わが業界紙のひどい記事については再三再四その都度指摘してきたが、「週刊住宅」3月8日号の「都内城東マンション市況/好調の波、来ている/地元業者「錦糸町は活況」、亀戸で大型タワー建設工事進む」の長ったらしい見出しの記事には悲しいやら情けないやら腹が立つやら…。そうでなくてもコロナ禍でストレスは爆発寸前なのに、いい加減にしろといいたい。編集部のチェック機能はどうなっているのだ。
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この週刊住宅記者は、「本紙で連載を持つ櫻井幸雄氏が21年2月15日、ダイヤモンド不動産研究所(ダイヤモンド社)で東京・城東エリアにおける新築マンション市況に関する記事寄せている」(そのまま。意味不明)と書き起こし、「櫻井氏の記事を読んで亀戸に興味を覚えた。私事で恐縮だが、江東区で生まれて育った。そのため亀戸は小さいころから馴染みがある。そこで亀戸に足を運び、地元の不動産業者を訪ねてみた。亀戸は新築マンションで賑わっているのか、実際に取材して話を聞いてみようと思ったのだ」と取材の目的を明かしたうえで、本文でいきなり「JR亀戸駅のそばで大規模なマンションが建築中であった。マンション名は『プラウドタワー亀戸クロス』、価格は未定」と書いている。
冗談にも程がある。貴殿、あるいは貴女はそれでも業界紙の記者か。「プラウドタワー亀戸クロス」を知らないのは記者として失格。もぐり同然だ。野村不動産に聞けば、これまでの販売状況などについて教えてもらえるはずだ。これを怠って、どうして何も知らないはずの街の不動産業者(失礼)にアポなしで飛び込み取材を敢行するのか。相手だって迷惑だ。コロナに罹ったらどうするのだ。
案の定、その業者には「うーん、どうだろうな。新築マンションが売れているという話も聞くけど、ウチは賃貸中心だから、よくわからないな」と言われ、その後も2軒回って大した成果は得られなかったようだ。
当たり前だ。素人同然の記者が、同じ不動産業者とはいえ業態がまるで異なる業者に取材して成果が得られるはずがないではないか。
それでも懲りないこの記者の方は「亀戸を根城に定点観測を続けてみたい」と結ぶ。やめたほうがいい。マンションの「マ」の字を知らなくて、地元業者を百回だろうと千回だろうと回ってもプロの読者に読んでもらえるような記事ネタは一つもつかめないだろう。そんな記事ばかり書いていたら、根城どころか、生計を維持するための「塒」(ねぐら)すら確保することはできないだろう。(どこかにどっぷり住みついていたらご同慶の至りだ)
それより、どこでもいい(とはいえプラウドは欠かせないが)。デベロッパーに頼んで週に2~3件くらい現場を回れば、1年後にはマンション専門記者に育つかもしれない。記者の仕事を甘く見てはいけない。
もう一つアドバイス。評論家だろうが何とか不動産研究所だろうが、人のしゃべることや書いたものは疑ってかかるべきだ。自らが現場に赴いてしっかり確認することが記者の基本だ。この基本を忘れると、それこそ「か・ち・も・な・い」=「価値もない」記事を垂れ流すことになる。
参考までに小生の「プラウドタワー亀戸クロス」に関する記事を添付する。異論反論があるなら指摘していただきたい。
全て読んだわけではないが、同紙の他の記事では、中身が何もない住宅リフォーム市場記事もひどく、3.11に関する記事も各社のあれやこれやの取り組みやオンラインによるインタビュー記事でお茶を濁している。
3.11に関する記事は、住宅新報も1面で三井不動産の「わたす日本橋」の取り組みを紹介している。補足取材も行ったようで「週刊住宅」よりはましだが、これもまたプレス・リリースが基本だ。記事の中には「三井不動産の社員が足で稼いだ食材や物品を販売」「現地へ出向くことに大きな意義がある」とあるではないか。
コロナ禍で現場取材は難しいのだろうが、心を揺り動かすような現地からのレポート記事は書けないのか。〝記事は足で書く〟-小生は耳にタコができるほど聞かされた言葉だ。
南三陸町産の杉材のえも言われぬ香りに感動 三井不動産「わたす日本橋」(2021/3/11)
価格上昇・専有圧縮 質の低下…マンション市場データは消費者目線欠落していないか(2021/3/3)