記者は昨年5月、新型コロナ感染者の経路不明が減らないのは〝闇社会〟〝二重就労〟が背景にあるのではないかと記事にした。さらに11月、経路不明が減らないことに関し、就労環境やジェンダー性差が浮かび上がっていると書いた。
双方にアクセスが殺到した。6月4日現在、前者は約6.5万件、後者は2件で約7,000件に達している。東京都のデータは大雑把すぎ、記事の成否はよくわからないが、それほど的を外していないという確信はある。
そして今回、〝就労〟の視点からもう一度眺めた。興味深い結果が得られた。
別表・グラフは、東京都の6月4日現在の累計感染者を年代別・性別にみたものだ。これによると、感染者は累計162,874人(性別・年代不明者除く)で、男性は約9.1万人、女性は約7.2万人だ。男性を1とすると女性は0.79となっている。海外の感染者の男女比データは少ないが、WHOは男女比をほぼ1:1と報告していたので、都の差異が際立っている。
なぜか。コロナは、性別はもちろん老いも若きも愚者も賢者も富者も貧者も〝平等〟に襲いかかるとすれば、「三密」のリスクの多少が数値に現れると仮説をたてた。つまり、就業構造の違いが反映されているのではないかと。
総務省の調査によると、わが国の2019年の生産年齢人口は11,057万人で、就業人口は男性が約3,700万人、女性が約2,967万人だ。男性のほうが約733万人多い。比率的には男性を1とすれば女性は0.80だ。この就労人口の差は感染者の比率と見事に一致する。
年代別での男女の比率では、10歳未満、20代、70代が1:0.90~0.92となっているのも、就労しているかどうかで説明することができそうだ。10歳未満は社会的性差が顕著に表れる以前なので男女比にそれほど差が出ないのは当然で、70代も一部の職業を除き退職している人が多数派を形成することから、男女比に差は生まれないという説明が出来そうだ。
逆に、20代に大きな差が見られないのは、男女とも学生か就労しているかのどちら同じ生活環境にあると考えれば説明は容易だ。
就労しているかどうかを重視すれば、20代の感染者が多い理由を〝夜の街〟だとか〝路上飲み〟だとか〝無軌道〟な若者の行動とコロナ感染を結びつけるのは早計に過ぎるのではないか。
記者は昨年11月、都のデータから年代別・性別の職業を調べたことがあるが、圧倒的に多い「不明」と会社員、学生を除けば、20代の職業は飲食業、医療従事者、接客業、サービス業が目立った。雇用形態を示すパート・アルバイトも少なくなかった。三密のリスクが高い職業やいわゆるエッセンシャルワーカーが多いということだ。
こうした現状を踏まえず、単に〝自粛〟を求めるだけでは若者の心に響かない。逆効果にもなりかねない。
30代から60代の男女比は1:0.61~0.70と女性の比率が低いも注目される。これは、結婚、育児、その他介護などで離職する女性が多数存在することと無関係ではないはずだ。(男性のようなばかな飲み方をせず、危険を察知する能力にたけ、手洗いなどをまめにする賢い女性が多いのも否定しないが)
もう一つ、興味深いのは70代の男女比の比率が20代とほぼ同じで、人口10万人当たり感染者(率)が649.7人と10歳未満の417.6人に次いで低いことだ。
これはなぜか。前述したように男女とも退職した人が多いからだろうが、果たしてそれだけだろうか。徹底してコロナから逃げてはいるが、社会からも逃避する生き方にどっぷりとつかっている小生のような団塊世代の特性を表してはいないか。
減らない感染者・経路不明 ジェンダー性差くっきり 都の新型コロナ動向データ(2020/11/5)