「Landport 横浜杉田」
IHIと野村不動産は4月18日、地域との共生・協創もテーマの一つになっている大規模物流施設「Landport 横浜杉田」が竣工したのに伴うオープニングイベントを開催。〝幻の梅〟と呼ばれる地域の象徴である「杉田梅」の植樹式が行われたほか、キッチンカ―による防災食体験、消防・警察車両の乗車体験、物流施設見学、紙芝居などが行われ、多くの地域住民も参加した。
オープニングイベントで横浜市金沢区長の齋藤真実奈氏は「安心・安全の『防災協定』を締結していただいたのがとてもうれしい。このエリアは1,300社、3,600人が就業する市内随一の産業団地。区内には住宅、商業施設が集積し、歴史資産も残っています。居住者の永住志向も強く〝自慢の区〟です」と挨拶。
地域を代表して登壇した横浜市金沢団地協同組合理事長・榎本英雄氏は「50年前に埋立地に日本有数の団地が誕生したが、住環境は予想を上回るペースで変化した。交通問題への対処とともに、避難施設にしていただき大変ありがたいと」語った。
「杉田梅」普及の第一人者であり、「幻の杉田梅林 賑い復興“梅のまち杉田” 実行委員会」副会長の市原由貴子氏は「横浜杉田はかつて梅で栄えた街でした。その光景は歌川広重が描いております。大火、近年の宅地化などで梅の木は消えてしましましたが、その歴史、文化、名前は妙法寺の樹齢450年の杉田梅が示すように残っています。歴史・文化を継承していただくのは大変うれしい」と述べた。敷地内には樹齢10年超の成木が3本(接ぎ木)、苗木が30本植えられている。
主催者のIHI常務執行役員・二瓶清氏は「当社の旧会社・石川島播磨が飛行機などの工場として操業を開始したのは昭和12年(1937年)。2019年に閉鎖後は、地域貢献にも資するよう跡地利用を検討してきた。今後も継続して活動していく」と語った。
また、野村不動産取締役専務執行役員・黒川洋氏は「地域にとって思い入れの強い場所であることから、地域のために何ができるか考えてきた。施設は防災拠点とし、コミュニティ広場の整備、屋上菜園の整備、梅をイメージしたデザインなど、当社の物流施設ブランド『Landport』シリーズを代表する施設」と話した。
物件は、横浜シーサイドライン南部市場駅から徒歩4分(首都高速湾岸線杉田出入口680m)、横浜市金沢区昭和町に位置する敷地面積約71,034㎡、4階建て延床面積約163,409㎡。竣工は2025年3月末。設計・施工は五洋建設。満床稼働した。
施設は「オープン・シェア型物流施設」がコンセプトに、施施設利用者の×地域関係者×地域社会が豊かになることを目指す。敷地内に地域住民も利用可能な広場を整備し、区との協定による防災拠点を締結し津波避難施設とし、屋上菜園を設置している。
建物は免震構造を採用、BCP対策として72時間運転可能な非常用発電機、防災備蓄庫の設置など、サステナビリティの取り組みとして屋上の太陽光発電システムによるZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビルディング)の最高ランクを取得予定。
左から齋藤氏、榎本氏、市原氏
左から二瓶氏、黒川氏
植樹式(左から五洋建設・清水琢三社長、齋藤氏、榎本氏、二瓶氏、黒川氏、IHI物流・川田基浩社長、市原氏)
イベント風景
イベント風景
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物流施設を見学する機会は多くはないが、物流業界は2024年問題(時間外労働規制)への対応、アナログ的な商習慣の改善が喫緊の課題だとされている。
この日、メディアに配布された資料「持続可能な物流拠点の未来」(流通経済研究所)には、物流業界が抱える問題点を指摘し、「トラックドライバーは、2027年には24万人不足」「2030年には物流需要の約34%が運べなくなる」「ドライバーの賃金は、2030年には2022年比で27%、輸送費は同34%それぞれ上昇」し、「何も手を打たなければ、現状の物流体制は維持できなくなる懸念」が示されている。
他方で、「Landport 横浜杉田 ファクトブック」には、「物流施設への嫌悪施設イメージ」として「(多くのデベロッパーが)『地域共生型の施設開発』に目を向け始めているが、地域とのトラブルを避けるためのある種のカモフラージュ的な地域連携に留まっており、まだその成功事例はごく少数であり、その型化・横展開は道半ば」とある。(赤字は資料のまま)
そして、記者が取材するごとに考えるのは〝物流施設は嫌悪施設〟かどうかだ。〝嫌悪施設〟は法律で決まっているわけではなく、定義もない。不動産流通促進センターが地域などとのトラブルを未然に奉仕するためガイドラインで示したものだ。この問題について、関係者は考えないといけない。
いわゆる嫌悪施設と呼ばれるものは、われわれが生きていくために不可欠なものばかりで、働く人はエッセンシャルワカーと呼ばれる-この矛盾、不条理に対して「何も手を打たなければ、現状の物流体制は維持できなくなる懸念」が現実のものとなるのは必至だ。
今から7年前の2018年、三井不動産常務執行役員ロジスティクス本部長・三木孝行氏(当時)が「もはや、後発ではない。嫌悪施設ではない」と語ったのを忘れない。
成木の杉田梅を背景に記念写真
成木の杉田梅(みがたくさんなっていた。実は大きく酸味が強いので梅干しに最適とか)
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