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2021/10/07(木) 14:39

出来すぎだ!焼杉! 見どころ多い小田急バス×ブルースタジオ「hocco(ホッコ)」

投稿者:  牧田司

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「hocco(ホッコ)」

 小田急バスとブルースタジオは10月5日、なりわい賃貸住宅「hocco(ホッコ)」の関係者向け見学会を行った。小田急バスの貸し駐車場を転用した全13戸で、「なりわい」をテーマに、入居者は教室・習い事、趣味の物販などを通じて近隣住民とゆるやかにつながることができる「土間」「軒下」が設置されているのが特徴。〝地域価値の創造〟の視点から見どころの多い住宅・施設だ。

 物件は、JR中央線武蔵境駅からバス12分徒歩1分、武蔵野市桜堤2丁目の第一種低層住居専用地域に位置する敷地面積1,525㎡、木造2階建(長屋建て)延べ床面積811㎡の賃貸住宅13戸。専用面積は52.9~58.99㎡。賃料は住宅専用(8戸)が146,000~167,000円、店舗併用(5戸)が166,788~176,610円。敷金、礼金は各1か月。定期建物賃貸借契約2年(店舗は2か月)。事業主は小田急バス。企画・設計監理はブルースタジオ。施工はジェクト。管理はブルースタジオ。

 現地は、昭和34年に竣工したUR都市機構(当時日本住宅公団)の賃貸住宅「桜堤団地」(53棟1,829戸)に隣接。小田急バスが経営するハイヤーの営業所だったところ。昭和49年に営業所が閉鎖された後は貸し駐車場になっていた。

 建物は、暮らしの「町あい所」をテーマに、自分の趣味や好きなことを街にひらき、「やってみたい」を実現できるなりわい賃貸住宅になっており、全ての住戸が中庭に開かれたモルタル仕上げの「土間」と「軒下」を持っている。

 住宅はHEAT20G2相当、UA値0.41を実現。1階のサッシはドイツ製の金物を使った木製サッシで、ドアを閉めるとサッシ上部と下部の隙間が閉じられるよう工夫が凝らされている。その他の窓は樹脂・アルミ複合サッシを採用。構造柱は一辺18センチの燃え代設計。床はナラ材。外壁は耐久性を増すため、スギ材の表面を燃やして炭化させた「焼杉」を多用している。

 隣接する武蔵野市立はなもも公園との一体化を図るため、武蔵野市と協議し、事業主が樹木の剪定などを行うことを条件に〝垣根〟(フェンス)を取り払った。地面は芝ではなく、雑草に強いダイカンドラを張っている。

 敷地エントランスの折返場内には降車場を新設し、バス機能を拡充させるとともにシェアカーやシェアサイクルを用意。モビリティの拠点としての機能を設けている。

 見学会に臨んだ小田急バス開発プロジェクト推進部長 不動産部長・下村友明氏は、「当社は昨年70周年を迎えた。利益を最優先するのではなく、地域に貢献できる、活性化できるものを造りたいという思いを込めて、これまで2度、協働したことがあるブルースタジオさんとともに施設を完成させた。上質な環境性能を備えた賃貸住宅となった。現在は土地を耕し、種をまき、芽が出た段階だが、今後大きな木に育てたい」と語った。

 ブルースタジオを代表して大島芳彦氏は、「ここは路線バスの終着点ということからも分かるように、商店街のような多様多種な世代の生活者たちの暮らしのハブ。昔の『なりわい暮し』をテーマにしたのは、店舗・テナントでは無く生活者その者のチャレンジ精神や表現力、潜在力を引き出せば地域の活性化は可能と考えたから」と説明した。

 賃料は近隣相場より10~30%高い設定だが、1か月前の募集開始時から70件の反響があり、5件の申し込みが入っているという。

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中庭(中央の樹木はアオハダ)

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土間

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開閉して見せる大島氏

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焼杉

◇       ◆     ◇

 現地に着いてすぐ、記者の生まれ育った田舎の黒塗りの蔵の外壁が目に飛び込んできた。まさか本物の杉板ではなく安物のサイディングだろうと触ってみた。めり込むほどではないが、やわらかい感触が手に伝わってきた。その途端、指先に黒いしみがついた。建物が完成したばかりだからペンキの痕かと思ったらそうではなかった。本物のスギ材の表面を焼いて張った「焼杉」だと関係者から説明を受けた。もうこれだけで、この住宅のレベルの高さを確信した。

 前段を読んでいただければ、その質の高さは分かっていただけるはずだ。ブルースタジオと小田急の共同作品を見学するのは3度目だが、いいコンビだ。

 都市公園との一体化を実現した案件では、フージャースコーポレーションのマンション「デュオヒルズつくばセンチュリー」を今年見学した。この種の取り組みが増えることを期待したい。

 公園に芝ではなく「ダイカンドラ」を張っていたのにも驚いた。5年前に見学した総合地所の戸建て「ルネテラス船橋」にはこれが敷き詰められていた。これはスグレモノだ。

 もう一つ。見学会で白髪のお年寄り(失礼)から声を掛けられた。マスク越しだったこともありまったく記憶になかった(記者だって同じなのにどうしてわかるのか)。宇野健一氏(アトリエU都市・地域空間計画室)だった。

 宇野氏と大島氏は交流があるようで、「双葉駅西側地区災害公営住宅等設計業務委託」公募で勝ち残り、最終選考の決勝戦の末、1票差でブルースタジオに敗れたと話した。今回の作品の出来栄えにも「負けた」と感嘆の声を漏らした。

 宇野氏のホームページを検索した。「10/12/10 企画提案に協力していた横浜市脱温暖化モデル住宅推進事業コンペで我々のチームが最優秀賞を受賞」とあるではないか。

 宇野さん、これって記者が2011年に見学し記事にした「横浜市の『脱温暖化モデル住宅』見学会に22組」のことでしょうか。宇野さん、大島さんと戦うからいけない。抱き込むか、抱き込まれるか。さもなくば逃げるかだ。また取材させてほしい。

 まだある。隣接する「はなもも公園」は9年前、三井不動産レジデンシャルの戸建て「ファインコート武蔵野桜堤ブロッサムレジデンス」で見学しているではないか。すっかり忘れていた。大成有楽不動産の「桜堤庭園フェイシア」もいいマンションだ。

 それにしても、みんなよくつながっているものだ。現場取材をずっと続けてきたおかげだ。

 おっと、肝心なことを言い忘れた。「店舗併用」だ。バブルのとき、UR都市機構は多摩ニュータウンで多目的に利用できるスペース「αルーム」付きマンションを分譲した。その一つ、多摩センターの「プロムナード多摩中央」では、舗道に面した1階部分に「αルーム」を設け、分譲した。10戸くらいあっただろうか。全て即日完売した。当初は画廊や習い事、染め物工房などとして利用されていたが、いまは利用されている気配はほとんどないない。

 何が足りなかったか。運営を指導する人が欠けていたからだ。今回はブルースタジオがそれを担当する。手腕が試される。

 関連する記事を以下に添付した。

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公園との境界線(かつてはフェンスがあったそうだ)

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「ダイカンドラ」

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現地近く(左の建物は「桜堤庭園フェイシア」か)

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