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2019/01/21(月) 12:04

〝日本一美しい多摩〟目指せ 多摩市街路樹よくなるプラン改定版 住民説明会

投稿者:  牧田司

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「多摩市街路樹よくなるプラン改定委員会」左から池邉氏、沼田氏、野村徹郎委員(日本造園建設業協会)、仙仁氏、曽我昌史委員(東大大学院農学生命科学研究科助教)

 多摩市は1月20日、「多摩市街路樹よくなるプラン改定版(原案)に関する市民説明会」を開催した。市は「多摩市街路樹よくなるプラン(街路編)」を平成20年度に策定してからから約10年が経過し、課題が生じてきたために「多摩市街路樹よくなるプラン改定委員会」を立ち上げ、プラン改定作業を進めてきた。今年度末に改定版をまとめる予定。

 冒頭、挨拶に立った多摩市街路樹よくなるプラン改定委員会委員長・池邊このみ氏(千葉大学大学院教授)は、「昨年の災害で街路樹がたくさん倒木するなど問題になっており、財政の厳しい全国の各自治体は維持管理費を削減する傾向にあるが、多摩市はそうではない。街路樹が愛され、他の地域から移り住みたくなるようなプランにまとめたい」と語った。

 同委員会専門委員でパルテノン多摩学芸員の仙仁径氏は、「街路樹はパートナー」と題する講演を行い、シンガポールでは街路樹など緑を管轄するのは国立公園庁で、街の価値を向上させるため一括管理を行い、データベース化している例を紹介しながら、緑の管理に市民も積極的に関わっていくことが大事であり、様々な可能性があると話した。

 また、同委員会副委員長・沼田真也氏(首都大学東京大学院教授)は、「他の自治体は予算、お金がないといっている。どこも〝窮すれば鈍す〟だ。しかし、我々はそうした傾向に抗いたいと考えている。次世代に継承できる向こう10年間のプランを作成したい」と述べた。

 約30名の参加者は、市の目指す今後10年を見据えた持続可能なみどりの形成とビジョンに耳を傾け、「多摩は日本一美しい街だった」「素人でも参加できる勉強会などをやって」「樹木にQRコードを付けて」などの意見を述べた。

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左から池邉氏、仙仁氏、沼田氏

◇       ◆     ◇

 「40年前までは多摩は日本で一番美しい街だった」-確かこう聞こえた。はっとした。緑が劣化しているという意味で発言されたのだろうか。

 記者が多摩ニュータウンに移り住んで約30年だ。「40年前まで」といえばニュータウン開発が真っ盛りのころで、街路樹もそんなに成長していなかったのではないか。

 その頃より劣化しているとすれば、どこがそうなのかもっと詳しく知りたかったのだが、記者は逆ではないかと思う。多摩ニュータウンの緑環境は成長し続けており、一段と美しさを増している。課題はあるだろうが、大きな価値だし、市民の誇りだ。池邊氏も話したように都民の誇りかもしれない。

 発言者の声を借りれば今後も「多摩は日本一美しい街」であり続けてほしいし。

 樹木も生きものだから、「交通の安全性に支障を来している」との理由で伐採されたり間引きされたりするのは忍びないが、「事故を起こしていいのか」といわれると反論もできないので、改定版の方向性に同意せざるを得ない。

 一つだけ言わせていただければ、そもそもケヤキ、クスノキなどは環境にもよるが樹高が20mくらいに育つ。街路樹を植える段階で分かっていたことだ。樹種の特性を考えなかった都市計画に問題がある。

◇       ◆     ◇

 女性の参加者が「わたしは素人」と断り、「みんなが参加できる勉強会などを行ってほしい。樹木にQRコードを付けていただきたい」と話した。

 同感だ。「樹名板」の表示は世田谷区が積極的で、ハウスメーカー・デベロッパーも分譲地やマンション敷地内の樹木にQRコードを付けるようになりつつある。市内では2011年に「緑の都市賞」内閣総理大臣賞を受賞したNPO多摩グリーンボランティア森木会が「樹名板」の表示活動を行っている。市のプラン策定にも関わった涌井史郎氏の名言を紹介する。「木の名前と虫の名前と鳥の名前を覚えると、1歩歩くたびに人生3倍楽しくなる」

