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2017/06/06(火) 11:53

世の中の風と流れを活写せよ Webとの融合目指せ 業界紙の役割

投稿者:  牧田司

 これまで数回にわたって「週刊住宅」の破たんや業界紙のあり方について書いてきた。業界関係者の声を伝えた。これで最後にする。

◇       ◆     ◇

 国土交通省の記者クラブに投げ込まれるプレス・リリースや各社からメディア向けに発信される情報は毎週100本くらいに達するはずだ。これほど集まれば、コピー&ペーストすれば紙面は埋まる。果たしてそんな記事ばかりを書いていないか考えてみる必要がある。もしそのような記事ばかりを書いていたら何年たっても一人前の記者にはなれない。書いた端から本人も忘れてしまう。

 記者が気になるのは、ハウスメーカーやデベロッパーなどがわざわざ発表会や見学会を開いても、そのとき配布されるリリースを引き写したり話の内容をそのまま紹介したりする記事が少なくないことだ。例えばマンションの記事。読者が知りたいのは設備仕様レベルや価格、ユーザーの反響などだが、主催者が「価格は未定」と語ればそのまま「価格は未定」と書く。これは記者として失格だ。主催者の伝えたいことを過不足なく書くのは当たり前だが、読者が知りたいことに迫らなくてはわざわざ発表会に出向く意味がない。客観的な記事などありえない。記者の主観による記事だから読まれるのだ。勘違いしていないか。

 プレス・リリースの扱いも考えたほうがいい。毎日発信される情報はほとんどの場合、ホームページで閲覧できる。幸い、不動産流通研究所のWeb「R.E.port」は毎日丹念に拾って記事にしている。解説記事は少ないが、これを読めば日々の業界の動きは分かる。記者は重宝している。舌を巻くほど要領よくまとめられている記事もある。

 Webについて。日刊不動産経済通信は有料だから見出ししか読めないが、住宅新報も週刊住宅もお粗末極まりない(なかった)。毎日更新はされているが、掲載されるのは、業界でいうゴミ記事ばかりだ。ゴミ記事を掲載することで週刊紙購読に結びつけようという狙いだろうが、これは逆効果だ。一部でいいから重要な記事を配信するとか、サマリから有料購読につなげるような工夫をすべきだろう。

 わが国と単純比較できないが、ニューヨーク・タイムズ(NYT)の電子版有料購読者数が今年1月からの3カ月間で30.8万件増加し、191万件に達したと報じられた。わが国の日経新聞の日経電子版有料会員数は公称50万人。紙媒体との融合に一定の成果をあげている。Webを活用しないと業界紙も生き残れない。充実させれば新たな読者を開拓できるのではないか。

 業界紙の取材先であるデベロッパーやハウスメーカーのほとんどはBtoC企業だ。企業が業界紙に求めるのはもちろん他社の動向だが、同時に消費者のニーズはどこにあるのか潜んでいるか、将来はどうなるかのヒントとなる情報だ。いわば業界紙の役割は企業と消費者を結びつける橋渡しだと思う。世の中の「風と流れ」を活写し伝えることだ。この役割を果たすためには担当分野についての専門知識を習得するのはもちろんだが、消費者の視点からものごとを見る姿勢が欠かせない。企業目線と消費者目線はときとして衝突する。その緩衝材としての役割も大きい。

 デザイン、レイアウトについても一言。日経新聞が今年3月、日曜日に16ページの「NIKKEI The Style」の連載を開始した。用紙に高級白色紙を使用し、カラー写真やグラフィックをふんだんに盛り込んでいるのが特徴だ。

 記者はこの「NIKKEI The Style」に驚愕した。日経の読者からは株式の情報が少なくなったという声が聞かれるが、同社は他の一般紙読者をターゲットにしているはずだ。

 一般紙ですら紙面刷新に真剣にとりくんでいるのにわが業界紙は20年も30年も昔のデザイン、レイアウトを踏襲している。ここで細々したことは書かないが、全国紙といういい見本がある。見習ってほしい。

 「住宅新報」1紙になったのだから、同紙には「週刊住宅」の分まで頑張っていただきたい。「このほど」などといつの風やら流れかわからない記事を書いていたら、そのうちにどぶに捨てられる。

流れに乗れず逆らえず 記者は病葉か 「週刊住宅」破たんに思う(2017/5/9)

「週刊住宅」破たん わたしはこう考える ④(建築家)(2017/5/9)

週刊住宅」破たん わたしはこう考える ③(不動産流通会社広報担当)(2017/5/8)

「週刊住宅」破たん わたしはこう考える ②(デベロッパー広報担当)(2017/5/8)

「週刊住宅」破たん わたしはこう考える ① (ハウスメーカー広報担当)(2017/5/8)

 

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