東京カンテイは12月8日、2024年の新築マンション年収倍率は、全国平均で10.38倍(平均年収466万円)と前年から0.29拡大し、もっとも年収倍率が高かったのは東京都の17.00倍(平均年収636万円)で、地方圏でも9倍台や10倍台のエリアが前年の16→21に増加したと発表した。
調査は、各都道府県で分譲された新築マンション価格(70㎡換算)を平均年収で除し、新築価格が年収の何倍に相当するかを算出したもの。年収は内閣府発表の「県民経済計算」を基にした予測値を使用している。
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記者は同社の恒例となっているマンションの年収倍率リリースに異論をはさむ意図はないが、社会・経済状況が一変した今日、概念があいまいな「年収」と住宅価格を比較して高いか安いかを論じる意味はないと思う。
そもそも「県民経済計算」の「一人当たり県民所得」とは、居住者(個人、法人企業、行政機関)を対象とした県民所得を県の総人口で割って算出した額で、個人の所得水準ではない。
また、バブル崩壊までのマンションは、専業主婦層が圧倒的多数派を占めていたファミリー層をターゲットにしていたが、バブル崩壊後の1990年代には専業主婦層と共働き世帯層の比率は逆転し、現在では共働き世帯のペアローン利用比率は3割以上に達している。一人当たり年収ではなく、住宅購入需要層の世帯年収を基準にすべきではないか。
さらに言えば、住宅ローン金利と購買力は不可分だ。住宅ローン金利は、バブル崩壊までは5~6%が一般的だったのに対し、現在は変動型なら1%を割っている。バブル崩壊前の住宅価格と住宅ローン金利をそのまま踏襲して、年収と単純比較する意味はないはずだ。
記者は、地域の経済力、生活利便施設の集積度や緑環境、歴史・文化など総合的な住環境と住宅価格水準を比較すべきではないか。その意味で、LIFULL HOME'S総研の「Sensuous City(センシュアス・シティ)」の概念は参考になると思う。住宅価格の価値を測る新しいモノサシをだれか開発しないか。
誰のための調査か森記念財団「日本の都市評価特性」とLIFULL「官能都市」比較(2025/10/11)
「Sensuous City(センシュアス・シティ)[官能都市] 2025」発刊LIFULL HOME'S(2025/9/25)

