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2025/07/24(木) 02:16

マンション円滑化法 容積緩和の適用第一号 旭化成不レジ「千歳烏山」販売好調

投稿者:  牧田司

杜ノ棟外観②.jpg
「アトラスシティ千歳烏山グランスイート杜ノ棟」

 旭化成不動産レジデンスは7月23日、全国初となるマンション建替え円滑化法第105条に基づく容積率緩和を受けた「アトラスシティ千歳烏山グランスイート」が完成したのに伴う記者内覧会を実施。同社開発第二事業本部マンション建替営業部長・島寛治氏、同社マンション建替え研究所所長・重水丈人氏、同社開発第二事業本部マンション建替営業部課長・酒井厚氏、同社開発第一事業本部・永谷摩鈴氏らが参加し、高経年マンションの建て替え問題に一石を投じるプロジェクトになることを強調した。この日は気温が35度を超える猛暑日となったが、20人超のメディアが駆けつけるなど、関心の高さがうかがえた。価格(坪単価450万円)は決して安くはないが、残りはわずかで好調な売れ行きを見せている。

 物件は、京王線千歳烏山駅から徒歩9分・仙川駅から徒歩14分、世田谷区給田三丁目の第一種低層住居専用地域※(建ぺい率50%前後、容積率140%前後)に位置する敷地面積約13,247㎡、4階建て「風ノ棟」121戸(非分譲住戸48戸含む)と4階建て「杜ノ棟」127戸(同56戸含む)の全248戸(同124戸含む)。専有面積は39.60~90.98㎡(従前は50.25~57.53㎡)。7月下旬に販売予定の「風ノ棟」最終期(2戸)の専有面積は70.83・71.18㎡、予定価格は8,600万円台・9,000万円台。先着順で分譲中の「杜ノ棟」の住戸(2戸)の専有面積は64.23・69.58㎡、価格は8,980万円・9,198万円。竣工予定は2025年7月末。売主は同社のほか丸紅都市開発。設計・監理はNEXT ARCHITECT &ASSOCIATES。施工は大末建設。

※このほか「杜ノ棟」の敷地の一部は第1種住居地域に位置するが、大半は1低層

 販売開始は2024年2月。これまで未分譲2戸を含み残戸数は4戸のみ。購入者は30代を中心とするファミリー層。従前マンション区分所有者の再取得予定は約61%の104戸。

 プロジェクトは、1971年竣工の東京都住宅公社の7階建て2棟「給田北住宅」(171戸)の建て替え事業。2011年の東日本震災によるひび割れなどの被害を受け、2012年に耐震診断を受けた結果、耐震基準を満たしておらず、設備インフラの老朽化、間取りの陳腐化などの課題があることから2016年に「再生推進決議」がなされ、2017年に事業協力者を募集し、2018年に応募があった3グループの中から同社と丸紅都市開発が選定され、2021年、団地の一括建て替えが決議され、2022年建て替え組合設立、2023年7月に工事着手された。工期は2年。

 建て替え決議は、所有者167人に対し賛成151人、非賛成16で可決。区分所有法第63条の催告により14人が建て替えに参加、2人は売渡請求権を行使した。

 内覧会に出席した島氏らは、建物が竣工してから高さ規制10mの第一種低層住居専用地域に用途指定され、既存不適格建築物になり、耐震不足、居住者の高齢化(多くは分譲開始時からの入居者)、コロナ禍、資材費・人件費高騰、アスベストの除去、不成形な敷地条件への対応、近隣住民への説明などに苦労したこと、敷地内貫通道路を設置することで建物の高さ規制が10mから12mに緩和され、2014年のマンション建替円滑化法改正による「容積率緩和」措置(全国で15件の申請のうち同社は5件)により指定容積率が100%から137~139%になったことが事業化につながったことを強調した。

鳥観図.jpg
鳥瞰図

杜ノ棟外観①.jpg
「アトラスシティ千歳烏山グランスイート杜ノ棟」

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「給田北住宅」

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中庭

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中庭

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中庭(中庭と屋上にはハーブがたくさん植えられている)

◇        ◆     ◇

 このマンションについては昨年5月に取材しているので、その記事を参照していただきたい。基本性能・設備仕様については省略するが、今回の取材では、東京都の「マンション環境性能表示」で満点の★5つを取得しているのは15物件しかなく、とくに「みどり」とデザインの出来栄えを重視して見て回った。

 「みどり」は、想像していた通りだ。とてもよくできている。同制度でこれまで「みどり」で満点の★3つを獲得したマンションはわずか160件しかない。各デベロッパーはここにもっと力を入れてほしい。

 デザインも秀逸。「風ノ棟」と「杜ノ棟」の間に幅員2.4~3.8mの歩道状空地を設け、建物を雁行させているランドスケープは、10年前に同社が分譲した「アトラス調布」を彷彿させた。中庭に、樹齢はかなり違うはずだがシンボルツリーとしてサルスベリを植えているのも同じだ。

 欲を言えば、もう少しマンション全体の外構などを見たかったが、一部は工事中でほとんどが契約済みであることなどから見学不可だったのは残念だった(お陰で汗だくにはならなかったが)。

 こんなことは書きたくないのだが、取材する側のメディアの知識不足が目立った。内覧会に20人超が参加していたのはとても嬉しく、同社は質疑応答に約40分もかけ、一つひとつ丁寧に答えたのはいいのだが、メディアの質問の大半は建て替えに関するもので、基本的なことを理解していない人が多すぎる。例えば、塔屋は高さ規制の12mに入るのか、投資需要はあったか、中庭は容積緩和の要件か、特急停車は販売上のメリットがあるか、再取得率は上げたいのか、小規模の建て替えは可能か…などだ。

 塔屋が高さ規制12mの対象になったら、4階建てなど絶対建たないではないか(日影規制など建基法には制限もあるが)。駅から徒歩9分で、価格(坪単価)も安くないマンションに投資需要があるわけがない。中庭を設置して容積が緩和されたらほとんどのマンションがそうなる。最寄り駅が各駅停車と特急停車駅では価格が異なるのは当然だ。再取得率は市場が決めること。建て替え事業は慈善事業ではない。(配布された資料は30ページに上るもので、説明も分かりやすく、小生は聞きたいことなどほとんどなかった)

 関係者ですら経験したことがない高値圏に突入しているのでやむを得ない部分もあるが、価格(坪単価)は高いのか安いのか判断できない人もかなりいた。小生は坪450万円は高いような気がするが、他の沿線の物件や基本性能などを考慮すれば、こんなものかとも思う。残り4戸というのが何よりも消費者に理解されていることを物語っている。

 興味深い話も聞けた。重水氏が質疑応答で話したことだと思うが、居住者の中には従前マンションを購入して以降50年間一度も引越しをしたことがない方も多く、不用品の処分についての相談も多く受けたとか。リバースモーゲージを利用された方も若干あったようだ。また、酒井氏は建築費・工期について「仮にこれから着工した場合、肌感では工期はさらに1年くらい伸びたのではないか」と話した。建築費の高騰、工期の長期化は他のデベロッパーでもよく聞く。お手上げ状態のようだ。マンション購入検討者の方も覚悟した方がいいと思う。価格上昇は序ノ口の段階だと思ったほうがいい。

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エントランスホールの坪庭(石は栃木県那須産の芦野石

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屋上の緑化(ハーブ類がたくさん植えられていた)

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雁行デザイン

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植栽帯 

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