優良ストック住宅推進協議会(スムストック)表彰式・懇親会(九段会館テラス)
優良ストック住宅推進協議会(スムストック)は8月29日、総会後に記者会見を開き、2024年度のスムストックの活動状況について報告し、スムストック住宅販売士の成績優秀者表彰と懇親会を行った。
2024年度(2024年7月~2025年6月)のスムストック成約件数は2,262件(前年度比5.2%増)となり、過去最高を達成。市場流通量に対する協議会会員10社による成約捕捉率は19.7%だった。2008年からの累計成約件数は21,989件となった。スムストック住宅販売士の累計登録者は8,726名で、仲介実務者は1,509名。買取再販は406件(前年度は374件)で堅調に増加している。
安心R住宅のスムストック比率(2024年4月~2025年3月)は「リフォーム済(買取再販)」は61.3%(前年度52.4%)、「リフォーム提案」は99.5%(同98.6%)となり、各団体提出合計数1,935件のうち71.4%をスムストックが占めた。
2025年度の主な取り組みは、買取再販を含む既存住宅流通の推進を強化し、捕捉率25%を目指すほか、スムストックの「安全・安心」をさらにレベルアップし、認知度向上を図る。
2025年6月に行った協議会会員10社の戸建てオーナーと住宅購入検討者を対象(各621サンプル)にしたスムストック認知度ブランド調査結果によると、「10社戸建てオーナー売却検討者の認知度は「よく知っている」が25.0%(2024年10月は25.6%)「一部の内容は知っている」が32.1%(同26.3%)、「ブランド名、その内容も知らない」が42.9%(同48.1%)だった。
記者会見に臨んだ芳井敬一会長(大和ハウス工業代表取締役会長)は、「スムストックの認知度はまだまだ低い。土地と建物の価格を流通市場でオープンにしているのはスムストックだけ。これを当たり前にし、価格に反映できるかどうかがカギ」と語った。
来賓として登壇した国土交通省住宅局長・宿本尚吾氏は「国交省では来年3月に改訂を予定している住生活基本計画では、循環型の住宅市場の形成を目指し議論を進めているが、何よりも既存住宅流通・リフォーム市場を活性化させるためには、適切に維持・管理された住宅が適切に評価される仕組みを作ること、その環境整備が大変重要だと考えている。スムストックにはその先導的な役割を担っていただいているのは大変意義深い。また、国交省は既存住宅の安心・安全の取引き環境を整備するため安心R住宅の普及促進に取り組んでおり、貴協議会にはスタート時から協力していただいていることに改めて感謝申し上げる」と挨拶した。
芳井氏
宿本氏
竹下氏(左)と織田氏
◇ ◆ ◇
2024年度スムストック住宅販売士表彰制度で、813人のエントリーから総合ランキング1位と特別表彰(買取再販ランキング2位)も獲得した、中四国セキスイハイム不動産流通営業部山口営業所シニアアドバイザー・竹下満士氏(61)の懇親会でのスピーチ全文を以下に紹介する。竹下氏は、「住宅販売士」だけでなく「一級建築士」「宅地建物取引士」の資格を持っている。「士」の数ならたくさん持っている業界人は少なくないが、名前に「士」が付く人に会ったのは初めてのような気がする。
「この度はスムストックランキング1位ということで、このような場にお招きいただき、ありがとうございます。私は今年、中四国のセキスイハイムに入社して40年目を迎え、昨年3月に役職定年になりましたが、有難いことに引き続き不動産事業にて雇用いただけることとなりました。残り少ないセキスイハイム人生を何が出来るか考え、これまでお世話になったグループ会社である、新築のハイムやリフォームのファミエス、更にはお家をお建て頂いたオーナー様に対して、何らかの形で恩返しができないかと思っています。
その一つは、不動産としての立場を超えてグループ社員皆様とコミュニケーションを取り、これまでの40年間で培った知識を伝えることを心掛けており、積極的にお客様のところへの社員同行することに努めています。その甲斐あって、今では気軽に社員の皆様から声を掛けていただき、相談や同行依頼をしてくれる状況を作ることが出来ました。
このような日々の積み重ねが、ハイム・フェミエスの社員の皆様からの紹介に大きく役立っていると思います。また、成果の秘訣として、お客様のお家を拝見して査定を行う際、それぞれの年代や背景や商品特性を理解しているため、お家を建てて頂いた当時のお話や、お家に対しての思い入れなどを察することができ、よりお客様に寄り添ったご提案やアドバイスが出来ているのではないかと思います。
