「論より証拠のエアロテック」
住友不動産を中心とする既存住宅の「断熱・省エネリフォーム推進タスクフォース」発足式が7月30日に行われたその日に旭化成ホームズが、その翌日に三菱地所ホームがそれぞれ「全館空調」に関するプレス・リリースを発表した。住友不動産のイベントを意識したわけではないだろうが、それぞれ紹介する。
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7月30日付の旭化成ホームズのリリースは、「全館空調採用者と非採用者の住環境意識・満足度調査」結果を報告したもの。対象となったのは、首都圏在住の30-79歳、10年以内に戸建を新築した人297人(全館空調採用者97人、全館空調非採用者200人)。
調査結果によると、全館空調を採用した理由の第1位は「家中が1年中快適な温度に保たれるから」が51.5%、「清潔な空気環境を確保できるから」が38.1%、「各部屋の温度差が少ないから」が35.1%だった。
一方で、全館空調を採用しなかった理由の第1位は「設置費用が高いから」が49.0%、「光熱費が高いから」が37.0%、「メンテナンスが大変だから」が31.5%だった。
採用者の住まいの満足度は約95%、温熱環境への満足度は約80%と非常に高い数値を示し、温熱環境満足度の差が大きいのは「玄関」「洗面所・脱衣室」「廊下」で、非採用者と30ポイント以上の顕著な差が出た。
現在の住まいの全体的な満足度では、「非常に満足している」と回答した採用者は40.2%、非採用者は16.5%だった。「やや満足している」と回答した採用者は39.2%、非採用者は52.5%だった。「どちらともいえない」「あまり満足していない」「まったく満足していない」と回答した採用者は20.7%、非採用者は31.0%だった。
また、採用者に対する「光熱費が抑えられる」「乾燥しにくい」といった質問に対して、「あてはまらない」「まったくあてはまらない」は18.6%、「乾燥しない」は16.4%となり、全館空調の課題として認識されているとしている。
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7月31日付の三菱地所ホームのリリースは、同社の全館空調システム「エアロテック」を利用している顧客の声の紹介と、それを裏付ける実測データを紹介するWEBコンテンツ「論より証拠のエアロテック」に関するもの。
「論より証拠のエアロテック」のWEBページでは、約10項目(室内温度、粉塵、冷房除湿、冷暖房費、臭気、換気、気流、睡眠、故障のしにくさ、その他)の価値について利用者の声を紹介し、それを裏づける最新の実測データ(エビデンス)を年4回にわたり公開していくとしている。
また、利用者の自宅に設置したセンサーにより、室内の温湿度をリアルタイムで可視化するコンテンツを9月に公開する。
同社は、1995年に「エアロテック」を開発し、現在は同社の新築注文住宅のエアロテック採用率は97.3%に達しているとしている。
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この2社のリリースが明らかにしているのは、全館空調に対する満足度が極めて高いことと同時に、採用者と非採用者の割合はほぼ1:2に留まっていることだ。
「断熱・省エネリフォーム推進タスクフォース」の発足式でも、断熱・省エネ窓は「消費者への情報発信や普及が不足しており、認知度が高くない実情」が指摘された。全館空地用もその良さは理解されているのに、採用者は3人に1人の割合だ。
断熱窓も全館空調も、全体の建築コストに占める割合は最大で10%に満たないはずだが、この壁を乗り越えるためには、その快適性をわかりやすく説明するほかない。
それともう一つ考えないといけないのは、自らの思い通りに建てられるはずの戸建てオーナーは、現在の住まいに対して「どちらともいえない」「あまり満足していない」「まったく満足していない」と回答した非採用者は31.0%、採用者も20.7%いるということだ。
人間の欲望は尽きないし、より優れた家を建てようと考えるから戸建て市場も成り立つのだろうが、非採用者の実に3割以上が築10年もたたないのに満足できないのは悲しむべきだ。
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住まいの快適性は、基本的には広さ-記者は4人家族で30坪(100㎡)が標準だと思う-のほか耐震性・耐火性・断熱性・省エネ性などの基本性能に通風・採光、遮音、ユニバーサルデザイン、天井高、家事動線、空気環境、緑環境…たくさんあり、何を重視するかで人それぞれだろうが、これらを総合的に評価し、費用対効果も含めて可視化(金額換算)できないかをずっと考えている。
そこで、このことをChatに質問した。Chatは、快適性の各要素(断熱性、通風性、家事動線など)を項目ごとにスコア化し、QOL(身体的、精神的、社会的、文化的に満足できる豊かな生活)とLCC(建物の企画・設計から建設、運用、維持管理、解体・廃棄までの全体にかかる費用)を掛け合わせれば、「快適性評価」の設計が可能であり、将来的には住宅評価ソフト(例:ホームズ君、i-Tree、BIMベースのLCCツール等)を使うのも手だと瞬時に答えた。「i-Tree」を盛り込んでいるのがいい。国も今すぐこの「i-Tree」評価制度を採用すべきだ。「緑環境」はZEHと同レベルの価値があると思う。
どこがこの総合的「快適性評価」マトリクスを開発するか。
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