大東建託は4月1日、「震災復興のラストランナー 福島県双葉町」をテーマとする第11回「大東建託 賃貸住宅コンペ」の「アイデア提案部門」で最優秀賞(1作品)、優秀賞(1作品)、入選(3作品)の計5作品、「新たな賃貸スタイル部門」で審査委員特別賞(2作品)を決定したと発表した。
「アイデア提案部門」では、応募総数101作品の中から5作品が1次審査を通過し、メンター建築家によるアドバイスを受けることでブラッシュアップされ、2次審査でのプレゼンテーション、質疑応答を経て、各賞が決定された。
最優秀賞(賞金200万円)は、横浜国立大学大学院の葛谷寧鵬、姶良壮志、朝妻貴徳3氏による「マチはカワに自生する」が選ばれた。
受賞作品の模型やパネルは、4月15日から5月13日の期間、「東日本大震災・原子力災害伝承館(福島県双葉町)」に展示され、予約不要で誰でも見学できる。
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同社のリリースを読んで驚愕した。同社が12年前から「大東建託 賃貸住宅コンペ」を行っていることなど知らなかったことはともかく、11回目以降の5年間は、さらなるリアルを追求するため、テーマを「賃貸住宅コンペ まちへ出る」へリニューアルし、日本各地の街へ赴き開催していくとのことで、その初弾に東日本大震災によって甚大な被害を受けた福島県双葉町を選んだとあるではないか。
双葉町は昨年10~11月、世帯の代表者(3,244世帯)を対象に住民アンケートを実施している。回答者数は1,244世帯(回収率38.3%)。
これによると、60歳以上の人は69.5%(うち70歳以上が48.0%)、無職は54.0%、居住自治体は町内が1.8%、県外が35.5%、居住形態は持ち家が70.7%、民間賃貸が7.6%、帰還意向は「戻っている」が1.4%、「戻りたいが」が14.9%、「判断がつかないが」24.8%、「戻らないが」が55.2%となっている。
帰還を希望する人の町への希望は「医療・介護福祉施設の再開や新設」「商業施設の再開や新設」「住宅の再建に関する支援」などとなっている。
町民のほとんどが町外に住むことを余儀なくされ、帰還意向者は5割に満たない-〝住みたくても住めない〟〝戻りたくても戻れない-これがリアルだ。
最優秀賞を受賞した3氏は「双葉町の環境に身を置いて『賃貸』を考えた時に思われたのは、都市そのものが自然に対して人間の場所を借り入れた存在ではないかということ。津波を経験して中間貯蔵庫に汚染土がまだ残っている状況で『賃貸』は数百年規模の都市の概念として捉えなければならないと感じた。賃貸住宅とそれらが建っていく環境と状況を設計した。どんなタイプの賃貸住宅が建ってもマチが生態系豊かで関係性が分厚く構築されていく為に、地形に沿って流れるカワからマチは始まる。カワを関係性の軸に据えて重ねられる復興は人と自然の為の都市像を示し、環境に自生する生きられたマチが実現できると信じている。(応募作品原文のママ)」と語っている。
「地形に沿って流れるカワからマチは始まる」-その通りだと思う。古今東西、街・都市は河川上に生まれた。敢えて「カワ」「マチ」とカタカナにしているのは別の概念を盛り込んでいるからだろう。リリースの図表からは字が小さすぎてそれが読み取れないのは残念。
もう、ここまで来たら最優秀賞をそのまま建てるしかない。企業ふるさと納税として町に寄付するか、全国に寄付を求めたらいくつも建設できるはずだ。これが厳しいリアルに対する回答になるのではないか。
この種のコンペ優秀作品をポラスは建売住宅に、三井不動産はマンションにそれぞれ採用して人気を呼んだことがある。
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