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2023/11/10(金) 22:16

分譲戸建ての現状に一石投じる 外構・植栽計画の分離を HIRAMEKI・重松剛氏

投稿者:  牧田司

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HIRAMEKI提供

 記者が見学し、素晴しい商品企画だと思ったタカラレーベン「レーベンプラッツ大泉学園」と総合地所「ルネテラス船橋」の分譲戸建ての植栽計画を担当した株式会社HIRAMEKI・重松剛氏から以下のようなメールが届いた。

◇        ◆     ◇

 当社(HIRAMEKI)の業務は、外構や植栽計画の「設計業務」を行っています。

 一般的に戸建分譲住宅の外構は、設計と施工を同時に行うような大手造園会社もしくはエクステリア会社に依頼することが多く、そのメリットとしては設計と施工をスムーズに行い、予算管理をしやすくするということです。

 しかし、設計と施工(工事費)をインクルーズしているがゆえにデメリットもあります。建築計画にそぐわない資材を使用したり、植栽も環境に合わないものを採用したりするなど、一見すると予算内に収まり、非常に良い業務効率と言えますが分譲住宅の連続する風景や集合体の良さが感じられないようなものとなりがちです。

 ローコスト住宅においても、使い勝手や駐車場の出入り、タイヤ痕の残りにくさ、最小限かつ最大限の魅力を作る植栽計画によって、分譲住宅の商品価値を高めることもできると思います。

 設計業務と施工業務を分離することで、コスト管理は多少面倒な部分が生まれますが、事業主の商品価値・魅力を最大限に発揮することが出来ると思っています。<株式会社HIRAMEKI><簡易外構植栽図作成サービスについて>

◇      ◆     ◇

 「設計・施工分離」か「設計・施工一体(デザインビルド)」かは、古くて新しい問題だ。従来は「設計・施工分離」が基本だった公共事業でも「デザインビルド」を採用する事例が増えている。

 現状はどうか、少し考えてみた。記者は取材するとき、設計、施工、デザイン監修は必ずチェックする。物件特性に顕著に表れるからだ。分譲マンションの場合は、「設計・施工分離」方式が採用される物件は大規模など特殊なものに限定されており、デザインビルド方式のほうが圧倒的に多い。比率にしたら8割くらいを占めるのではないか。

 このほか、最近増えているのはデザイン監修の形で全体を統括するものだ。例えば、「HARUMI FLAG」では光井純氏がマスターアーキテクトとして街全体のデザインを統括している。今後はこの種のデザイン監修が増えるのは間違いない。

 分譲戸建ての場合はどうか。まれに外構や植栽計画を著名な造園会社が担当することを明示している物件はあるが、物件概要を読んでも、「設計・施工分離」か「デザインビルド」なのか分からないものがほとんどだ。

 地球温暖化防止、街のポテンシャルアップに緑環境が大きな役割を果たしていることは言うまでもないことだが、残念ながら、現状は退行しているといわざるを得ない。

 大手ハウスメーカが参加しているプレハブ建築協会の建売住宅も例外ではない。同協会は環境行動計画「エコアクション」で、敷地の緑化面積率を40%以上確保した建売住宅の供給比率を50%以上とする目標を掲げていたが、2019年実績は14.5%にしか過ぎなかったことからか、この数値データの公表をやめてしまった。

 これはやむを得ない部分もある。住宅着工統計によると、首都圏の分譲戸建ての敷地面積は東京都は100㎡を割っており、神奈川県は111㎡、埼玉県は118㎡、千葉県でも133㎡に過ぎない。仮に建ぺい率60%の地域だとして、30坪(約100㎡)の敷地に制限いっぱいの18坪の住宅を建て、残りの12坪すべてを緑化するのは不可能だ。駐車スペースは最低4.5坪必要とされている。残り7.5坪を緑化しても緑化面積比率は25%にしかならない。

 プレ協の会員会社ですらそうなのだから、全国で供給されている分譲戸建ては推して知るべし。緑化面積比率を40%以上確保するには建ぺい率が40%のエリアか、屋上・壁面緑化を採用するほかない。1低層の比率が50%を超える世田谷区ですら緑被率は23.6%(23区平均は17.6%)だ。

 なぜ、都市の緑化は進まないのか。現行の都市緑化法、都市計画法にも問題があるといわざるを得ない。

 都市緑地法第34条は「良好な都市環境の形成に必要な緑地が不足し、建築物の敷地内において緑化を推進する必要がある区域については、都市計画に、緑化地域を定めることができる」と規定しているが、同法第4条により「緑の基本計画」を定めているのは、対象となる都市計画区域を有す全国1,374市町村のうち695市町村(50.6%)にしかすぎない。首都圏では東京都が89.5%、神奈川県が93.8%、埼玉県が73.8%、千葉県が64.6%だ。相対的に埼玉や千葉の緑環境が劣っているのはこのためだ。「緑化地域を定めることができる」とあるように、強行規定ではなく任意規定であることに一因がある。

 また、都市計画法施行令第25条第6号では、開発区域の面積が0.3ha以上5ha未満の開発行為では開発区域の3%以上の公園、緑地又は広場を設けることを義務付けているのみだ(条例で対象面積を300㎡に引き下げることが可)。自治体は、用途地域別に1区画当たり最低面積を条例で定めるところが増えているが、緑化地域制度を導入している自治体は名古屋市、横浜市、世田谷区、豊田市しかない。

 重松氏から送付された資料を添付する。分譲戸建ての植栽計画に一石を投じるものだと思う。重松氏が外構・植栽計画を担当した冒頭の「大泉学園」「船橋」と、その真逆の事例として「越谷」と「南栗橋」の記事を添付する。

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HIRAMEKIホームページから

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HIRAMEKIホームページから

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