上り、破獄した実在の投獄者を描いた小説だ。
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