この日(9月8日)の東京の日中気温は34度、湿度は65%を示しており、年寄りの記者には相当こたえたが、望外の収穫があったマンションを見学した。大和地所レジデンスが10月上旬に分譲する「ヴェレーナグラン赤羽北フロント」だ。マンションの用地仕入れ・商品企画はかくありき-天晴れ!そんな声を掛けたくなるマンションだ。
物件は、JR埼京線北赤羽駅から徒歩3分、北区赤羽北二丁目の建ぺい率60%(3方道路角地につき70%に緩和)、容積率200%・300%(加重平均により247%)の工業地域に位置する12階建て全89戸。専有面積は65.88~100.80㎡、価格は未定だが、坪単価は300万円を切る模様。竣工予定は2022年2月下旬。施工は森組。植栽計画は東邦レオ。
現地は住宅展示場跡地。用途地域は工業地域だが、商業施設・マンション化が進んでいるエリアの一角。敷地の南側に環八と埼京線・新幹線の線路が走ってはいるが、周辺に嫌悪施設はほとんどない。
敷地は東西軸が南北軸よりやや長い長方形で、全住戸が南向き。1階ラウンジに面して水盤を配し、共用施設としてパーティルーム、テラスを設置している。
主な基本性能・設備仕様は、二重床・二重天井、リビング天井高2400~3050ミリ、食洗機、御影石天板キッチン、ミストサウナ、グローエシャワーヘッド、メーターモジュール廊下幅など。
住戸プランは全89戸に対して17タイプ24バリエーションを用意。スパンは最低でも6100ミリ、多くは6,300ミリ、最上階の90㎡(2戸)と100㎡(2戸)は9,150~12,300ミリ確保している。3階の全8戸はスキップフロアを採用し、リビング天井高3,050ミリ、約21畳大の床下収納付(収納部分の高さは740ミリ)としているのが特徴。
同社広報担当の横山氏は、「建築担当は、北赤羽のランドマークにすると意気込み、外観やランドスケープを創り込んでいる。また高さ制限や日影規制がないことを利用した約21畳の床下収納は、当社の奥行4mのオープンエアリビングバルコニーに次ぐ〝売り〟になることを期待している。すでに反響は1,000件を突破しており、想定を超える多さ。赤羽駅の他社物件よりこちらを選択される人も多い」と語った。
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小生は、これまで同社のマンションも含め「北赤羽」に取材のために何度も足を運んでいる。工場・倉庫街として知られているが、かつて鹿島建設も優れたマンションを分譲しているように、どんどんマンション化が進んでいるエリアだ。
今回の物件は、環八・線路沿いではあるが、おそらくマンションデベロッパーにとって垂涎の的であるはずだ。どうしてあまたのデベロッパーを出し抜いて同社が用地を取得したのか。取材する前の最大の関心事だった。
高値で入札していれば、坪単価は300万円をはるかに超える。常識的には320万円くらいだろうと読んだのだが、ひょっとすると、これまでの物件と同じ〝奥の手〟を使って300万円を切るかもしれないと予想した。
正解は「坪300万円を切る」だった。横山氏は「書かないで」と宣ったので書けないのが残念だが、これまでの〝奥の手〟とはやや異なる。同社は〝安値〟で仕入れてはいない。大手を出し抜く用地仕入れに秘策があった。その謎は添付した記事に隠されている。
商品企画・設備仕様レベルそのものは文句なしにいい。敷地形状に恵まれているからではあるが、70㎡でもスパンを6300ミリ確保し、廊下幅はメーターモジュール、廊下床、キッチン天板は御影石、さらに21畳大の床下収納…まずどこも真似できないはずだ。
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取材の帰り。〝借り〟を返そうと赤羽駅に降り、「一番街」にある居酒屋に寄った。捨てずに取っておいたレシートを見せ、事情を話し、ただ飲みした生ビール代490円を払おうとしたが、若い女性スタッフは覚えていてくれたようで、「もういいんじゃないですか。また来てくれたことがうれしい」と受け取ってくれなかった。
もちろん、またビールを2杯飲んだ。代金は1,078円。店の名前は「酒月」だった。帰り際、前回と同様、魚の容器に入った消毒液をもらった。コロナ以前はテキーラを入れてお客さんにプレゼントしていたのだという。
「住めば、北区東京。」-北区が人気になっているのは、こうした飲食店が多いからではないか。
北区初のZEH 近鉄不「赤羽」/涙が出るほど嬉しかった「お父さん、頑張ってね」(2020/6/25)