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2022/07/12(火) 23:37

イチョウ伐採に「精神的苦痛を受けた」 住民訴訟の第1回公判 原告が意見陳述

投稿者:  牧田司

 千代田区・神田警察通りのイチョウ並木の伐採の是非を問う住民監査請求中に千代田区が2本のイチョウを伐採したことに対し、伐採に反対する住民が「精神的苦痛を受けた」として22万円の損害賠償を求めた住民訴訟の第1回公判が712日東京地裁で行われ、原告側2人が意見陳述を行った。

 裁判を提起した経緯は省略する。以下、原告の意見陳述を紹介する。

        ◆     ◇

1 私は、神田警察通りの沿道に親の代から住んでおります●●です。

自宅前にもイチョウの木が3本あり、親しみを持って世話をしてきました。

2 昨年12月に突然、神田警察通りⅡ期工事区間のイチョウの伐採告知があり、びっくりして、住民は皆、寝耳に水の状況でした。区の広報などにも書かれていませんでした。

そのため、住民がⅠ期工事と同様に既存のイチョウを生かして道路整備をするよう申し入れをしたにも関わらず、1月にはイチョウ一本一本に伐採のお知らせが貼られました。

3 その後、神田警察通り沿道の住民の多くが伐採反対であることがわかり、皆さんと「神田警察通りの街路樹を守る会」を作り、署名、陳情、要望などいたしました。

しかし、今日まで、区役所は「決まったことだ」「10年間話し合いをしてきた」「Ⅲ期からの工事をやるときは意見を聞く」というのを繰り返すだけです。

4 その後、住民にもイチョウ保存への賛同者が増え、ネット署名でも1万3千人ほどが賛同し、新聞やテレビにも取り上げられました。

本年4月21日には住民監査請求を提出しました。そして、その監査請求の審査中にもかかわらず、本年4月27日未明に区役所は、伐採を強行しました。区の要請で出動した警察は区側に対し、工事を中止して住民側と話し合いをするようにという提案をしました。しかしながら、区は話し合いを拒否して、工事を続行し、住民が抗議する中、無理やりに2本のイチョウを伐採しました。

そのことは今も、強いショックが残っています。

5 神田警察通りのイチョウは街路樹として、70年以上も地域とともに成長してきました。

春を告げる芽吹きから新緑、元気に茂った樹々は陽射しを防ぎ緑陰を提供し、雨の時には、雨宿りできる傘にもなります。そして、秋には見事なゴールデンリーフとなり、冬の訪れとともに落葉して暖かな陽射しが降り注ぎます。これらの利点は、車イス利用者、ベビーカー利用者をはじめ全ての通行する人々の役に立っています。

さらに、大気の浄化にも大きな役割を果たしています。

イチョウという樹は、病気や虫の害に強く、防災効果が高い利点もあります。

大木になり、管理には費用がかかりますが、区民の納める税金から捻出できる区役所だからこそ、維持管理が可能であり、いまあるイチョウを街路樹として活用する利点は充分あります。

6 千代田区が自転車整備道路計画を立てた当初の予定どおり、白山通りのプラタナスと神田警察通りのイチョウ並木の緑の十字は戦後の歴史とともに育った既存の街路樹を生かしての素晴らしい景観であり、神保町、一ツ橋、錦町と、他所にはない歴史学術ゾーンであり、訪れた人々に落ち着いた印象を与える都心の貴重な存在になると思います。

私たちは「歴史あるイチョウの街路樹を残して道路整備をしてください」とお願いしているだけなのです。

7 切られてしまった2本のイチョウの樹は、神田警察通りのⅡ期の工事区間のシンボルとなり、私たちに、住民自治の基本である情報公開、民主主義の基本であるそれぞれの意見を尊重して、違いがあれば充分な話し合いをして、決して一方の都合により打ち切ったりしない教訓の象徴として訴え続ける所存であります。

8 今回、私たちが、千代田区の監査委員に対して、監査請求をしたにもかかわらず、その審理が始まろうとしている段階で、2本のイチョウの樹が伐採されてしまいました。

この裁判は、それに対して、千代田区の責任を追及するための裁判であり、裁判所に置かれては、以上のような事情を十分にご理解いただいた上で審理をお願いしたいと思います。

        ◆     ◇

 1 私は、正に、今回の第Ⅱ期工事区間に居住している者で、このたびイチョウの木を伐採するという寝耳に水の話に大変驚いております。

 我が家には工事に関するアンケートが配られることもなく、千代田区や町会長からのアナウンスもまったくありませんでした。そこで千代田区や千代田区長に対して陳情や要望書を提出し、なお且つ、千代田区の担当者へ電話をしたり、千代田区長への面会を何度も依頼してきましたが、すべて無視され、我々の気持ちを伝えて、理解を求めることができませんでした。

 2 それどころか、住民監査請求を提出中であるにもかかわらず、4月27日の深夜030分頃、イチョウを見守る私たちを騙し討ちにするべく、区から依頼を受けた業者が2本の元気なイチョウの木を切り刻みました。その悲しい有様はその場に居合わせた住民たちを大いにいたぶり、失望させ、心を深く傷つけました。

