昭和女子大学の環境デザイン学科中山榮子教授の総合演習(プロジェクト)「2×4で茶室を建てよう 建て方実習2024」を8月2日、見学した。実習は同学科1~4年生18名が千利休がつくったといわれる2畳の茶室「待庵(たいあん)」を模してツーバイフォー工法(2×4)で建築するもので、日本ツーバイフォー建築協会が部材を手配しているほか、建て方を指導する指導するフレーマー(大工)を3名派遣している。同様の実習は2017年の平屋住宅建築に続き2回目。
実習では、パソコンソフトで作成した設計図をもとに、学生は事前研修で材料や構造などを学び、初日の8月1日は床を、2日目の2日は壁を、3日目の5日は小屋組みを行う。
通常の現場では、クレーンや電動のこぎり、くぎ打ち機などを使って組み立てていくが、授業ではフレ―マーの指導を受けながらハンマーでくぎを打ち、のこぎりを使って作業を行った。
授業を受けた2年生の学生は、「面で建てられるというのがすごい。座学では学べないものを学びました。将来は、永山さん(祐子氏=建築家・昭和女子大卒業生)のような建築家になりたい」「見た目以上にくぎ打ちは簡単だった。自宅で棚などをつくっていた経験が生きました」などと感想を語った。ハンマーやのこぎりを使うのは初めての人も多く、「手を打っちゃった。痛い」(2年生)と赤くはれた手を見せた人もいた。
同大学は「本学の環境デザイン学科でも、設計やインテリア・設備系だけでなく、最近では施工・管理部門にも進出しており、この実習で得た経験が将来のキャリアにつながる一助となればと考えています」とコメントしている。同大学のプレスリリースによると、2023年度の同大学卒業生の実就職率 は95.9%となり、「2024年実就職率ランキング」(大学通信調べ)で全国の女子大学で1位となり、私立大学では全国5位とあった。
記者は2017年のときも取材しているが、今回(8月2日)はくぎ打ちやのこぎりの扱い方に四苦八苦する学生さんをみていろいろ考えさせられた。
記者が小さい頃は薪炭時代で、ハンマーもくぎものこぎりも日常的に使っていた。槇割りは欠かせない作業で、中学の「技術」の授業では椅子なども制作した。ただ、「技術」は男子のみで、女子は「家庭」だった。今でも公立学校では男子は「技術」、女子は「家庭」のようだ。家父長制が色濃く残っていた記者の小・中学校時代とそれほど変わっていないようだ。
とはいえ、大工さんのハードな仕事を考えると、女性が大工になるのはハードルが高すぎる。先日の大東建託「匠マイスター技能選手権」でも実感したが、男性の大工さんは1枚30キロもする部材などを軽々と持ち上げて作業するそうだ。この日(2日)も、授業の指導者の大工さんは長さ90ミリのくぎを瞬発(1発)で板に打ち込んだ。
学生さんはどうかというと、初めてだから当然といえば当然だが、50発で打ち込む人はまれで、だいたい100発かかった。くぎが曲がったりする人は百十発かかっていた(くぎをまっすぐ打ち込むのは男性でも難しい。2×4の建物は33坪で8万本、くぎだけで重さは330キロを使用するそうだ)。
しかし、感想を聞いた3人の学生さんはみんな建築家(建築士)を目指すというから心強い。参考までに2015年に開かれた日本建築士会連合会女性委員会の「第24回全国女性建築士連絡協議会(略称:全建女)」を取材したときの記事を添付する。とても頼もしく思えた。建築士は女性だからというハンディは少ないのではないか。
取材の帰りだ。三軒茶屋駅前の世田谷通りに植わっている街路樹だ。中世のコルセット(拘束着)そのものの支柱が樹木の胴や根元を締め付けていた。樹種はトウカエデかモミジバフウか、樹脂は樹齢は数十年か。強剪定されているためこぶだらけで、車道も歩道も緑被被覆率は大きくないのが明らかだ。
昭和女子大の庭園には世田谷区の保存樹木が何本も植わっており、区は樹木を大事にする数少ない区だと思っていたが、街路樹はやはり道路の付属物の扱いしか受けていない-そうではない。世田谷通りは都道だ。ここに限ったことではなく、都のとくにプラタナスの街路樹虐待は前後に絶する。ひどいの一言だ。
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