「越谷市空家等対策に係る産官学民の連携協力に関する協定」共同研究報告会
埼玉県越谷市、早稲田大学リサーチイノベーションセンター、大里東自治会、ポラスグループは1月27日、「越谷市空家等対策に係る産官学民の連携協力に関する協定」に関する共同研究報告会を行った。報告会では、同大学学生1~3チーム(各2人)の空き家活用提案に対する参加自治会員約30人による〝人気投票〟も行われ賑わった。
会の冒頭、越谷市都市整備部建築住宅課調整幹・高森良浩氏は、空き家は全国に約900百万戸あり、47都道府県の空き家率がもっとも低いのは埼玉県の9.29%(約33万戸)で、同市は県内53市のうちもっとも低い志木市の5.22%、2番目の八潮市の5.32%に次ぐ3番目に低い6.22%(9,570戸)であると紹介。
平成27年度から令和6年12月までの空き家に関する市への通報は1,031件で、特定空き家認定は116件(うち86件が改善)、空き家になる要因の約6割が相続であることから令和4年に予防・抑制策として「住まいの終活ノート」配架開始し、セミナーなどを通じて所有者から寄せられた相談件数193件のうち106件で問題解消したこと、空き家発生の可能性の高い住宅は2,262件あることなどを報告した。
早稲田大学建築街づくりリサーチファクトリー・岡村竹史氏は、昨年11月に行った大里東自治会役員へのアンケート「あったらいいな こんな場所」では、気軽にお茶などが飲める、おしゃべりができる〝みんなの家〟や情報交換ができる場所、コミュニティを育むことができる店舗などを求める回答が多く寄せられたとし、自治会エリア内には18件の空き家があり、このうち市外在住が9人(県外2人、海外7人)に上るなど対応の難しさも指摘した。
この後、同大学修士1年の6人が3グループに分かれて、貸し本・古本屋などの「大里東 まちの図書室」、地域通貨を通じた新しい学童「MIX BASE」、多世代が利用できる「こしがや交差亭」をそれぞれ提案。参加自治会員約30人による人気投票の結果、「まちの図書館」が7票、「MIX BASE」が11票、「こしがや交差亭」が9票を獲得した。
中央住宅・髙橋重弘氏は、地区内にある約105㎡の土地に延べ床面積約115㎡の貸家(2戸)を建築した場合、総事業費は約3,147万円で、借入金3,000万円、返済期間30年(金利1.50%)だと表面利回りは6.6%になることなどを提案した。
参加者の一人で広報担当・髙橋さん(66)は、「空き家の利活用にはお金がかかる。自治会にお金はない。理想と現実には隔たりが大きい。予防策も大事。今後5年間どうなるのか見守りたい」と語った。
同協定は昨年7月に締結されたもので、2028年3月までに大里東自治会(約740世帯)区域内の空き家の利活用や予防・抑制などの試験的な取り組みを行い、空き家対策のモデルとなる仕組みづくりに寄与するのが目的。
左から高森氏、高橋氏、岡村氏、川村耕治・自治会長
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「空き家」問題の解決が喫緊の課題であることは分かるのだが、突き詰めていくと私的所有権の是非を問わなければならなくなるので、記者は敬遠・忌避することにしている。
今回の取材の誘いも断ろうと思ったのだが、何か新しい発見があるのではないかと受けることにした。
大正解だった。前日(26日)には、世田谷トラストまちづくりの空き家を活用した「おでかけひろば FUKU*fuku」を見学し、子ども連れの家族で賑わっていたのに嬉しくなったが、この日の学生さんの提案もとてもよかった。本好きの記者は「大里東 まちの図書室」が一番いいと思ったが、「MIX BASE」も「こしがや交差亭」も甲乙つけられなかった。
空き家を利活用するハードルは高いが、気前よく土地・建物を提供する篤志家が現れ、市が空き家を賃借し、固定資産税、都市計画税などの税金減免などを行い、利用者には無料でサービスを提供できるようになればいいのだが…。
岡村氏
「大里東 まちの図書室」を提案した山岸さん(左)と白鳥さん
「MIX BASE」を提案した大友さん(左)と澤村さん
「こしがや交差亭」を提案した西村さん(左)と井上さん
人気投票する参加者