 その光景は今も頭から離れることなく、大型車両の走行音で反応したり、工事作業車を見ては指先が震え、フェンスに囲まれている自分の夢を見たり、毎日があの日のトラウマとなって私たちを苦しめております。

 3 私たちは神田警察通りに歩道拡張工事の計画があることは以前から知っておりました。共立学園前のイチョウが伐採されることなく、無事に立派な歩道と自転車道が完成したのは誰もが知る話です。ですから、その後の工事も引き続き同じ工法で進められていくものと信じて疑いませんでした。

 しかし、昨年12月、千代田区がイチョウの伐採を始めようとしていること、そして、それを後押しする町会長たちを取りまとめているのが、我が町の町会長、副町会長であることを知り、この方々への説得は困難であることを承知している私たちは、錦町三丁目町会を脱会し、「伐採反対」を前面に出て訴える決意をいたしました。

 これは娘共々、大好きな「神田祭」にも参加できなくなるという、私たちにとっては非常に大きな決断でもありました。

 4 ところが、私たちは2本のイチョウを守り切ることができませんでした。あの日、4月26日の夜は風の強い日で深夜からは雨の予報も出ていました。おそらく今夜の工事は無しだろうということで、午前0時、4人の住人を残してほとんどの仲間が帰宅していきました。

 そして、その30分後にとうとう区の騙し討ちが強行されたのです。私たちが見守っていた当初の工事区間ではなく、思いもよらぬ場所に作業車を止め、伐採の準備を始めていました。気づいた時には時すでに遅く、歩道にフェンスが置かれ私たちは一歩たりとも足を踏み入れることが許されませんでした。それでも、私の娘二人と駆けつけた仲間の1人がフェンス内に入り工事を止めさせるべく前進しようとすると、区の職員がフェンスを使って押し返すというようなやり取りが続きました。

 この間にチェーンソーは轟音とともに1枝、2枝とイチョウを切り刻み始めたのです。いつの間にか警官たちも中の3人を取り囲み、フェンスの外からの「止めて!」「切らないで!」という叫びも虚しく、あっという間に2本の元気で立派なイチョウの木を切り落としてしまいました。

 5 私は、もう二度とこのような悔しく悲しい思いはしたくありません。これはまさに住民や署名・陳情を出してきた人々を無視する騙し討ち行為であり、これを行った区や区の職員、またそれを指示した区長を訴えるに値するものと思います。

 街のシンボルである2本のイチョウを伐採し、なおかつ住民を無視して苦しめる千代田区に対し、損害賠償を請求いたしますので、そり審理をお願いします。

        ◆     ◇

 これまでも何度も書いてきた。記者は原告の側でも被告の側でもなく、ましてやそれを裁く清廉潔白・公平無私の裁判官でもない。この20年間〝街路樹が泣いている〟の見出し記事を書き続けてきた街路樹の味方だ。

 だが、しかし、今回の問題は、街路樹の立場を抜きにしても、どう贔屓目にみても落ち度は千代田区にある。住民合意のイロハである地域住民の声を聞いていないことが明々白々だ。当然踏むべきプロセスを全く経ていない。第Ⅰ期工事で「説明不足」と認めイチョウを残しながら、その意趣返しのように第Ⅱ期では〝伐採ありき〟を貫いてきた。

 専門家の声を「聞き置く」にとどめ、町会組織を下請け機関のように扱い、子供だましのような恣意的なアンケートを実施し、ひたすらアリバイ作りに狂奔してきた。SDGsESGの視点は欠片もない。

 裁判官がどのような決断を下すか。その行方は分からないが、原告側の今回の訴えは今後の街路樹のあり方に一石を投じる、エポックメーキングになるような気がする。街路樹をどうするかの問題は、マンション管理でいえば、全員合意か5分の4の賛成が必要な重要な事案ではないか。

 ただ一つ、イチョウの立場からすれば、原告側が損害賠償額を2本で22万円としたのは理解できない。小生の1年間の酒代とたばこ代を合わせた額より少ない。損得を抜きにしたけなげな姿勢には涙が出るほど嬉しいが、どうしてそんな安値なのか。閉店間際のスーパーの食材と一緒にしていいのか。

 神田警察通りのイチョウが東京オリンピックの1964年に植えられたとすれば、その後58年間、異議を唱えることも推進派と反対派を差別することなく、ひたすら役に立つことだけを考え立ち尽くしてきたことに対する評価は、1本当たり年間約1,900円、月額で158円、1日当たり5円だ。1日少なくとも1,000人に恩恵を施してきたとすれば、1人当たり0,005円だ。毛ほどの価値もないことになる。

 損害賠償額は、皆さんの精神的苦痛を金額に換算した額ではあることは承知しているが、皆さんの苦痛はイチョウも同じだ。どう考えてもこれは間尺に合わない。それだけではない。イチョウはこの先、よほどのことがなければ日々成長し100年、200年生きられる。将来利益を考慮すれば、11,000万円、2,000万円の評価だってありうる。わが国も街路樹の価値を定量的に計る物差しをつくる必要がある。

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