林野庁は10月9日、「森林×ACT(アクト)チャレンジ2024」の表彰式を新木場・木材会館で行い、合わせて森林づくり全国推進会議が主催する第3回森林づくり全国推進会議とシンポジウムを開催した。
「森林×ACT(アクト)チャレンジ」は、森林整備への支援などを通じてカーボンニュートラルの実現や生物多様性保全に貢献する企業・団体の取り組みを募集し、顕彰するもので、グランプリ(農林水産大臣賞)には、地元の行政や森林組合と連携して、地域住も民を対象とした植樹や自然観察会などの活動を行っている特定非営利活動法人ちば森づくりの会が選ばれた。
グランプリを受賞した同会理事長・林隆通氏は、「とても光栄。私たち都市住民の活動が、全国で3,300ともいわれる同じような活動をされている団体にも喜んでいただくことになる」などと喜びを語った。優秀賞(林野庁長官賞)は次の通り。
[森林づくり部門]
・大林組
・鹿島建設
・サンデン
・サントリーホールディングス
・四国苗販売
・生活協同組合コープしが
・ツムラ
・野村不動産ホールディングス
[J-クレジット部門](共同応募)
・滋賀銀行/金勝生産森林組合
・ダンロップフェニックストーナメント大会事務局/宮崎県/ExRoad
・ヤベホーム/対馬市(長崎県)
不動産業界で優秀賞を受賞した野村不動産ホールディングス執行役員・田中克弥氏は「2年前に奥多摩町で『森を、つなぐ』プロジェクトを始動し、昨年に施業開始した。植林活動だけではなく、森林の生態系サービスを重視し、今後は社員参加型の取り組みへと発展させていく」と語った。
受賞企業・団体には背丈ほどある木製盾が贈呈された。グランプリは石川県産材の無垢のスギノキ、優秀賞は能登半島のヒバ材で作られたものだった。
「SDGs QUESTみらい甲子園」2024年は40都道府県5,499校が対象
「木材会館」はやはり美しいことが確認できた。両校のそれぞれ2人の生徒さんのプレゼンテーションは最高に素晴らしく、うれしくなって舞い上がってしまった。予想以上の成果が得られた。
何が素晴らしいか。自分の住む街の課題は、高校生なら調べれば分かるだろうが、その課題にどのようにして向き合い解決するかを見つけ出すのは容易ではなく、実践し検証するところまでこぎつけるのは至難の業のはずだが、両高の生徒さんが見事にやってのけたことだ。
「SDGs QUESTみらい甲子園」は、高校生が持続可能な地球の未来を考え行動するために、SDGsを探求し、社会課題解決に向けたアイデアを募集し、表彰する産官民協働の取り組みで、2019年の第1回では61校214チーム、814人か参加した。2023年度は319校1,753チーム、7,255人へ、2024年の対象高校は40都道府県5,499校に達している。
久慈東高校の「environment」チームは、〝日本一の白樺美林〟を誇る久慈市の白樺林が管理者の高齢化や後継者不足などから倒木などによる景観が悪化しているのに着目し、市や地元企業、農林業者などを巻き込み、白樺モルックを製作・開発し、白樺の樹皮などで抽出したエキスを漬物に混ぜる商品を開発中という。
菊池農業高校のある菊池市は熊本県北東端に位置し、暴れ川と呼ばれる筑後川とともに度々水害を引き起こしてきた菊池川が流れていることで知られる。「菊池農業高校SDGsプロジェクト班」は、荒廃した竹林の再生・活用に取り組み、竹チップで家庭用の生ごみ量を半減させる段ボールコンポストを開発し、バイオ竹炭の製造にチャレンジしているという。
両校の生徒さんのプレゼンが始まると、関係者など百数十人が集まっていた会場は水を打ったように静まり返り、終わったときは大きな拍手が巻き起こった。
呑み助の記者は発表を聞きながら、白樺の樽をつくって日本酒にしたらどうかをずっと考えていた。日本酒だけでなく味噌も醤油もウイスキーもワインもみんな木の香りがまじりあっておいしくなる(樹木の香りを混入したクラフトビールなどは商品化されている)。タケノコは酒のつまみに最高で、竹炭の効用は言うまでもない。竹そのものも建築材としてもっと利用されていい。
先ほども書いたように、グランプリを獲得した両校以外に2024年は40都道府県5,499校が参加するというではないか。みんな優れたアイデアばかりだと思う。
この前取材したmore treesと、日本一人口の少ない奈良県野迫川村(のせがわむら)との「森林保全および地域活性化に関する連携協定」では、more treesの代表・隈研吾氏は「一番小さな村で活動することが、森林・林業にかかわる方に希望と勇気を与えるきっかけになることを願っている」とメッセージを寄せた。「みらい甲子園」もまた全国の森林・林業関係者に希望と勇気を与えるに違いない。
両校の生徒さんだけでなく、すべての「みらい甲子園」にチャレンジする高校生の皆さん、さらにはスタートアップを目指す人に一つお願いがある。話法を学んでほしいということだ。ぜひ、丸谷才一(1925~2012年)の「挨拶はたいへん」(朝日文庫)を読んでいただきたい(ほかの文庫本でも挨拶について触れているが、どれだったか思い出せない)。
作家としての評価はともかく、丸谷才一ほどの博学者はいないと思う。挨拶もまたピカ一だ。記者は四十数年の記者生活の中で、数千人の方が話すのを聞いた。しかし、感動を覚えたスピーチをした人は数えるくらいしかない。その方たちに共通するのは、原稿などを読む人はいないということだ。聴衆・参加者に向かって自分の言葉で話した。
TNFD提言に基づく自然に対する依存・インパクト分析結果公表野村不HD(2024/10/7)
坂本氏の遺志継ぎ隈氏代表のmore treesと日本一人口が少ない野迫川村森づくり協定(2024/10/6)
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木造とコンクリートの見事な調和を図った「木材会館」(2012/10/2)