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2022/06/29(水) 17:16

街路樹に溶け込むアート 三菱地所&彫刻の森 第43回「丸の内ストリートギャラリー」

投稿者:  牧田司

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第43回「丸の内ストリートギャラリー(MARUNOUCHI STREET GALLERY)」展示作品

 三菱地所と彫刻の森芸術文化財団は6月28日、第43回「丸の内ストリートギャラリー(MARUNOUCHI STREET GALLERY)」を同日から2025年5月まで開催すると発表した。同日、プレスお披露目会(ガイドツアー)を行った。

 「丸の内ストリートギャラリー」は、丸の内仲通りを中心に近代彫刻や世界で活躍する現代アーティスト作品を展示するプロジェクトで、今年で50周年を迎えることを記念し、新作5点、継続作品2点、入れ替え作品12点の合計19作品を展示するもの。

 プレスお披露目会で三菱地所コンテンツビジネス創造部部長・小林京太氏は、「街にアートをコンセプトに1972年から開始したプロジェクトは、今年で50周年を迎える。街行く人だけでなく、就業者からも高い評価を頂いている。美しい街路樹に溶け込むアートと街の魅力に触れていただきたい」とあいさつ。

 プロジェクトに協賛している彫刻の森芸術文化財団 事業推進部部長・坂本浩章氏は、「プロジェクトはパブリックアートとしては先駆的な取り組み。当初は道路が狭かったが、その後はオフィスの1階に商業施設がオープンし、認知度が高まってきた。今回の新作は注目度の高いアーティストの作品を選んだ」と話した。

 同日公開した公式サイト(https://www.marunouchi.com/lp/street_gallery/)では、新作を展示したアーティスト4名のインタビュー動画のほか、各作品の詳細が紹介されている。

◇        ◆     ◇

 全長1.2㎞、幅員21m(車道7m+歩行空間各7m)の仲通りは、わが国でもっとも美しい街並みの一つだろうと思う。50年前までは土曜・日曜となると閑古鳥が鳴いていた。その後、ケヤキなどの街路樹は年々成長し、歩道空間に置かれたベンチで休んだり飲食したりすることもできる。

 全国の街づくりのモデルだと思う。仲通りは公道だ(都道・区道)。道路管理者は当然都や千代田区だ。その延長線の公開空地は原則、営利事業は禁止されているはずだ。この歩行者空間にアートを展示し、飲食などを可能にしたのは、2002年に設立された大丸有エリアマネジメント協会(レガーレ)の功績が大きい。

 日常的に街角でアート作品に触れられるのはとても気持ちのいいものだ。小生が2年前まで勤務していた「丸の内オアゾ」には展示作品の一つ、三沢厚彦氏の「Amimal 2017-01-B2」があり、ビル内にはピカソの「ゲルニカ」のレプリカもある。

 また、コロナ後も時間があると「三菱一号館」の中庭に面したワインバー「マルゴ丸の内」に立ち寄り、アギュスタン・カルデナスの「拡散する水」を眺めながら、ワインを飲む。(奥まったところにヘンリー・ムーアの「羊の形」があることは全然知らなかった)

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丸の内仲通り

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丸の内仲通り

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三菱一号館の中庭(右がワインバー「マルゴ丸の内」。中央に「拡散する水」が見える)

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アギュスタン・カルデナスの「拡散する水」

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ヘンリー・ムーアの「羊の形」

◇        ◆     ◇

 お披露目会の見学ツアーは1時間くらいしかなく、じっくり鑑賞できなかったのは残念だったが、登壇された舟越桂氏、松尾高弘氏、中谷ミチコ氏の作品とその説明はとても興味深いものだった。

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舟越桂《私は街を飛ぶ》

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作品について語る舟越氏

 舟越氏は、作品の頭部に本、並木道、教会を配したことについて、協会は自らカトリックであり、並木道は空を飛ぶ夢を見たことがヒントにあるとし、「本は人間が作った一番美しいのは言葉だから」と語った。

