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9月13日行われた、いわゆるオリンピック選手村裁判で、東京都を訴えている原告側代理人弁護士・千葉恵子氏は次のような意見陳述を行った。
◇ ◆ ◇
1 原告らは、本日、準備書面6、準備書面7、準備書面8、調査委託申立に関する被告意見書に対する反論書を提出しました。
2 準備書面6では本件土地価格に関する主張を行いました。
土地価格については、既に桝本鑑定士による鑑定評価(甲68)、意見書(甲77)を提出していますが、今回、修正意見書(甲92)を提出しました。これは、被告から日本不動産研究所作成の調査報告書が改めて提出され、以前黒塗りだった部分が一部明らかになったり、その後公表された資料などで明らかになった事実を踏まえて作成されたものです。この修正意見書に基づいき、いわゆる「選手村要因」を考慮した本件土地の評価に関する主張を行いました。
修正意見書は、オリンピック要因を考慮し、調査報告書が用いた数値のうち、明らかになっていない数値や明らかになっていても適正とはいえない数値については桝本鑑定士による分析に基づく数値が用いられています。修正意見書は、調査報告書の内容の不備として土地譲渡価格の90%が後払いであることが考慮されていないこと、建築工事費が不相当に高く計算されていること等を指摘しています。修正意見書によれば、「選手村要因」を考慮しても、本件土地価格は1653億2100万円に上ります。
被告が決定した本件土地処分価格は129億6000万円であり、上記金額の8%にも満たず、坪単価で比較すれば東京都西多摩郡檜原村の住宅地や商業地域と同程度の価格です。この事だけでも異常な安値であることは明らかです。さらに、修正意見書では、桝本鑑定士により、その知識と良心に従ってオリンピック要因をも考慮した適正価格が導かれているのであり、適正価格に比して処分価格は異常な安値であることは明らかです。
被告は、これほどの財産価値を有する不動産を、わずか129億6000万円と鑑定による価格の92%も減額して処分する、すなわち東京都民の財産を約1480億円も失わせるのですから、かかる減額の根拠を明確に示すべきです。
にもかかわらず、被告東京都は、価格算定の唯一の根拠である調査報告書に基づく具体的な主張はほとんどせず、調査会社の権威を根拠に適正な調査である旨の主張を行うのみです。このような態度は到底許されるものではありません。
3 準備書面7では原告らは、どのようにして処分価格がそのような異常な安値になったのか、その処分価格とする方策の検討がどのように行われたかについて、2013年9月にパシフィックコンサルタンツ株式会社が作成した「選手村開発方針検討支援業務報告書」(甲93)(以下「支援業務報告書」と言います)がその筋書きを作り、それに基づいて進められたと評価できると主張しました。
(中略)
本件土地価格の不当な低廉さは、このように被告東京都と事業協力者の(支援業務報告書に記載されている)上記シナリオに基づく綿密な事前協議のもとに実現しており、行為の違法性は明白です。
支援業務報告書も多くの部分が黒塗りのため明らかでない部分があります。原告らは黒塗りにした部分が時の経過とともに明らかにならないか、と期待し、東京都に対して開示を求めました。開示決定の時期が延期されて、その結果を待っているところです。(開示された模様)
4 原告らは、被告と事業協力者との協議記録に関して、被告に対して情報開示請求の方法をとりましたが、「既に全て廃棄して開示できない」という理由で開示されていませんでした。地方自治体は、本件のような公共的な事業に関しては、事業協力者との協議記録は公文書として保管して、住民に全て開示すべきです。それが開示されなかったために、やむなく調査嘱託の申立を行いました。調査嘱託の採用を求めます。
そして、被告には再度、電子データで保管されていないか、など探索をし、保管されている場合には明らかにするように求めます。