ブルースタジオは5月11日、練馬区田柄3丁目の新築賃貸住宅「種音(たね)」のメディア・事業者向け上棟時現場見学会を行った。光が丘駅に近いことから宅地化が進み、緑被率が低下しているエリアの地域課題に向き合い、コミュニティ醸成にも配慮した店舗併用賃貸住宅を整備するプロジェクト。見学会では地域住民を対象としたお餅、お菓子まきも行われた。
物件は、都営大江戸線光が丘駅から徒歩12分、練馬区田柄3丁目の第一種中高層専用地域・第一種低層住居専用地域に位置する敷地面積約1,200㎡、木造2階建てA棟4戸、B棟9戸の合計13戸。店舗兼用住宅/店舗併用住宅の専用面積はA棟が70.16~76.78㎡(店舗・アトリエスペース:23.27〜31.49㎡)、B棟が46.78~69.56㎡(同:10.09・17.64㎡)。建築主はGRAT。建築設計はブルースタジオ、設備設計はEOSplus。施工は大和工務店。竣工は2024年10月の予定。「HEAT20グレード3」の取得を予定している。
約1,200㎡の敷地に残っている母屋、既存樹木・庭木、漬物石などをそのまま残し、あるいはデザインにと煮込み、原風景の屋敷林の歴史・文化を継承し、店舗併用賃貸住宅によって地域のコミュニティ向上に貢献する狙いもある。
プロジェクトについて、ブルースタジオ専務取締役クリエイティブディレクター・大島芳彦氏は、「田柄地区は練馬大根の漬物の産地で、戦時中は戦地で重宝がられた軍需産業として栄えた。昭和の40年代ころまでは漬物屋を中心とする屋敷林が残っていた。その後は宅地化が進み、区内でもっとも緑被率の低下が著しい地域となっている。この地域の歴史・文化を継承し、かつ地域のコミュニティを重視する『なりわい賃貸』提案が、オーナーの上野さん(達也氏=42)の『自分たちの敷地の中で家族のように暮らしたい』という意向と一致した。HEAT20のグレード3は賃貸ではそうないはず」と話した。
同様の店舗併用住宅の小田急バスとの「hocco(ホッコ)」の効果も大きいようで、大野氏は「大手ゼネコンやハウスメーカーとも相談していたが、『hocco』を見学してから計画が進んだ。敷地内に予定している店舗はかみさん主導ですが、私としては酒類も提供したいし、前職のアパレルの経験を生かした古着屋を考えている」と語った。
見学会には小田急バス取締役不動産ソリューション部長・下村友明氏も私服で顔を見せており、「hocco」の第二弾「深大寺」を着工したことを明かした。
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「hocco」と似たプロジェクトだが、一低層に位置する「hocco」は店舗などの建築は禁止されているのに対し、今回の物件は道路に面した敷地は一中高なので店舗建設が可能になったのが異なる。将来、母屋をどうするかは決まっていないようだが、市の歴史・文化施設として保存するのもいいのではないか。(ポラスの「蔵」がそうだ)
環境配慮にも力を入れているのもいい。大島氏は「HEAT20のグレード3は賃貸ではそうないはず」と語ったが、同社・水越俊宇氏は「区の指導で緑被率25%を確保するよう求められているが、新たに樹木を植えるので余裕でクリアできる」と語った。記者の希望は最低で30%、できれば40%を目指してほしい。
賃料はいくらになるかわからないが、1,200㎡(363坪)をわが家の庭のように利用でき、かつて経験したことがない「「HEAT20 グレード3」の居住性を享受でき、地域と緩やかにつながる価値をお金に換算したらいくらになるのか。新築マンションだったら坪単価は300万円はする。賃料をはじいていただきたい。
裏山の借景活かし断熱等級6クリアブルースタジオ賃貸住宅「SUNKA(サンカ)」(2023/12/26)