「野七里(のしちり)テラス」オープニングセレモニー(右から3人目が芳井氏)
大和ハウス工業は10月29日、郊外型既存戸建住宅団地の再耕(再生)事業「リブネスタウンプロジェクト」の一つとして取り組んでいる、横浜市栄区の「上郷ネオポリス」で建設を進めてきたコンビニ併設型コミュニティ施設「野七里(のしちり)テラス」が完成したのに伴うオープニングセレモニーを実施。同社・芳井敬一社長をはじめ地元関係者など多数が開業を祝った。
同社は、1962年から全国61カ所・延べ7万区画の大規模戸建住宅団地「ネオポリス」を開発しており、開発後40年以上が経過することから、少子高齢化や将来的な空き家・空き地の増加、建物の老朽化など様々な課題を抱えている。
同社は、産官学民が連携して課題解決に取り組むとともに、新たな「まちの魅力」を創出することが必要と捉え、「上郷ネオポリス」と「緑が丘ネオポリス」(兵庫県三木市)で「リブネスタウンプロジェクト」に取り組んでいる。プロジェクトで培ったノウハウを他の団地再生に生かしていく。
「上郷ネオポリス」は、1970年に開発を開始したJR根岸線港南台駅からバス18分、横浜市栄区野七里に位置する約46ha、総戸数868戸。2017年9月現在の高齢化率は約50%、2019年9月現在の空き家率は約2%。
2016年、同社と自治会が「上郷ネオポリスにおける持続可能なまちづくりの実現に資する諸活動についての協定」を締結。同時に明治大学、東京大学、高齢者住宅協会も加わった「上郷ネオポリスまちづくり協議会」を発足させた。
同協議会が実施した住民意向調査の結果、「買い物・交通の不便」「高齢者の見守りや支えあい」などのニーズが高いことが分かったため、横浜市などと協議を重ね、第一種低層住居専用地域にコンビニを設置することを可能にし、今回、コンビニ併設型コミュニティ施設を完成させたもの。
「野七里(のしちり)テラス」は、敷地面積約589㎡、鉄骨造平屋建て延べ床面積約149㎡(コミュニティスペース約58㎡、コンビニ約91㎡)。同社が建物を大和リビングに賃貸し、運営は一般紙や団法人野七里テラスに委託する。コンビニの店長を含めた従業員は地域住民を中心に雇用する。ボランティアによる様々な活動も行っていく。課題であるモビリティの導入も検討していく。
「野七里(のしちり)テラス」は国土交通省の「平成30年度スマートウェルネス住宅等推進モデル事業(住宅団地再生部門)」にも採択されている。
竣工式の後、会見に臨んだ同社・芳井敬一社長は「開発当初のマイホームを実現するという『夢』をかなえたという意味では一定の役割を果たしたが、これほど急速に少子高齢化が進むということは読み切れなかった。当初の『夢』が第一章なら、今回のプロジェクトは『夢』の第二章。産官学民が連携してサポートしていく。(竣工式の)これほど心がこもった祝詞は聞いたことがない」と語った。
また、上郷ネオポリス自治会会長・家成智榮子氏は「素晴らしい施設が完成して喜びと感動で心が震えている」と声を詰まらせた。
横浜市栄区区長・星崎雅代氏は「この取り組みが全国の郊外住宅地の再生のモデルになってくれることに期待している」とエールを送った。
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郊外住宅地の再生問題はこの十数年間、熾火のように記者の胸の内にくすぶり続けている。昭和50年代から60年代にかけて建売住宅をたくさん取材し、取得を煽る記事を書いてきた責任を感じているからだ。
これまで、何回か取材もしてきた。その記事も読んで頂きたい。横浜・金沢文庫の「西柴団地 さくら茶屋」、埼玉県鳩山ニュータウンの再生活動を取材したときは心底から感動した。だが、しかし、成功事例はつくれるだろうが、全国に数千カ所もある郊外大規模住宅地の再生は容易なことではないと思う。絶望的ではないかと思わざるを得ない。
だからこそ、今回の上郷ネオポリスの取り組みがモデルケースとなることを祈るほかない。
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一つ、弁解させていただきたい。自治会の事務局長がメディアに向かって「皆さんは限界集落などと書き立てるが、うちの自治会の介護保険利用率は市の最低レベル。このことも考慮していただきたい」との主旨のことを話された。
確かにわれわれメディアは、記事を読む当事者がどのように傷つこうがお構いなし、センセーショナルに書くことのみに重きを置く悲しき習性を持つ。
かく言う記者も7年前、添付した「限りなく限界集落に近い首都圏の郊外団地」の記事を書いた。予想していたことではあったが、あまりにもの惨状に驚き、記事化したときの影響の大きさにおののき、多少のリテラシーを働かせて団地名は匿名にした。それが逆にいけなかったのか、記事にアクセスが殺到した。大マスコミも含め具体的な団地名を教えてほしいとたくさん連絡を受けたが、一切答えなかった。今もってその団地がどこかを口外したことはない。
一つ救われたのは、その団地(地域)の再生に自治体が動き出したことだ。国土交通省にもその取り組みが紹介されている。
事務局長さん、記者などは警鐘を鳴らす程度のことしかできませんが、受けを狙った為にする記事は極力書かないように努力していることを分かってください。
もう一つ。芳井社長は「これほど心がこもった祝詞は聞いたことがない」と話した。記者はこれに反応した。その祝詞を紹介しようと同社広報に頼んで手に入れた。コピー&ペ―ストすればいいと思ったら、何と祝詞そのものを写真に撮ったものだった。
これをワードに書き換えていたら…いま20:30過ぎ…あと少なくとも1時間はかかる。まだ酒も食事もしていない。とりあえず記事だけアップして、祝詞をどうするか考える。神主様、ありがとうございます。芳井社長はこれまでどれくらいの祝詞を聞かれているのか、これも知りたい。
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