先に行われた地価公示に関する大和ハウス工業の記者レクチャー会で、同社マンション事業本部事業統括部部長・角田卓也氏は、同社の「プレミストタワー船橋」第1期250戸のうち235戸が成約し、「プレミスト鶴見花月総持寺ステーションフロント」 も大きな反響を呼んでいることを紹介する一方で、「山手線外のエリアでは販売が鈍化している案件もある」「郊外エリアにおいては建築費の高騰を販売価格で吸収できずに売却が低迷しているマンションが散見される」とし、〝優勝劣敗〟を口にした。
ここでは、角田氏が語った〝販売低迷〟〝劣敗〟マンションについて書くことにする。記者も今後は優勝劣敗、企業間格差が鮮明になると見ているからだ。
まず、首都圏マンションの着工戸数・供給戸数・完成在庫に関する別表を見ていただきたい。
着工戸数は、近年では2012年の約7万戸をピークに漸減し、2025年は約4万戸へ減少した。一方、不動産経済研究所調査による供給戸数は、2013年の約5.6万戸をピークに減少の一途で、2025年は約2.2万戸へ約6割減少した。
ここで注目しなければならないのは、着工戸数と供給戸数の乖離(カバー率)だ。このカバー率についてはこれまでも何回か記事にしてきたので詳細は省くが、カバー率は2009年の90.0%(推定)からアップダウンはあるものの低下し続けており、2024年は45.1%と50%を割り込んだ。2025年は54.5%に回復したが、市場をリードしている東京都や神奈川県は3~4割台まで落ち込んでいる。このズレを見ないと市場を見誤ることになる。関係者も一般の方々も、市場規模の半分しか情報が得られていないということだ。
次に完成在庫について。かつて大量供給時代は「完成在庫」=「悪」だった。収益にもろに響いたからだ。ところが、近年は様相が変わった。中小規模物件では「竣工販売」が目立つように、右肩上がりの市場では競合関係なども加味し、販売時期を遅らせたほうが販管費を抑えられるので利益率を上げられるケースも少なくない。〝売り物がない〟というのは顧客のニーズに応えられないということでもある。住友不動産が高い利益率を維持しているのはこの戦略に基づくものだと記者は考えている。
具体的な在庫率だが、着工戸数に対する完成在庫率は着工が減少しているにも関わらず、この3年間は上昇しており、2025年末は9.1%になっている。リーマン・ショック後の2009年の12.0%に次ぐ数値だ。先にも書いたように、顧客のニーズに応えるためには年間供給量の1か月分(8.3%)の在庫を抱えたほうがいいという考え方も成り立つが、大手デベロッパーの完成在庫が極端に少ないのは、かつての悪夢の「完成在庫」=「悪」と考えている社長が多いからかもしれない。
しかし、供給戸数に対する完成在庫率は、2022年末の8.0%から2025年末は16.7%上昇している。これは完全に危険ラインだ。これ以上悪化したら利益は確保できない。
いったい、どこが完成在庫を抱えているか。ここが問題だ。気の毒なので、具体的物件を上げないが、ヒントは販売部隊を持たない大手(系)会社だ。ここに在庫が偏在していると見る。駅から距離がある、生活利便施設が乏しい、駅には近いが駅力が弱い物件では、建物が完成したにも関わらず全然進捗しておらず、〝新価格〟も登場している。しかし、その効果には疑問符が付く。価格競争力の問題ではなく、そもそも需要を見誤った目利き力の問題だからだ。根雪のように残る可能性もあるのではないか。郊外部の中古マンションは坪単価200万円くらいで推移している。中古との競合関係に入るし、新築戸建てにも負ける。
今後、このような物件が続出する可能性が高い。住友不動産代表取締役社長・仁島浩順氏が地価公示コメントで「新築マンションの供給戸数は年々減少しており、中古取引や既存住宅のリフォームに対する需要が拡大している」と語っているように、買取再販市場がもう一段の盛り上がりを見せるのではないか。
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