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2018/02/24(土) 17:56

敵か味方か 京阪電鉄不 見たことない「コト」企画で勝負「武蔵野富士見」

投稿者:  牧田司

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「DISCOVER ★TERRACE★ ファインシティ武蔵野富士見」

 恐るべき敵なのか頼もしい味方と考えるべきなのか、いま京阪電鉄不動産が神出鬼没、東奔西走の活躍を見せている。鉄道会社の売上高では大手にはるかに及ばずベスト10にも入っていないが、マンション事業では本拠の関西は言うまでもなく、北は札幌から首都圏、名古屋、福岡まで全国を網羅し、昨日の友は今日の敵、敵の敵は味方とばかり、時にはぶら下がり時には堂々とメジャーを張る。

 冬季オリンピック競技でいえばショートトラックだ。大きな先行選手の陰に隠れて力を温存し、最後は内を突いて舌ではなく足を出す。かと思えば果敢に先行し、抜かれそうになると違反すれすれの肘をつき、ダメだと思うと大げさにこけて見せる。

 こんなことを書いたら、もう書いてしまったが、二度と取材させてくれないかもしれないが、そんなことにはならないと読んだ。激烈な市場環境に晒されている会社だ。馬鹿な(大阪弁はアホな)記者の記事など馬耳東風、「勝手にせいや」と笑い飛ばすはずだ。

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モデルルーム

◇       ◆     ◇

 独白が長くなってしまったが、ここからが本題。同社(事業比率60%)・日本土地建物(同20%)・菱重プロパティーズ(同20%)3社JVの「DISCOVER ★TERRACE★ ファインシティ武蔵野富士見」を見学した。

 パンフレットのヘッドコピー〝遊び、学び、つながりながら、たくさんの喜びや感動を「発見」しよう〟に嘘はない。これまでにない盛りだくさんな仕掛けをユーザーに訴えきれるかどうかに事業の成否がかかっている。中央線の潜在顧客の琴線に触れれば大ヒットするかもしれない。本日(24日)、モデルルームを一般公開した。分譲開始は3月13日。

 物件は、西武国分寺線・拝島線小川駅から徒歩11分、東村山市富士見町1丁目に位置する敷地面積10,947.46㎡の10階建て全293戸。専有面積は68.64~87.61㎡、予定価格は1,900万円台~5,100万円台(最多価格帯3,500万円台)、坪単価は165万円。設計・施工は長谷工コーポレーション。竣工予定は平成31年2月上旬。

 現地は官舎跡地。敷地南側は奥行き約170mの南台公園と明治学院中学校の敷地・グラウンドで、南台幼稚園、東村山市立第一中学校に近接。同じエリアには大成有楽不動産、日土地、NTT都市開発などのマンションがあり、隣駅の「萩山」では野村不動産が〝オハナ〟91戸を分譲する郊外の激戦地。

 建物は中央に中庭を配したコの字型で、住戸は南向き、東向き。基本性能・設備仕様はリビング天井高2500ミリ、ディスポーザー、人造大理石カウンター、「長谷工のトイレユニット」など。

 「コミュニティ」がテーマになっており、webアンケートをもとにアスク、ロゴスコーポレーション、パーク・コーポレーション、ボーネルンド、イリー、マイファーム、ビクセン、青山ブックセンター、DIYファクトリー、アソシエイテッド・アーツ、日本冒険遊び場づくり協会の11の企業・団体とコラボし、入居後の2年間はコミュニティ支援を行うなど「コト」プログラムを実施する。

 これまで資料請求は都下№1の約1,800件、事前案内会来場者は4週で約300件。来場者の居住地は地元が40%、中央線居住者も多いという。緑の環境、新宿へ27分という利便性、価格の安さ、カフェ、セキュリティ、中庭などに対する評価が高く、シアターやモデルルームも好評とのことだ。

 同社首都圏事業部東京営業部所長・高橋和寿氏は「当社は札幌、中之島、北浜、福岡などでもタワーを共同で手掛けており、ターゲットに合わせて幅広く展開している。子育て社員もプロジェクトに参加している。『かもめのジョナサン』文化を継承したい。今回の物件では普通の会社員の手が届く3,500万円台を死守しつつ、戸建てではできない企画も盛り込んだ。将棋、囲碁などのプログラムを用意したが、『孫に教えるか』という親世代の反響もあり、思わぬ副産物も生まれている。〝安売り〟でないことを証明して業界を元気にしたい。第1期は100戸くらい供給できればと考えている」と話した。

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星の観察

◇       ◆     ◇

 シアターを見てすぐ企画意図を理解した。冒頭に82%が「マンションにコミュニティは必要」と答えたアンケート調査の回答を示し、「マンションとは思えない暮らし」の具体的な取り組みを紹介するその手法はストレートにユーザーに伝わるはずだ。 

 コミュニティをテーマにしたマンションは思い出せないくらい見学している。〝思い出せない〟というのは、つまり〝印象がない〟と同義語だ。コミュニティが大事なのはみんな分かっているが、それが販促につながるかといえばそうではない。

 しかし、同社は敢えてそれに挑戦した。「横浜江ヶ崎」の成功で自信を持ったのだろう。その進化型で需要を創造する戦略だ。

 確かに「マンションとは思えない暮らし」-記者も観たことがない提案がいくつも用意されている。「火おこし」=「たき火」がそうだ。少なくとも我々の世代にとってたき火は日常だった。たき火を囲んで大人が政治やら経済やら男女の仲やらをあけすけに語るのを聴き成長した。

 「星の観察」もしかり。公園に面した8階以上の購入者にはプロ仕様の天体観察望遠鏡と双眼鏡がプレゼントされるという。記者などは「おりひめ・ひこぼし」はどこにあるのかと星空を眺めながらかなわぬ恋にはらはらと涙したものだ。(記者は目が悪いが)いま都心で見えるのは金星くらいか。北斗七星はどこに行ったら見えるのか。小川は星が見えるそうだ。

 販売事務所の造りもよくできている。入口の壁にはカスケードと呼ぶには貧弱で、キャピトルホテル東急のようなきらびやかさはないが、水を流す演出がうれしいではないか。「香り」もそうだ。子育て中という同社首都圏事業部東京営業所の爪川恵未氏の発案なのか、ここ武蔵野の樹木を使ったオリジナルのアロマが楽しめるという。

 イベントでやってほしいことに☆印のシールを張ってもらうという意表をつく仕掛けがまた面白い。「ホタル見学」があったのでそこにシールを張り、「わたしの小さいころは『蛍川』そのものだった。真っ暗な寝床の蚊帳の中にホタルを放って遊んだ。小川にホタルがいるのか」と聞いたら爪川氏は「探してくる」とその気だった。

 肝心の単価とモデルルームについて。高橋氏は「近鉄不動産の田中専務(孝明氏、当時常務)と同じように『このマンションは坪単価では語れない』と言いたいところだが、いずれ分かることだから。坪単価165万円」と自信たっぷりに話した。

 モデルルームは〝非常によくできている〟としか書かない。来場者が評価した通りだ。

 書き出したら切りがないのでもうやめるが、この記事はぜひ「東松戸」「横浜江ヶ崎」の記事と一緒に読んでいただきたい。不動産コンサルの長嶋修氏にも現地に足を運び、モデルルームを見学してほしい。ユーザーの味方なら「駅から7分以内」の主張を撤回するはずだ。

 記事を書き終えたら、あの「タケツー」を思い出した。30年も昔だ。武蔵藤沢か入間か、100だか108だかの「魅力」を前面に打ち出し、首都圏デベロッパーを唖然とさせた。

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