大丸有エリアマネジメント協会、大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり協議会、三菱地所の3者は8月2日(火)~9月11日(日)、社会実験「Marunouchi Street Park 2022 Summer」を丸の内仲通りで実施する。8月2日には小池百合子・東京都知事、樋口高顕・千代田区長、小林重敬・大丸有エリアマネジメント協会会長、吉田淳一・三菱地所社長などが参加したオープンセレモニーが行われた。
社会実験「Marunouchi Street Park」(MSP)は、2019年かから実施しているもので、今回は6回目。全長1.2㎞、幅員21m(車道7m+歩行空間各7m)の丸の内仲通りのうち行幸通りから馬場先通りまでの区間を「MSP Refresh Space(丸ビル前ブロック)」「MSP Music Restaurant(丸の内二丁目ビル前ブロック)」「MSP Garden(丸の内パークビル前ブロック)」の3つのブロックに分け、それぞれテーマを設けて社会実験を行う。
「MSP Refresh Space」は軽い運動や読書ができるリフレッシュ空間として、道路と歩道を一体的に活用した「みんなのライブラリーベンチ」を設置。利用者が「丸の内仲通りで読みたい本」を持ち込み、気に入った本と交換もできるようにしている。「こどもライブラリー」では、夏休み期間に子どもたちが楽しめるよう、絵本が子どもの目線に入るよう工夫されている。車椅子利用者も利用できる卓球台も設けられている。
「MSP Music Restaurant」は緑を感じながら、音楽と食事が楽しめる空間がテーマ。誰もが弾くことのできる「みんなのストリートピアノ」を設置。また、丸の内仲通り沿道に店を構える「GARB Tokyo」の特設屋外客席として、飲食を楽しめるようにしている。「みんなのテーブル」は、様々な素材・機能・形の椅子と机によって構成された丸テーブルで、子どもから大人、障害のある人まで、みんなが利用しやすいデザインとなっている。
「MSP Garden」は自然を感じられる丸の内の庭空間として、清涼感ある北海道滝上町産の和ハッカ精油を使用した香り付きドライ型ミストを設置しているほか、芝生でくつろげる休憩所「ごろごろベンチ」や充電スポットを設けたソロワークスペースを設けている。
オープンセレモニーに参加した小林・大丸有エリアマネジメント協会会長は、「ワークスタイルは、これまでの室内のワークに加え、外部空間にグリーンを配置し、まちなかで働くように変化している。Marunouchi Street Parkはウォークすること、ワークすることを促すための恰好の場所。空間的にも機能的にも日本のオフィス街のこれからのあり方を示していくために、さらに本格的なストリートパークの取り組みを実践していく」と語った。
続いて登壇した小池都知事は、「都は、『車から人』への街づくりのPark Street TOKYOの活動を後押ししている。この丸の内仲通りは、道路空間に緑を敷き詰め、ファニチャーも車椅子利用の人も楽しめる卓球台もある。いろいろな工夫を取り入れていることに敬意を示したい。東京を持続可能な都市へと高めるためにも、環境に配慮した取り組みHTP(H=House T=Tree P=Person)を進めていきたい。すぐれた環境での生活は安心、心地よさ、活力を与えてくれる」と述べた。
樋口千代田区長は、「本年6月、千代田区ウォーカブルまちづくりデザインを策定した。Marunouchi Street Parkなどの先駆的な事例を参考にさせていただき、千代田区内の道路を公園に、居心地のよい空間にする取り組みとして今年度は実証実験を展開していく」と話した。
実験では、サステナブル(持続可能)な空間作りを実践するため、都心の広場・公園的空間の在り方と運営管理方法、都市観光としての場づくりについて検証する。酷暑対策として一部にドライ型ミストを設置するほか、気化熱を利用して表面温度が下がるハイテク芝「COOOL TURF(クール ターフ)」を導入し、天然芝と人工芝(ハイテク芝)での表面温度について比較検証も行う。また、企業のプロモーションに使用できるPRスペースを設け、東京會舘などのキッチンカーに加え、「東京ステーションホテル」と「ザ・ペニンシュラ東京」も期間限定で出店する。