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 委員会を主催した道路交通課には注文を付けざるを得ない。説明会が行われた永山公民館ベルブホールの定員は150名だが、参加者は約30名。これはいかにも少ない。池邉氏など委員に失礼ではないか。

 参加者といえば、昨年2月の第6回多摩NT再生プロジェクトシンポでも書いた。以前は定員いっぱいの300名が集まっていたのに半分近くの約160名しか集まらなかった。市の情報発信力の低下は否めない。

 市の人口は今年1月1日現在、約14.8万人で前年比93人減となった。西浦定継・明星大学教授は6年前、「何もしなければ50年後の多摩市の人口は半減する」と警告した。〝日本一美しい多摩〟を担保するはずの「プラン改定版」はどうなるのか。

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 池邉氏や参加者から「美しい」の言葉が再三再四発せられた。説明会の主旨ではないのであまり触れないが、究極・永遠のテーマである「美」とは何かについても考える必要がありそうだ。記者はマンションを見るときも街路樹などを眺めるときいつも美しいかそうでないかを最優先している。

 肝心なのは、対象物そのものが美しいかどうかというよりも、ロダンが言ったように美醜を分ける審美眼であり、美意識だと思う。市の道路交通課の職員の方は「公園緑地課と理念は同じ」と話したが、「交通安全」「道路の付属物」(道路法第2条では並木)のフィルター越しに見る街路樹、緑地帯は果たして公園緑地課などの職員と同じか。違うのではないか。

 多摩市のことを言っているわけではないが、色眼鏡をかけず邪心を捨てて街路樹を眺めたら絶対電柱のような街路樹にはならない。街路樹が消え、「サクラ商店街」「ユリノキ通り」「けやき通り」「くすのき通り」の名前だけが残るような世の中になってほしくない(そうなりつつある街がある)。道路課の方たちは「市民の要望」というが、それを言えば市民も行政も哲学がないということだ。

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 これまで街路樹や緑などについて30本くらいの記事を書いてきた。下記にアドレスを張り付けるので、興味のある方は読んでいただきたい。

あの熱気どこに 多摩市 第5回 多摩NT再生プロジェクトシンポ(2018/2/5)

都市計画の母が泣く たまプラーザの「ユリノキ通り」が消える!? 市が伐採計画(2017/8/22)

涌井・都市大特別教授 「わが国の自然はかみさんと一緒。美しいが扱いも難しい」(2016/12/11)

異形のスカイツリーに怒れるスズカケ 押上の街路樹 続々「街路樹が泣いている」(2015/3/20)

またまた「街路樹が泣いている」 千代田区 街路樹伐採で賛否両論(2016/9/8)

「何もしなければ多摩NTの人口は50年後に半減」西浦・明星大教授(2014/1/29)

多摩ニュータウン学会 「みどり」について意見交換会〝愛でるみどりから関わるみどりへ〟(2013/5/16)

街路樹が泣いている ~街と街路樹を考える~⑧(2012/6/5)

「さらし首」にされていた菊名・錦が丘のサクラ(2012/5/17)

街路樹が泣いている ~街と街路樹を考える~ ④植栽枡・ツリーガードだけ クスは高さ5m 柏の街路樹(2012/5/14)

街路樹が泣いている ~街と街路樹を考える~ ② 少ない街路樹に関する公表データ(2012/5/10)

街路樹が泣いている ~街路樹と街を考える~  ①(2012/5/1)

街路樹比較 戸田市は35人に1本 多摩市は15人に1本の割合(2012/3/14)

貧弱な戸田市の緑・街路樹 市民の満足度が上がらないのは行政の責任(2012/3/13)

多摩グリーンボランティア森木会10周年&「緑の都市賞」内閣総理大臣賞受賞記念講演会(2011/11/29)

 

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