実際に、お陰さまでこれまで携わらせて頂いたお客様からは、売却価格等に関わらず『任せてよかった』とのお声を頂いています。今後は会社とスムストックの成長を見据えて、社内での若手育成を第一目標に活動をして行きたいと思っています」
竹下氏は「ハイムの家のことは熟知している。成約件数は均すと月に2~3件、とても忙しいが苦にならない。山口県は広いですから(中四国セキスイハイム不動産の事務所は周南市)、車で移動する距離は月に4千キロです(地球1周は4万キロ)」とも語った。
竹下氏
総合ランキング2位で、特別表彰(買取再販ランキング1位)のパナソニックホームズ不動産関東住宅流通センター所長・織田星児氏(41)は、2年前に総合1位に輝いており、昨年は3位。今年(2024年度)は1位返り咲きを狙ったが、惜しくも2位。しかし、買取再販では1位を獲得した。懇親会のスピーチでは「水回り部分の設備を一新するのは当然として、新しいチャレンジとして建具・家具、フローリングなどは補修で対応することでコストを抑制し、お客さまにも経年による変化を楽しんでいただけるようにした。そのようなニーズがあることが確認できた。これからは住宅全体の付加価値を向上させることを目指す」などと語った。成約件数は約15件で、安心R住宅の取り組みが高く評価されたようだ。
織田氏
総合4位のセキスイハイム不動産の東京流通支店流通営業所千葉流通営業店店長・小林辰徳氏(43)は、「父が原辰徳ファンで付けた名前。千葉はロッテファンも多いが、名前はお客様にすぐ覚えていただけるので、成績がいいのはほぼ父のお陰。私自身は埼玉県出身で、野球に興味はない。営業店舗は総勢4人で少数精鋭」と話し、同社関係者らと「ハイムはどこにも負けない」と豪語・爆笑した。
「ハイムはどこにも負けないぞ」(右端が小林氏)
最年少受賞者で総合9位に入賞した旭化成不動産レジデンス不動産流通本部首都圏営業部神奈川営業課・近藤千尋氏(25)は「入社3年目。神奈川県のヘーベルハウスは、東京と違ってお客様に手が届く価格帯の物件が多いのが特徴。昨年の成約件数は波があるのですが月平均4件。(仲介は平準化が課題だが)いえ、私は波があるほうが好き。働くときは働き、休むときは目いっぱい休む」と語った。(若いからそのような芸当ができる)
近藤氏
前回総合1位で、今回は総合3位だった積水ハウス不動産・山城屋博規氏からは話を聞くことができなかったが、今年度は1位を狙うそうだ。
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記者はこれまで年間100~200件の分譲マンションや分譲戸建てを見学してきたので、それらが流通市場に出ればどのようなレベルか分かるし、分譲開始時の売主・ブランドによってもおおよその基本性能は推測できるのだが、個人住宅は全く分からないし、捕捉率約20%が高いのか低いのかも判断がつかない。
ひとつだけ確かなのは、10社の営業・販売体制に課題があることだ。全表彰者26人を会社別でみると、もっとも多いのはセキスイハイム不動産の11人で、積水ハウス不動産が6人、パナソニックホームズ不動産が4人、旭化成不動産レジデンスが2人、トヨタすまいるライフが2人、大和ハウス工業が1人。住友林業、ミサワホーム、三井ホームの3社は表彰者が一人もいなかった。会見後の懇親会で芳井氏は「自分が頑張らないとあきまへん」とはっぱをかけた。
いまデベロッパー各社は顧客の囲い込みに注力しているが、かつて分譲事業には〝事業離れ〟という言葉があったように、早く売って顧客との縁を切るのに躍起になっていた。これに対してハウスメーカーは〝成約してからが顧客とのつきあいの始まり〟のはずだ。どうしてこのような会社による温度差が大きいのか全く理解できない。
だが、しかし、捕捉率を劇的に向上させることは可能だと思う。前段で紹介した竹下氏など受賞者(現場)の成功事例を経営者やスムストック住宅販売士が徹底して学ぶことだ。成約件数だけなら、デベロッパー系の不動産流通会社にはもっと多く成約する社員はたくさんいるだろうが、建築技術に精通している人はそういないはずだ。これは大きな武器になる。(酒も入っていたためか、成績優秀表彰者のスピーチは聞きづらかったが、芳井氏は壇の近くに寄り、しっかり聞いていたのが印象的だった)
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