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このような取り組みが3年前から始まり、今回で6回目を数えることなど全く知らなかった。セレモニー会場となっていた丸ビル前の丸の内仲通りの車は遮断され、ベンチなどで〝占拠〟されていた。70年安保のとき、道路にバリケードを築き、歩道のレンガブロックを砕いて警官に投げる光景は日常茶飯だったし(小生はやっていない。そんな勇気はなかった)、道路占用許可を得て様々なイベントが行われているのは承知しているが、よくぞ警視庁は1か月以上も道路占用を許可したものだ(2019年は100時間限定だったそうだ)。
ここまでできるのは、三菱地所を中心とする「大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり協議会」や「リガーレ(大丸有エリアマネジメント協会)」、三菱地所の活動があったからだろう。
協議会のその前身「大手町・丸の内・有楽町地区再開発計画推進協議会」が設立されたのは1988年。今では正会員66社・団体、準会員10社・団体、賛助会員9社・団体を数える。そして、2002年に設立された「リガーレ」は今年20周年を迎える。
三菱地所もまた、2020年から大手町・丸の内・有楽町エリアの街づくりを「丸の内 NEXT ステージ」として位置づけ、〝人・企業が集まり交わることで新たな「価値」を生み出す舞台〟構築を目指す「丸の内Re デザイン」の取り組みを加速させている。
今回もそうだが、同社はコロナ禍でもメディア向け見学会などを積極的に行っている。数えたわけではないがこの3年間で十数回に上るのではないか。デベロッパーの中で情報発信回数は飛びぬけて多いはずだ。
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街路樹について。読売新聞社は1994年、「新・日本街路樹100景」を編纂した。都道府県ごとに10景(計470景)を選び、その中から100景を厳選したものだ。関東圏では以下の17か所が選ばれている。
学園東大通り(茨城県つくば市)、昭和通り(茨城県ひたちなか市)、日光杉並木(栃木県今市市、日光市)、県庁前のトチノキ並木(栃木県宇都宮市)、前橋駅前通りケヤキ並木(群馬県前橋市)、いずみ緑道(群馬県大泉町)、国道463号線(埼玉県浦和市~所沢市)、東京外郭環状道路環境施設帯(埼玉県三郷市~和光市)、あすみ大通り(千葉県千葉市)、常磐平けやき通り(千葉県松戸市)、桜田通り(東京都千代田区)、表参道ケヤキ並木(東京都港区・渋谷区)、絵画館前イチョウ並木(東京都港区)、馬場大門ケヤキ並木(東京都府中市)、山下公園通り(神奈川県横浜市)、国道16号線(神奈川県相模原市)、東海道松並木(神奈川県大磯町)
記者はこのうち国道沿いの街路樹などを除いた12か所を訪ねたことがある。選定に異論はないが、いま選ぶとしたら、ケヤキを中心とする丸の内仲通りを真っ先に挙げる。単に街路樹が美しいだけでなく、周囲の高層ビルの公開空地や店舗などとしっくり溶けあっており、街の潤いと賑わいを演出している点からみれば、極めて稀有な事例だと思う。
もう一つ。ウォーカブルな街づくりについて。国は官民連携街づくりを推進しているが、道路や河川、公園などの占用許可制度を抜本的に見直し、もっと簡便な申請制度にすべきだと思う。そして、何よりも地域住民やワーカーのための街づくりであることを忘れてはならない。
ここでは詳しく書かないが、例えば千代田区の神田警察通り整備計画。樋口区長は、多くの住民の反対を押し切り、「苦渋の決断」として30本のイチョウ並木の伐採工事を強行した。街づくり協議会の原理・原則である公平性、公開性、独立性を無視し、地域のコミュニティを破壊した。
開発に伴う提供公園を含めた都市公園もしかり。コロナ禍で飲酒・飲食、喫煙を禁止し、どんどん利活用が難しくなっている。まったく利用されない都の都市公園は2割くらいあると記者はみている。実態調査を行ったら驚くべき実態が浮き彫りになるはずだ。
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