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2024/09/21(土) 13:12

81.5haの物流「GLP昭島プロジェクト」敷地内に4.5haの樹林地 開発に疑問の声も

投稿者:  牧田司

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「武藤順九彫刻園」(ホテルロビーから)

 大和ハウス工業は9月20日、3棟・総戸数850戸超のマンション「昭島プロジェクト」のうち、第一弾として昨年9月に販売開始し、今年5月に完売した全481戸の「プレミスト昭島 モリパークレジデンス」竣工内覧会と、第二弾の全277戸の「プレミスト昭島 モリパークグラン」モデルルーム内覧会を行った。

 その記事より先に、第三弾のマンション建設地になっているマンションパビリオンと道路を挟んで隣接するホテル「フォレスト・イン 昭和館」について紹介する。

 同ホテルはバブル期の1988年創業。駅から徒歩7分、昭島市代官山一丁目に位置する全98室の客室のほかレストラン、結婚式場、宴会場、バーベキュー施設なども併設されている。

 マンションの取材を終え、一服しようとホテルに入った。利用客に「素晴らしいホテルですよね」と声を掛けたら、「来年1月に閉店になるんです」と聞かされた。その通りだった。ホテルを運営する「アーバンリゾーツ昭和の森」は今年4月1日、同ホテルを2025年1月31日をもって営業を終了するとホームページで公表している。

 〝最初で最後、見納めになる。しっかり見ておかないと〟と考え、せんべろの3倍高いビールを飲んだあと、1時間以上かけてホテルと敷地内にある「武藤順九彫刻園」を見て回った。

 何も言うことはない。「彫刻園」は2018年に開設。開設時の趣意書には「保全すべき樹林地に、木漏れ日に溶け込むように作品を配置し、自然とともに芸術に触れあうことができる空間を創造する…行政、企業、作者が協力して世界に発信する日本で初めてのプロジェクト」とある。園内には樹齢100超と思われる巨木がたくさん植わっており、素晴らしいの一語だ。自然林そのものだ。写真をたくさん撮ったので見ていただきたい。

 なぜ、このような素晴らしいホテルが閉店となるのか。以下に経緯を紹介する。

 ことの発端は2022年2月。シンガポールに本拠を置く日本法人「日本GLP」は、東京都昭島市の「昭和の森ゴルフコース」と「フォレスト・イン 昭和館」の約65haの土地を昭和飛行機工業から取得し、大規模多機能型物流施設「GLP ALFALINK 昭島」として2024年4月に開発着工、2026年頃より順次竣工し、2028~29年に全体竣工する予定と発表した。ゴルフ場とホテルは〝何んでもあり〟の準工業地域(建ぺい率60%、容積率200%)だったため、物流施設建設が可能となっていた。

 市は今年の3月、事業者から提出された「GLP昭島プロジェクト」 環境影響評価書案に対して小池都知事宛てに意見書を提出。都市計画マスタープランなどを勘案し、引き続き市と協議し、協力するよう求めた。また、環境影響評価書案には不整合などか散見されるとし、是正を求めている。

 そして5月、市は「玉川上水南側地区地区計画」(素案)を発表。物流施設用地を含む約81.5haについて業務地区A(37.1ha)、業務地区B(39.9ha)、緑地保全地区(4.5ha)に指定し、「彫刻園」を含む樹林地を保全するとともに新たに約3.5haの公園を整備するとしている。

 昭和飛行機について。同社は1937年、現在の「モリパーク」に創業。終戦まで主力戦闘機などを製造した。終戦後は米軍に接収されたが、1955年に特殊車両の製造を開始、1961年東証二部に上場。1980年に「モリパーク」を開業した。2014年3月、三井造船が実施した株式公開買付けの結果、同社の連結子会社となり、2020年1月、三井E&Sホールディングス(2018年に三井造船より改称)は、ベインキャピタルが投資助言を行うBCPEプラネットケイマンに昭和飛行機の保有株式の全てを売却。昭和飛行機はBCPEプラネットケイマンの完全子会社となり、上場廃止となった。同年10月、分社化され、不動産賃貸・ホテル・レジャー事業を行う昭和飛行機都市開発が設立された。

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 都市計画マスタープランなどから判断して、「武藤順九彫刻園」など約4.5haの樹林地は保全されるようだが、市の都市計画素案に対する市民らの382件の意見には、生物多様性や生態系への配慮を明記すべき(20 件)、自然環境、生態系や水を守ってほしい(17 件)、代官山の樹林地だけではなく、旧ゴルフ場や周辺の樹木も含めて保全すべき(16件)、緑の分断、生態系への影響や渋滞、事故の発生が懸念されるので、道路の新設に反対(40件)、事業の撤退または規模縮小、交通量の削減を望む(80件)など、開発に疑問を呈する声が多く寄せられている。

 事業者は、「玉川上水の周辺から代官山の樹林地にかけては、緑も多く残っており、生物多様性に配慮した環境を保全するとともに、市民の散策の場としての活用を促進する」としている。

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