 記者も同感だ。日本語は何と美しいことか。人間の生と死、怒り、喜び、悲しみ、美醜などを造形する彫刻もまた、手法こそ違え小説と同じではないか。今回の作品は、100人観たら100人とも違った印象を受けるのではないか。

 舟越桂《私は街を飛ぶ》舟越桂は、日本を代表する彫刻家のひとりである。人物の頭部には、教会、本、並木道が配され、記憶や思い、自然、個人の心の中にもある距離や空間的広がりを表している。パブリック作品としての希少さもさることながら、着彩されたブロンズ作品としては自身の初作品となる。作品が設置される場所の日の動きまでも考慮し着彩された人物像は、静謐さの中 にも華やかさと上品さを感じ、時間や季節の移り変わりと共に、街の喧騒と静けさに寄り添いながら、通る人々に「記憶」や「想い」を語りかけるであろう。(リリースから)

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松尾高弘《Prism“Dahlia+Peony”》

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松尾氏と作品の一部

 松尾氏は、「光を形にした」と語ったように、ビルの内と外、人の動きによる光の微妙な変化を捉えた作品だ。(記者はサンフロンティア不動産のオフィスビルで、雨上がりのあと、室内に虹が差し込んだのに感動を覚えたことがある。太陽光の角度と屋外の庇状のガラスが演出した自然現象だった)

 松尾高弘《Prism“Dahlia+Peony”》大手町ビルのエントランス左右2か所に設置された、光のインスタレーション。花の結晶として形作られたオブジェクト群は、ダリアとピオニーによる連作であり、空間に与える情感を対比的に構築する。透明なルーバー状のアクリルと、そのサーフェイスを群生するように咲くプリズムのフラワーは、風景と交錯しながら、太陽光の変化や人の往来の移り変わりを取り込み、都市とアートが溶けあいながらも、鮮やかな輝きを放ち続けるタイムレスな作品とした。(同)

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中谷ミチコ≪小さな魚を大事そうに運ぶ女の子と金ピカの空を飛ぶ青い鳥≫

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作品の背面もアート(小生も写っている。下部は台座が写り込んでいるのが残念)

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作品について語る中谷氏

 中谷氏は、作品が展示されることについて「とても光栄だが、場違いではないかと驚いている。作品例も多くなく現実味がない」とはにかみながら話した。作品には記者も驚いた。ブロンズの裏面の半円形の円筒に鑑賞者が写り込むからだ。そして、中谷氏自身が「実はわたしはここにはいない。青い鳥も不在」と哲学的な言葉を発したのにぎくりとした。

 中谷ミチコ≪小さな魚を大事そうに運ぶ女の子と金ピカの空を飛ぶ青い鳥≫魚の泳ぐ水をスカートで大事そうに運ぶ女の子は妊婦です。全ての人は胎児だったから、この作品の主は魚です。虚と実を行き来しながら、揺らぎの中で確かなモノを探すためには、やはり物質とそれが作りだす凹凸を手探りすることが自分には大切で、だから私は彫刻を作っているのだろうと思います。凹凸に起こる無数の反転が、見る人の身体を取り込みながら、作品と一人一人の間に結ばれる関係を「唯一のもの」とする場所にしたいと思いました。(同)

◇        ◆     ◇

 プレスお披露目会ではもう一つ、嬉しいことがあった。小林氏のあと同社コンテンツビジネス創造部主事・谷村真志氏が登壇し、作品展示について説明したのだが、どこかで聞いたことがある名前で、マスク越しではあっても会ったことがあるような気がした。顔写真をカメラに収めた。

 谷村氏こそかつての三菱地所の野球部の主砲だった。RBA野球大会でも大活躍した。発表会後に語り掛けたら「5年前に子どもが生まれてから野球は全然やっていない」と話した。

 野球がらみでは、先に同社が行った「有楽町『SLIT PARK(スリット パーク)』」記者見学会で、早大応援団長出身で同社の野球部応援団長でもある鈴木崇正氏から声を掛けられた。RBAのホームページで「三菱地所」「谷村」「鈴木」で検索すると結構記事がヒットするはずだ。

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谷村氏

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お披露目会 発表会場となった三菱ビル1階

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