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2020/03/03(火) 18:08

東日本大震災から9年目 太平洋岸39市町村の人口減少止まらず 改善したのは11市町村

投稿者:  牧田司

令和2年2月被災地人口.jpg

 2011311日の東日本大震災から間もなく9年目を迎える。被災太平洋岸エリア39市町村の令和2年2月1日現在の人口は、前年より減少率が改善したのは11市町村にとどまり、20市町村で減少率は拡大した。人口増加は仙台市、名取市、広野町の3市町にとどまった。

昨年より人口減少率が改善したのは山田町(▲2.3%⇒▲2.0%)、陸前高田市(▲1.9%⇒▲1.5%)、亘理町(▲0.4%⇒▲0.1%)、南相馬市(▲1.5%⇒▲1.4%)、大熊町(▲1.3%⇒▲0.7%)、楢葉町(▲2.4%⇒▲1.9%)、北茨城市(▲1.3%⇒▲1.1%)など11市町村。

人口が増加したのは仙台市(前年比0.1%増)、名取市(同0.6%増)、広野町(同0.4%増)。前年は増加していた多賀城市(▲0.2%)、岩沼市(▲0.6%)は減少に転じた。

引き続き人口減少が続いているのは39市町村のうち20市町村。減少率が大きいのは田野畑村(▲3.7%⇒▲3.6%)、普代村(▲2.3%⇒▲3.3%)、釜石市(▲2.2%⇒▲2.7%)、南三陸町(▲1.9%⇒▲2.7%)、大槌町(▲1.4%⇒▲2.3%)、宮古市(▲2.3%⇒▲2.3%)など。

岩手県の被災地の人口減少率は2017年の▲1.5%(県全体▲1.0%)から2018年▲1.8%(同▲1.0%)、2019年▲2.0%(同1.2%)、20202.2%(同▲1.2%)と県全体の減少率を上回っている。

宮城県は仙台市の人口増があるため20170.0%(同▲0.2%)、2018年▲0.1%(同▲0.3%)、2019年▲0.1%(同▲0.4%)、2020年▲0.2%(同▲0.5%)と県平均の減少率を下回っている。

福島県の被災地の人口減少率は2016年▲0.8%(同▲0.8%)、2018年▲1.2%(同▲1.0%)、2019年(同▲1.0%)、2020年▲0.6%(同▲0.8%)と県平均の減少率とほぼ同じ数値で推移している。

震災前と比較して人口減少率が大きいのは女川町(▲42.2%)、南三陸町(▲36.9%)、大槌町(▲28.2%)、広野町(▲26.8%)、南相馬市(▲24.4%)、山田町(▲24.2%)、陸前高田市(▲23.9%)など。

被災地4県の人口減少率は2016年の▲0.4%(4県平均▲0.5%)から2018年▲0.5%(同▲0.6%)、2019年▲0.5%(同▲0.6%)、2020年▲0.6%(同▲0.8%)となっており、4県平均の減少率を下回っている。

       ◆     ◇

 この人口動態の数字はなにを物語るのか。

人口減少率が改善した陸前高田市の戸羽太市長は「昨年は、岩手県が整備する『高田松原津波復興祈念公園』内に、国の『追悼祈念施設』、県の『東日本大震災津波伝承館』と併設して、『道の駅 高田松原』がオープンし、市民はもとより市外の多くの方々が訪れ、新たな賑わいが生まれております。
 令和2年度は、国の復興・創生期間の最終年度であります。
 市民の皆様の気持ちに寄り添いながら、一日も早い復旧事業の完了に向けて取り組むとともに、安心して自分らしく暮らせるまち『夢と希望と愛に満ち 次世代につなげる 共生と交流のまち 陸前高田』の実現に向け、引き続き市民の皆様とともに取り組んでまいります」(市長の部屋)と述べている。

また、広野町長・遠藤智氏は年頭のあいさつで「本年をふる里復興・創生『飛翔の年』と位置づけ、これまで取り組んできた町の復興・再生を、新しい広野町の『創生』へと進化させ、新しいまちづくりを進め、生活再建を念頭に安心・安全なまちづくりに向けて着実に前進して参ります」と記している。

南三陸町長・佐藤仁氏は令和元年121日付で「今年度は、復興計画期間内に全ての復興事業が確実に完了するようあらゆる手段を講じ、推し進めていくとともに、創造的復興に向け、行政、住民が一体となった復興の基盤を整備し、南三陸ブランドの創造、子育て支援の充実化、地域コミュニティの再構築などを基本とし、これまで取り組んでまいりました復興事業の効果を最大限に発揮するようソフト事業を中心に施策の展開を図ります」と決意を語っている。

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高さ6.3メートルの名取市・日和山(津波は松の中ほどまで押し寄せたとか。2017年4月撮影)

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 死者620名、行方不明211名、全体の約58%、3,143戸の建物が全壊し、壊滅的な震災被害を受けた南三陸町の人口は約11,000人。同町の令和元年度の一般会計予算額は約331億円で、町民一人当たりの額は一般的な市町村の10倍の約300万円にのぼる。

 このうち国庫支出金が144億円、県の支出金が14億円、地方交付税が80億円で、実に約72%が公的資金だ。町税は13億円に過ぎない。

 これほどの公費をつぎ込んでいるから震災前の人口の37%減にとどまっているのか、それとも巨額の公的資金を注いでも人口減少に歯止めを掛けられないのか、記者は判断材料を持たない。

 震災から9年が経過し、震災前の473事業所のうち今日まで復興したのは約62%294事業所で、災害を受けた農業462haのうち復興したのは約53%の246haだという。

 復興庁は平成23年度から今年度を最終年度とする復興予算額を約32兆円としている。

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汚染土壌の土嚢(富岡町で。2017年4月撮影)

ポラス 宮城県名取市の仮設住宅で慰問の南越谷阿波踊り その4(2017/4/29)

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